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神月唯、27歳。無職。現在時刻、夜の9時半。繁華街の外れを歩いている。
私の人生、振り返ってみれば失敗ばかりだった気がする。
小中と虐められ、高校生になると同時に遠い土地へと引っ越した。
何とか高校で勉強を立て直し、Fラン大学へと入学。
大学ではコミュ障のせいで1人も友達が出来ず、暗いキャンパスライフを送った。その後、ギリギリ単位を取りきり何とか大学を卒業。
しかし、就職に失敗して心が折れて引きこもり。
いつまでも引きこもっては行けないとバイトに励むが、社不すぎてクビ。
それも3軒もである。
確かに1日にシフトを詰め込みすぎた挙句、全てをドタキャンしたことは少し悪いとは思ってはいるが。
最早私自身の問題なのでは…と思った頃にはもう遅かった。
まあもう終わったことだからどうでもいい。反省しろ、などと言う大人の声も聞こえるような気がするがそんな事は関係ない。私は向こう見ずな性格なのだ。
そんなことを考えているとむしゃくしゃしてきて、なにかに当たりたくて堪らなくなった。その時蛍光色の看板がふと目に入った。
「『にゃんにゃんかふぇ♡』…?店名にハート付けるだなんて攻めてるなぁ」
そうは思ったものの、好奇心に負けて店の中に入ってしまった。
下調べのひとつもせずに店に入るところも私の悪い所なのだろう。
建物の階段を上がった先にあるドアを開けると、猫鈴のような音が鳴った事に気付いた。
最近のコンカフェは随分と本格的だなんて考えていたその時、脳内に甘い声が流れ込んできた。
「せーのっ」
「「『にゃんにゃんかふぇ♡』へようこそ〜♡」」
私を喋らせる隙もないほどテンポよく話が続く。その事にも手際の良さに驚いたが、何よりも____。
「ほ、本物の…耳…?」
なずな「よく気付いたねぇ〜。しかしお客様、初めての方でしょ〜。よ〜く使い方のお話とかき〜てね〜。」
注意されてしまった。
ただ、流石に気が散るのはしょうがないような気がしてしまうのはきっと私だけではないはず。
だらだらと思考を巡らせていたら、ハリのある元気な声が耳に入った。
凛「ご主人様!私から自己詳細をさせて頂きますにゃん!私は店長の凛って言います!可愛がってにゃ〜!」
艶のある滑らかな黒髪に三つ編みが施されたハーフアップ。ゲームの中のヒロインのような王道の、特徴が無くなりやすい髪型。しかし、他人との違いはその圧倒的な可愛さである。そう、かわいいのだ。それでいてバラのような深い赤色の目をしている。清楚系にもお姉さん系にも見える可愛さをされている。
姫花「おかえりなさいませ、ごしゅ♡ひめかっていいますにゃ〜♡みんなの姫なんだぁ♡」
可愛らしい名前に可愛らしい容姿。
髪の色は薄いピンクで下の方で結ぶタイプのツインテールをしている。極めつけに結び目には白い大きなリボン。緩く巻かれた長い髪が靡いている。そして純白な目の色に淡い色の唇。彼女を構成する何もかもが可愛いを助長している。
小説の所謂、『ぶりっ子』という存在はこんな顔整いの事なのかもしれない、そう直感的に思った。
なずな「ごしゅじんおかえり〜なずなだよ〜。私はいつもゆる〜く働いてますにゃ〜。今後ともこのお店をご贔屓くださ〜い。」
とにかく、ゆる〜い雰囲気がする。
こちらまで和みそうなかんじだ。
何もかもを包んでくれそうな柔らかい印象を持った琥珀色のタレ目。新緑、という言葉が似合いそうな濃い緑色のウルフカットの髪。ゆるい、とにかく、ゆるい。
そんなこんなで今いるキャストさん3人に挨拶をしてもらった。
キャストさんの話を聞くにつれて、私の心の荒みも祓われた気がした。
正直な話、もっとお話をしていたかったものの、閉店時刻が迫っていたためお金だけ払って帰ったのだった。
___またここに来るの、楽しみだなぁ。
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