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「こんにちは。」
懲りずにポアロに来る私。私のことを疑っている人たちからしたら不思議に思うだろう。
私は水篠莉心。本職は…察しのいい読者さんはもう分かってるかな?でも今は内緒。いずれ分かるよ。
すると、急に外が暗くなる。
ザーッ
「…あ。」
「雨ですね。」
すごく、探るような目に似合わない笑顔を浮かべた安室さんが話しかけてくる。
「…なんで私のことをそんなに疑っているんですか?」
「まさか!疑ってませんよ。」
「…ほっといてください。」
「……それよりほら、雨ですよ?止むまでここで雨宿りしていきませんか?」
「圧が怖いんでお断りです。」
素直にそう伝えると、そんなつもりは無かったんですが、と困ったように微笑まれる。
私がこういうのに強くないのを知ってか知らずか。
傘を持ってきたはずなのに何故かなく、神様が裏切ったとか思いながら、安室さんに案内されたカウンター席に座った。
安室さんの真ん前だったのは気のせいだと思うことにする。
「パスタで。」
「分かりました。今日はハムサンドじゃないんですね?」
「なんとなく。気分です。」
お返しとばかりに軽く微笑むと、彼は特に気にしなかったようで厨房の方に戻って行った。
「おまたせしました。パスタです。」
「……パスタです、じゃないです。なんですかこれ。」
パスタの横に、焦げ茶の個体が。
「チョコレートですよ。」
「いくら私でもチョコレートってことはわかります。なんでこれを出したのかと聞いているんですよ。」
もう気づいてるかもしれないが、最初の私は猫を被って明るい自分を演じていたのが数日で破壊。
ふたりが探ってくるのでもうめんどくさくなり、少し本性を表すようになったのだ。少し塩対応。
「僕が莉心さんのことを好きだから…と言ったらどうですか?」
「…は?」
どうですかって何が。
店内で女子高生達が悲鳴に近い声を上げている。それを安室さんはガン無視。
「好きです。莉心さんのこと。」
「すみません。精神外科の受診をおすすめします。」
あーやばいこの人。ついに頭おかしくなっちゃったよ。
「僕は正常です。」
どの口が言うか。
もうめんどくさくなったから、閉じ込めていた能力を解放する。心の声を聞く。
「莉心さんさえよければ…僕の恋人になっていただきたいのですが。」
⟬ハニートラップをしかけて、莉心さんから情報を…⟭
最後まで聞くまでもない。目的が酷すぎる。却下。
「すみませんお断りします。」
「…え?」
こんな容姿をしていれば今まであまり断られたことがなかったのだろう。彼は驚いている様子だった。
「ごめんなさい。私は貴方を好きになれません。」
「そうですか…分かりました。」
ハニートラップとか…もう凄いな、正義のためなら何でもするタイプか。疲れる。
「雨も止んできたのでそろそろ帰りますね。」
「そうですか、またお越しくだ……」
「きゃぁあああ!」
…スタートダッシュは私の方が早い。もらった。
などとどうでもいいことを考えている余裕はまだあった。その頃は。
「これは……!!」
後から来た(と言っても大して変わんない)安室さんが私の手元をのぞきこんで目を見開く。
まあめんどいからさっさと片付けますか。
「誰か警察を呼んでください。」