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仕事とは
尽きる事が無い
やろうと思えば
際限なくある
突き詰めようと思えば
無限にある
時間などいくらあっても足らない
要は
完璧を求め過ぎず
必要以上に突き詰めず
必要条件を満たす程度で
出来る限りの最上を求め
スピード感と
効率性を両立させる
時間を掛ければ良いというものでもない
だが
時間に余裕が出来た時に
しておく事で仕事の質が向上する事もある
これはこれで大切な事
営業補佐だった時分の自分では至れなかった境地
今の職責に就いて解った事
無人のオフィスに差し込む午前の日差し
休日の柔らかな朝日に照らされながら
今日も今日とて休日出勤をした
自宅の居心地の悪さから
自宅に居る純也から
逃げるように家を飛び出した
一人オフィスで過ごす時間が
二人で居る自宅よりも居心地が良い
一人オフィスでパソコンに向かい
より上の高みへと
仕事に邁進し昇華させる
コンコンッ!
ノックする音に反応し
顔を上げ振り返る
こんな週末に尋ねてくるのは
仕事中毒のリュカしかいない
「おはよう!やっぱり出社してたんだね」
「やっぱり?」
「最近働き過ぎじゃない?大丈夫?」
「むしろ今は休まなきゃいけない時期だろう?」
私が出社する気がしたのか
私の気配を感じたのか
私の匂いを嗅ぎつけ
リュカが尋ねて来てくれた
「大丈夫です、むしろゴロゴロしてるよりこっちの方が気が楽で……」
「……そっか。ならいいけど」
「そろそろお昼だしランチ行かない?」
そう言って
今日も
リュカはランチに誘ってくれた
最近は
週末の度に会えている
それはつまり
週末の度に休日出勤している
表立って会う事の出来ない
私達だけの時間
私にとって唯一の
心安らぐ時間
***
「そっか、まだDNA検査の結果出てないんだ」
「まあそうだよね、十日くらいだっけ?じゃあ来週かな」
相変わらず
ランチセットのハンバーグを注文し
子供の様に美味しそうに頬張るリュカ
そこには
社長の面影も
ビリオネアの面影も
微塵も感じない
純真無垢な少年の様なリュカ
そうは言っても
一大財閥グループの社長だ
今まで何度となく仕事でピンチもあっただろう
数多の死線を潜り抜けて来たリュカにとってみれば
今の私の境遇などピンチでも何でもないのだろう
冷静で
落ち着き払っていて
いつもと変わらない
まるで平常心そのものだ
「あ、そう言えば購買部の子の件、進捗あったみたいだよ」
——鈴木さんの事だ
鈴木さんは今週ずっと出社しなかったらしい
「んー……もうすぐ社内報回るだろうから良いかな……」
「それまでは絶対に他言無用だから徹底してね」
「あと、個人的な情報を内包するから個人名の名指しと具体的な内容は以後も他言と拡散は絶対にしないように!」
買収し新体制になって以後
コンプライアンスは徹底され厳しくなった
冒した違反は
その違反に応じて
相応の処罰を受ける
それ以外は個人の名誉に関するので
それ以上貶めてはいけない
コンプライアンスが徹底され厳しくなって尚
情報を秘密裏に私へ先出ししてくれたのは
リュカの私への信頼からだろうか
会える機会は限られている
私に関わる
私の心配の種
そう思ってリスクを冒して教えてくれたのだろうか
リュカ曰く——
鈴木さんは
とある仕事の案件で
発注先選定において
担当するとある会社の
とある営業担当と癒着していた
結果
公正な選定基準から逸脱して
その会社への発注が成されたらしい
というのが大まかな概要らしい
リュカも
具体的には言及しなかったが
それが
私の夫
純也と関係しているのは察している様に感じた
そして
そんなリュカを見て
純也が家に居る事の理由が
この事案と関連しているのだろうと悟った
それにしてもだ
予想はしていても尚
青天の霹靂
あの大人しい鈴木さんが
同期同僚である私の夫と
きっと
それを解っていて
不倫に留まらず
業務上の重大な不正まで……
まるで想像がつかないが
これで
全てが
一本の線で繋がってしまい
全てが
腑に落ちる結果となってしまった
ついぞ純也に愛情は残っていないが
とてもショックで
何故か悲しかった
「それで……鈴木さんはどうなってしまうんですか?」
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