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筆者の完全自己満足小説です。というかもう小説と呼んでいいのかすら分かりません。
ネタです。突然始まって突然終わります。
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「鬼太郎っ!!」
どろり、どろりと至る所から血が流れる。人間にしてはさらりとした透明感のある血は、すぐに自分のものだとわかった。
右腕は肘の骨が折れてだらりとしたまま動かない。左腕はかろうじて動くが、人差し指の真ん中辺りから肘までがぱっくりと裂けている。
何時もより視線が低いのは左足が付け根から溶けていて、無くなっているから。視界が悪いのは、頭から流れる血が邪魔をするから。
とある洞窟に充満する血の匂いが頭を鈍らせる。流れ続ける血は体温を奪っていく。
敵に邪魔されてやっとの思いで駆け付けた猫娘には迷惑かけるな。ズタボロにやられた僕の姿を見て彼女はどう思っただろうか。失望した?いや、違うんだろうな。恐らくそれは、きっと。
「ねこ、むすめ…っ!きちゃ、だめだ!」
振り返って怒鳴ると、彼女は泣きそうな顔をして気丈に笑った。すらりとした八頭身の身体に滲む血が主張する。既にもう傷だらけだというのに。
「大丈夫よ、私だってやれるんだから!」
…彼女はそういう子だ。僕がやられるくらい強くて、勝てない相手と分かっていながらも立ち向かえる。そんな強い子だ。でも、今回だけは君は来ちゃいけない。
なんとか右足だけでふらりと立ち上がると、左手でちゃんちゃんこの紐を解いて僕と猫娘を分断するように洞窟を塞いだ。
ああ、全く。さっきので動けるほどの力も無くなり、再びその場に座り込む。服に滲む血が身体を重くする。なんだか頭がくらくらしてきた。
大量の敵が、影が僕に襲い掛かる。今回は流石に…死んでしまうかも知れない。ぼんやりとそう考えつつ、痛みに目を瞑った。
ざしゅ。何かが切れる音がして重い瞼を開けた。
青くくすんだ学生服に、僕と同じ黒と黄色のちゃんちゃんこ。僕より少しだけ明るい茶髪は左目を隠し、口元は安心させるようににこりと笑う。その右手には、髪の毛で作られた剣があった。
「生きてるかい、主人公」
芯を持った少年の声が聞こえた。安心するような、そんな優しい、柔らかな声。
途切れそうな意識を無理矢理繋ぎ止めて、閉じそうな目を見開いて、動かすのも億劫な口を動かした。
「たかやま、せんぱい…?」
僕より先に産まれた、別世界の先輩。
はくはくと言葉の出ない口を動かしながら、ここにいるはずの無い人物に驚いた。
元々彼はこことは違う世界の住人だ。自由に行き来は出来るとはいえ、どうやってこの洞窟まで…??それにちゃんちゃんこも…!!
「僕の後輩をここまで虐めたんだ。覚悟してもらおうか。」
そう言って手を胸の前に翳した。相手は影、僕には光を作る手段が体内電気しかなく、相手に触れなかったから勝てなかったが…。そうか、高山先輩の地獄の業火なら或いは!!
「開け、鍵よ!来い、地獄の業火よ!!」
ぼうっ、と伸びた高山先輩の髪が真っ赤な炎になる。僕にだけは被害がないように先輩はちゃんちゃんこを僕に寄越してくれた。残る暖かい体温に安心しながら、全て終わったであろう先輩に目を向けた。
地獄の業火を仕舞った先輩は、すぐに僕に駆け寄って外へ運び出してくれた。その間話を聞いていれば、こっちの世界に来たのは偶然だったそうだ。父さんも猫娘も居なく、それに依頼も無かったので僕と遊びに来たらしい。だが家にも何処にも居ないので依頼の手紙を見て勝手に来てしまったらしい。来てよかった、と安堵していた。因みに出入口を塞いでいたちゃんちゃんこには退いてもらったらしい。これは別世界といえど同じ鬼太郎だからだろう。
「あの、せんぱい」
ひとまず手当てだけして貰った状態で、先輩に声を掛ける。なんだい、と優しい声が耳の中によく通る。
「助けてくれて、ありがとうございました」
「あぁ。…あぁ、どういたしまして!」