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「え…どういうことですか!私お店のために頑張って…!」
紫苑は混乱していた。
19の時から長年働いていたクラブから解雇を一方的に言い渡されたからだ。
何度拒否してもこちらではどうすることも出来ないと言われ、給料は締め日分までの全額と今まで頑張ってくれたせめてものお礼に退職金代わりのボーナスを出すと言われた。
一方的に電話を切られた紫苑はこれからの生活費をどうするか悩んだ。
その後は手当り次第に夜の店の面接に行ったが何故か顔を見るなり門前払いだった。
かくなる上はと風俗の面接も行ったが結果は同じだ。
それなら正社員でと思い履歴書を送るが高専中退でまともな仕事をしたことが無い、さらにはシングルマザーということで首を振られるばかりだった。
仕方ないのでパートで働ける所を探しているがなかなか条件が合うところがなく、しばらくの間は貯金を切り崩すしか無かった。
この貯金は唯愛のために貯めていたものだったので使うことには抵抗があった。
しかし背に腹はかえられない。
ある程度生活費以外は全て貯金に回していたので今月は切り詰めて生活しよう。
そう思い久しぶりに通帳に記帳をしに行ったが、記されていた金額に目を疑った。
「え!?一十百千万…きゅっきゅ、きゅ…9600万!?!?」
未だかつて見たことがない金額だった。
1億円近い金額が紫苑の口座に振り込まれていたのだ。
振込元の名前欄には「スキニ ツカッテ」と記されている。
紫苑は思考を張り巡らせ、これはあたかも間違えたかのように装い、使ったらその金額の倍額を請求される系の新手の詐欺なのではと考え過ぎてもはや現実的ではない可能性まで見出してしまっていた。
しかし好きに使ってと言われ、紫苑の年収の何十倍もの金額だ。
流石の倹約家の紫苑でも気持ちが揺らいでしまった。
そういえば水商売をしてて丸一日休みが取れた事はほとんどなかった。
店休日であっても自身の担当客にはもちろんママさんのお客様へ連絡を返したり、呼び出されてたら断る事はできず早朝にゴルフなども付き合っていた。
同伴やアフターもホステスが断る事は禁止とされているので、シングルマザーだと伝えていたお客様以外とはほぼ朝までコースであった。
そんな中での育児の両立は紫苑にとって無意識のうちにストレスになっていた。
たまにはゆっくり旅行にでも行きたい。
唯愛ももう小学生だから周りに迷惑をかけることもほとんどないし。
そう思っていた時だった。
「…少しくらいいいよね。贅沢したって。」
そう言って紫苑が向かった先は書店だった。
旅行コーナーをじっくりと品定めすると一番内容が濃そうな一冊を手に取った。
唯愛と二人で二泊三日くらいしてこよう。
温泉、リゾート、テーマパーク…沖縄や北海道もいいな。
いっその事海外デビューも…いや、海外は児童の誘拐が多いって言われてるからそれは唯愛が大きくなってからかな…こんなに心が弾むのはいつぶりだろう。
口元が緩んでしまうのを抑えてレジに持って行く為に通路を歩いていると、ふとあるコーナーが目に止まった。
「…スイーツ特集。」
懐かしい記憶が蘇る。
そうだった、あの時は五条くんと仲良くなりたくて少しでも振り向いて欲しくて、彼が大好きだったスイーツのお店をたくさんリサーチしていた。
あわよくば二人きりでスイーツデートができるかもしれないと今考えたら叶いもしない願望を糧に彼が好みそうなスイーツのお店に1人で出向き彼に会えた時にその感想を伝えていた。
彼との行為よりも事が終わった後の数分間だけの会話が何よりも楽しかった。
そのせいで唯愛をこのような境遇に巻き込んでしまったというのに、五条くんから離れてしばらく経ってもまだ彼への好意が消えないんだ。
_____“はいこれパフェのお礼。俺の顔が常に見れるなんて嬉しいだろ”“うわっいつのか分からねえ飴出てきた。いらねーこれお前にやるよ”“おい見ろよこれ!この骸骨お前にそっくりだから持ってきた”“これもうインク出ねえから捨てといて。欲しいならやるよ。”_____
彼から貰ったものは全て嫌がらせとして不用品を渡していただけだったみたいだけど、はたから見たらガラクタを詰め込んだだけの箱でも私にとってはかけがえのない宝箱だった。
そんな大切なものも彼を忘れるために全て高専に残してきた。
しかし、どんなに彼を忘れようとしてもふとした瞬間に五条くんのことを思い出してしまうのだ。
そのせいでいい思い出と同時に辛い思い出も蘇ってしまう。
_____ “ もし妊娠してたらまじ迷惑なんだけど、俺が一発腹殴って堕胎させてやるよ”_____
高専を去る前に最後に聞いた彼の言葉。
あのお金が振り込まれた時もしかしたらと思ったが彼のこの言葉を思い出しありえないと結論づけた。
きっと九十九さんや夜蛾先生が私の事を心配して二人で送金してくれたのだろう。
旅行に行ったら二人にお土産を渡そう。
そういえばこの間は肝が冷えたな。
まさか夏油くんと鉢合うなんて。
彼は私に気づいていたようだったな。
妊娠のことは隠してはいたけど、唯愛は私似では無く五条くんと瓜二つだからもしかしたら気づかれたかもしれない。
まだしばらくは都内に近づけないな…。
「え!ママ、お仕事辞めたの?」
唯愛は学校から帰ってくると母から言われた事に驚愕した。
話を聞くとやめたと言うよりも辞めさせられたというニュアンスだった。
ママを辞めさせるなんてどうにかしてるよその店。
今度乗り込んで鼻フックキメてやんぞ。
「でもね、お金のことは大丈夫。優しい人がお金をたくさんくれたから、しばらくはママお家で唯愛とゆっくりすることにしたの。」
優しい人がお金をたくさん…??
いやいや待って待ってそれなんか危なくない??
ママやばいやつだよそれ絶対。
くそう、幼女じゃなくてアラサーのままだったらママから危ないヤツ引きはがせるのに。
いやでも話を聞いてみたら大金みたいだし、ママが楽になるからいいのか?
いやうーんでも…
「それでねママ唯愛と旅行行きたいなと思って!旅行本買ってきちゃった!!」
そう言って唯愛の前に目を輝かせながら旅行本を見せた。
「旅行!?行きたい行きたい!!」
ママと初めての旅行!!
めっちゃ行きたい!!
ママとは近間しかお出かけしたことが無かったし、泊まりも行けなかったから少し退屈していた。
もしかしたら東京に行きたいと言ったら連れて行ってくれるのかな?
生五条悟に会えちゃったり!?
うおおこうしちゃいられない!!
「それでね、北海道か熱海温泉か、沖縄辺りがいいかなと思ったんだけど唯愛はどう?」
いや見事に東京外されてるんだけど。
いやでもそっか東京って癒されると言うよりも疲れるものだもんね。
うん、ならしょうがない。
その三択なら悩ましいけど…ここはやっぱり!
「沖縄行きたい!海とか水族館とか!美味しいご飯いっぱい食べたいな!」
そう、私は沖縄を選んだ。
何故かって?
聖地巡礼に決まってるだろう。
推しが理子ちゃんと遊んでいたみたいにナマコの内臓ぶしゃってやりたい。
もちろんキモイけど推しもやっていたから我慢できる。
「沖縄ね!ママも沖縄いいなって思ってたの。そしたら沖縄に決定しよっか!」
見た目は美幼女、中身はアラサーついに呪術廻戦の世界で推しの聖地巡礼に行って参ります!!!
青い空、青い海、蒼い五条悟、は居ないがとうとう着いたぞ沖縄!!!
季節は夏。
この日まで九十九さんの厳しい特訓に耐え、夏休みの宿題を推しの夢小説を見るが如く光速で終わらせ、毎日天気予報とにらめっこし続けた甲斐があった。
2泊3日の初旅行!
ママありがとう!!
学校で友達に自慢しまくってやったぜ。
台風が心配だったけど無事に旅行期間は避けられたみたい。
流石晴れ女二人。
ただ飛行機は今世では初、前世では修学旅行で乗った以来だったのであの特有の浮遊感が慣れなかった。
でも定刻通り離陸出来たし着陸も特に問題もなくすんなりだった。
こうして空港に辿り着いた私たち親子はまず宿泊予定のホテルに向かった。
ホテルもなんとあの超有名ラグジュアリーホテル!
スイートは流石に繁忙期で取れなかったけどその1つ下のランクの部屋が取れた。
ホテルのチェックインは15時だったので特別にトイレで着替えさせて貰ってホテル直結のビーチに行った。
ホテルからレンタルしたパラソルを砂浜に立ててレジャーシートを敷くとキラキラの海に走り出す。
ナマコ!!ナマコは何処えー!!
「唯愛!待って!」
急に走り出した私をママがガシッと掴んで引き止めた。
「ちゃんと日焼け止め塗らなきゃだめだよ。唯愛すぐ赤くなっちゃうんだからお風呂入った時痛くなっちゃうよ。」
ぐぬぬそうだった。
今世の私美白過ぎて日焼けすると赤くなって痛いんだよね。
黒くなる事はないからラッキーとか思ってたけど普通に痛いのもやだ。
「ママ塗って〜。」
「もうしょうがないなあ。」
いいだろう。
美人ママに塗ってもらえるなんて娘の特権だぞ。
にしてもうちのママ、着痩せするタイプだったみたいで特にセクシービキニでは無いはずなのにもうおっぱいが溢れんばかりになっている。
元アラサー女から見るにHカップ以上はあるぞこれ。
巨乳ってレベルじゃねえ。
私の血縁上の父親、絶対巨乳好きだろ。
楽しむだけ楽しんでママに私のこと押し付けて消えるあたり人の心とか無いんか。
ドブカス直哉以下だぞ。
でもドブカス亡き後も私をこんな素晴らしいおっぱいで育ててくれたのか。
ママありがとう。
娘は逞しくなります。
「終わったよ唯愛。」
「ありがとうママ!じゃあ私もママのお背中塗ってあげる!」
「いいの?じゃあお願いしようかな!」
「ママのお背中すべすべ〜。」
「ちょっと唯愛、くすぐったいって。」
むず痒そうに笑うママを見たら楽しくなっちゃってわざとくすぐった。
ママ反応100点過ぎる…。
これ私が男だったら大分危ない方に進んでたぞまじで。
「唯愛!もうこれくらいで大丈夫だから!もう海入ろう?」
おっとしまった。
ママが可愛すぎてつい夢中になっちゃったよ。
「分かった!また塗る時お手伝いするね。」
一方その頃、蒼い五条悟こと五条は自分の娘にドブカス扱いされていることなど知りもせずホテルのバルコニーにいた。
右手には双眼鏡、左手には妊娠検査薬を握り締めた彫刻の様なイケメンは、素人には理解できないアート作品の様なチグハグさを醸し出している。
その目の焦点は正しく今沖縄の海を満喫している紫苑と唯愛の姿だった。
「悟、一応聞いとくけど何見てるの?」
「女神と天使。」
「その単語だけで理解出来る自分もなんかきもく思えてくるよ。あと絵面エグいから検査薬仕舞いな。」
九十九さんから二人が沖縄に滞在すると聞き、伊地知を脅して無理やり予定を調整して追いかけて来た。
先日僕が今までの分を含めた養育費を振り込んだのでそれを使って旅行に来たらしい。
何でも二人で旅行に行くのは初めてらしくてすごくはしゃいでいる。
双眼鏡越しではあるがやっと二人を生で見ることが出来た。
写真で見るよりも何倍も可愛い。
傑が言った様に紫苑は高専の時と比べて大分印象が違っていて少し濃い目のメイクが似合っている。
赤いリップが瞳の色とマッチしていて妖艶に映った。
だめだよそんな露出したら。
変な男が寄ってきちゃう。
「悟、流石に瞬きはした方がいいよ。普通にきもい通り越して怖い。」
「大丈夫、僕最強だから。」
「全然理由になってないよそれ。」
「傑、もっと近くで見に行きたいからビーチ行くぞ。」
「だめだよ。二人に気づかれる。」
「変装してくに決まってるでしょ。今日のために色々グッズ買ったんだから。」
夏油のため息が聞こえるが五条は何処吹く風で揃えてきた変装グッズが入ったカバンを漁り、乱雑に夏油へ投げ渡した。
カツラに帽子にカラコンにマスク、かなり本格的に揃えたようだ。
夏油は渋々それらを装着する。
「カラコンってめっちゃ難しいな。昔元カノがぱぱっと着けてたから簡単だと思ってた。」
「分かる。こんなもの目に入れるとか正気の沙汰じゃないよね。あいててて。」
「あ、やっと片方入った。」
「いやお前が目黒くないのめっちゃ違和感しかない。」
「私も自分の目の色が緑なんて違和感しかないよ。ちなみに悟は何色にしたんだい?」
「赤」
「…だと思ったよ。」
「なんだよ傑。そんな目で見ないでよ。」
「そもそも君、サングラスするならカラコン必要無くないか?」
「念の為だよ。六眼見られたら100パーバレるもん。」
それであの子から拒絶されたら嫌だしね。
自分が向けられたいのはあの子の笑顔だけだよ。
「よし、僕も入った。どう?」
「…やっぱりイケメンは何でも似合って羨ましいよ。」
「傑に褒められても嬉しくないんだけど。」
「私もできることなら褒めたくないよ。」
二人はカツラを被り帽子を上から被せた。
「あはは!傑なんかホストみたい。」
明るい茶髪のカツラを被った夏油をいじるが、夏油も同じ意見だ。
「そういう君はどこぞのヒモ男にしか見えないんだけど。」
少し襟足長めの黒髪のカツラを被った五条は似合ってはいるが、ますますクズっぽさが否めない。
「いやいや如何にもイケメンパパって感じでしょ。」
「1ミリもそんな要素ないよ。」
外に出ると主に頭にめちゃくちゃ熱が篭って蒸し焼きになりそうだった。
夏油は思わず帽子を取り暑さに項垂れる。
「あぢい…。」
それは五条も同じようだった。
ここまで暑いのなら海に入りたいところだが、すぐ近くにはあの二人が浅瀬ではしゃいでいる。
万が一カツラが取れれば速攻でバレるだろう。
五条と夏油は砂浜に腰を下ろし紫苑と唯愛を見守ることにした。
めちゃくちゃ暑いが一応水着にアロハシャツなので風通しは抜群だ。
「なんかさ懐かしいよね。」
「そうだね、あの時まさか君から提案されるとは思っても見なかったよ。」
「まあ、こう見えて僕優しいからね。」
「はは、そうだね。あ、唯愛がナマコ拾ったみたいだよ。」
「え、まじで?うわ振り回してる。めっちゃ内臓飛び散ってない?」
浅瀬から紫苑の悲鳴が聞こえてくる。
それをいたずらっ子の様に紫苑に投げる唯愛。
あの時の自分達と重なった。
「女の子なのにナマコ触れるって大分肝座ってるね。」
「うん、てかあの天使の様な可愛い幼女がナマコの内臓噴射させてるとさなんかこう、男としてもパパとしても複雑な気持ちになるよ。」
「やめろ悟。そんなこと言われたら私までどういう心境で見たらいいのか分からなくなる。」
「人の娘卑猥な目で見てるとか最低だな傑。」
「君がそんなこと言うからだろうが。」
「お、紫苑だけ上がって来た。って、唯愛なんか潜って行ったけど大丈夫?あの子って泳げるの?」
「信太さんが行かせたならそういうことだろう。万が一溺れたら私らが泳いで助ければいいさ。」
「それで惚れ直しました〜!好きです〜!ってなれたらいいのになあ。」
「多分無理じゃ無いかなそれ。」
「だよな…って、あいつ一人になって早々にナンパされてるよ。」
二人組の男達は唯愛が海に潜るのを見計らったのか、紫苑の元に行き強引に手を引っ張って連れて行こうとしていた。
「悟!」
「任せとけ。フォーメーションYだ。」
「ちょっと…やめてください!」
「いいじゃんねえ?チビが戻ってくるまでさ、あそこのテント来てよ。」
「大丈夫だってちゃんと気持ちよくしてあげるから。」
唯愛が居なくなった途端に意地汚い男共に強引なナンパをされてしまった。
こいつらの目的は確実にそういう事だろう。
先程から胸元と顔に品定めするかのように視線を向けていたのでまさかとは思ったが本当に気持ち悪い。
フガフガと音を鳴らす鼻息が肩に吹きかかってゾワッとした。
唯愛、早く帰ってきて。
「おい人のシマでなにしてくれとんじゃあワレェ!」
「ワシらんとこの姐さんに色つけようたぁええ度胸やんけェ。相当な落とし前つけてもらわにゃあかんなあ?」
めっちゃでっかいめっちゃこっわいヤクザみたいな人たちが来た。
その瞬間、声にならない悲鳴を上げて土下座をする男二人は促されるままに目にも止まらぬスピードでテントを畳み、乗ってきた車でどこかへ立ち去った。
「あ…えと、ありがとうございます。」
二人とも威圧感が凄いが助けてくれたのでいい人たちなのだろう。
「おう、姉ちゃん気いつけや。男は皆狼や。」
そう言って黒髪の人から頭をポンポンとされ不覚にもドキッとしてしまった。
数年ぶりの五条くんに寄せていた感情。
「あ、あの!良かったらお名前を…」
名前を聞き出そうとした直後、彼の顔面に吹っ飛んできたナマコがクリティカルヒットした。
顔に張り付いたままのナマコがブシャっと彼の顔面に内臓を吐き出した所を、あの人に似ているなと思いながら呆然と立ち竦んだ。
ママが疲れた様なので私だけ少し深いところに潜ってるよ。
こう見えても前世は泳ぎが得意だったからこんなのお手の物よ。
ナマコ見つけた時はテンション上がったけど本当にあんな感じで内臓出すんだね。
なんというか、その…うん…まんまだなって。
キモがるママを揶揄うのが楽しくてつい熱中しちゃった。
でもナマコ楽しいからもっと欲しい。
ぶくぶくと潜って行くと水深2m付近にナマコの集団を見つけた。
興奮のあまり片っ端からかき集めて陸に向かった。
てか魚もめっちゃ綺麗。
赤やら青やら黄色やらが舞うように泳いでる。
ママにもこの光景見て欲しいな。
そう思いながら海から上がると、なんということだ。
ママがなんかめっちゃでっけえめっちゃこっわいチンピラ二人に絡まれているではないか。
これは娘として何とかしなければ。
唯愛は両腕と右足を高く上げ、綺麗なピッチングフォームを決めながらナマコをチンピラに力の限り投げ飛ばした。
見事チンピラの顔面にクリティカルヒットである。
そして状況を理解出来ないという顔にありったけの内臓を吐き出すナマコ。
ナイスファインプレー!!
「私のママに手出そうとすんな!!ナマコに顔射されて死ね!!」
そう言って残りのナマコを全て投げつけ、ママの手を引いてホテルに戻った。
「傑…。」
「私らが出なくとも、あの子がいればどうにかなったんだね。」
「そこじゃない、僕の天使から顔射って言葉が聞こえたんだけど僕の聞き間違えだよね。」
「…最近の子はおませさんが多いからね。」
「いっそのこと、唯愛にあの単語教えた奴全員殺してしまおうか。」
「悟、気持ちはわかるけど君がそれ言ったら洒落にならないからやめな。」
その後ホテルに戻ったら、まさかのママからあの人たちは助けてくれた恩人だったのだと言われた。
やべえ…見た目で判断しちゃったせいでやっちまった。
ごめんよチンピラさん二人。
絶対ナマコの内臓くっさいからちゃんと洗うんだよ。
帰るまでにあったらちゃんと謝ろう。
その後はママが行きたいと言った沖縄料理屋に行って、ソーキそばともずくの天ぷらを食べた。
スープも麺もめっちゃ美味しかった。
もずくの天ぷらはオリオンビールを添えたかったけど今は幼女だから我慢我慢。
お店から出てからチェックインまでお土産屋さんをプラプラと探索して15時にホテルに着いた。
部屋に入ると五条悟5人分くらいのクソデカベッドがあり、大きな水槽で熱帯魚達が泳いでいた。
窓から見える景色はもちろんオーシャンビューで大きなお風呂からも外の景色が眺められる素敵な部屋だった。
一生ここに住み続けたい。
パシャリと背後からシャッター音がした。
ママが私の写真を撮ったみたいだった。
「もー!ママいきなり取らないでよ!事故ってたらやだ!」
「唯愛みたいな可愛い子なら事故るなんてことないよ。」
くすくすと笑うママの隙を付き、こちらも遠慮なく写真を撮った。
「わ!やり返されちゃった。」
それからは部屋の探索をしたり、枕投げをしたりしてあそんだ。
もし万が一備品を壊してしまったらとんでもないことになるので加減をしてだけど。
夜ご飯は前世でもほとんど食べたことが無いようなコース料理だった。
私はお子様メニューだったけど前世の大人様だった時ですら食べた事がないレベルのご飯だ。
その後は少しだけ夜のお散歩をしてママとクソデカ薔薇風呂仕様なお風呂に入って、気付いたらふかふかのベッドで大の字で寝てしまっていた。
明日はもーっといい日になるよね!ゴジョ太郎!
「ッア…ファッへ、ヘッッッケェイ!!!」
「くしゃみがハム太郎。」