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「涼架!逃げて!早く!」
あの日のことは何よりも鮮明に覚えてる
1年前の夜、外から聞こえた空襲警報で目が覚めた。すぐに母や兄と避難をする準備をしたが、空襲警報が鳴り始めたのが遅れたらしく家の周りはあっという間に火の海になった。
「涼架…逃げろ!」
「でも、2人が…!」
母と兄が崩れた家の下敷きになっている。必死に瓦礫を持ち上げるが2人は足が潰れて出てこられない
「いいから!」
兄の怒号が耳を突き抜ける
「早く逃げろと言ってるだろ!!」
「涼架!逃げて!早く!」
母にまで逃げろと言われたその瞬間さらに上から火を纏った瓦礫が落ちてきて間一髪のところで避けた。しかし母と兄はその瓦礫に完全に埋もれてしまった
「母さん!!兄さん!!」
2人のことを叫び続けても火は広がるばかりでとても救助できる状態じゃない。家の前で立ちつくしていると近くに住む元貴のお母さんに防空壕へ行こうと言われた
「離してください!まだ母と兄が!」
「ここはもうだめ!早く行かないと!」
「でも…!」
「お願い、涼架くん…貴方までいなくなったらお父様の帰る家が無くなるわ?それに元貴や滉斗くんも悲しむから…」
「っ…はぃ…分かりました」
「わかってくれてありがとう」
元貴のお母さんはフラフラしてる僕を支えながら一緒に歩いて防空壕まで行ってくれた。その日は一晩壕で過ごしたものの、眠れないまま朝を迎えた
家を見に行ったが昨晩よりも酷い状態になっていて、今まで暮らしていた家だとは思えない程の悲惨さだった
「はぁっ…はぁっ…ゲホッ、ゲホッ…」
咳の発作が出ても瓦礫を掻き分ける手は止めずに母と兄を探し続けたのに見つからなかった。
「うぁあ゛あ゛あ゛あ゛っ…!!」
最終的に手元に残ったのは、随分前に撮った家族写真だけだった。
その後僕は元貴や若井の家族に助けてもらいながら1人で暮らした。元貴や若井が所属する航空隊の通信部に入ろうと決心したのはそれからすぐだった。
1年たった今でもその日のことは鮮明に覚えていて、時折夢にまで出てくる。
それでも、周りの人に恵まれたおかげで今こうして生きることが出来ている。絶望しても、助けてくれる人がいる。
それを胸に刻んで、最期まで闘い続けたい