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「はあ!ワームドっていう訳の分からない虫喰いが物語を食べまくってるだって?」
すっごい理解力だな。
貴族青年Dは関心していた。
「それじゃあ、主人公と決着つけられないじゃないか!」
「決着?」
「そうだよ。俺は主人公が物語冒頭で戦う小物の不気味系チンピラカード使いなんだ。ウフッ!」
青年の説明に貴族青年Dは納得した。
なるほど。やっぱり人相悪いのはそのためか。
「でも、それって典型的なモブだよな」
「だからなんだ!俺にとっては主人公とのたった一つのバトルは決勝戦なんだ!いつか絶対に勝利してやる」
「モブなのに?」
貴族青年Dは率直な意見を述べた。
「モブにだって奇跡が起こるかもしれないだろ!」
断言する不気味系チンピラカード使いに目からうろこのような衝撃を受ける貴族青年D。
「前向きだね」
セイも彼に興味がわいたようだ。
「それで何試合目まで行ったんだ?」
「一万五千二百六十二回…」
「途方もない数だな」
それだけ同じシーンを繰り返している古参の物語であることにも驚く。
貴族青年Dは自然と笑みがこぼれた。
「なんかちょっと応援したくなってきた」
「へえ~。お前いい奴だな」
笑った不気味系チンピラカード使いの表情はやはり薄気味悪い。
しかし、なぜか清々しい。モブ同士の謎の共鳴感とでもいうのだろうか。なんだか照れ臭くなる。
「言っとくけど、褒めても何も出ないからな!」
強い口調で言い返す貴族青年D。
「そういうわけだから、物語がなくなったら困るんだよな!」
「なら、一緒にワームドを撃退するか?」
貴族青年Dは当たり前のように聞いた。
そういえばこうして真正面から人と話した事はなかった気がする。
大体、ヒロインや攻略対象の背景を歩いたり拍手したりしているのが日常だったからな。
「頼まれなくたってやってやる」
不気味系チンピラカード使いの迷いのない返事にセイもうれしそうだ。
「いい返事だね。思えば自己紹介がまだだったね。僕はセイ」
その言葉で貴族青年Dはあることに思い当たる。
「そうだ。俺、名前決めたんだった」
「えっ!そうなのかい?早く教えてくれよ」
そう言うセイの頭には音符が浮かんでいそうな声だ。
「モブなのに名前があるのか?」
「名前がないとコミュニケーション取りにくいだろ?」
セイはそう説明した。
「それもそうだね。俺も考えるかな」
楽しそうに語るチンピラカード使い。
「じゃあ、発表するぞ。俺の名は…バックだ」
高らかに公表したバックとは異なり4つのポカンとした目と合わさる。
「また、なんでそんなモブっぽい名前なんだい?」
「言えてる。文字通り背景って意味だろそれ…」
「なんだよ。そのノリ。別にいいだろ。俺はモブキャラとしてのアイデンティティを守ってるだけだ!」
折角自分にしっくりする名前を考えたっていうのに…。
「まあ、君が言うならそれでいいか」
「俺もいいと思うぞ。アイデンティティは大切だからな。これからよろしくなバック!」
「ああ」
ピコン!
またこのタイピングでワームド出現かよ。さっき退治したばっかりじゃん。
という事はまた上まで泳ぎかよ!
ハードすぎる…。