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#年の差
水無月 京
836
鷹槻れん

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鷹槻れん

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#強引
いつの間にか眠ってしまったようで、羽衣子が目を覚まし、ぼんやりとした頭で枕元の時計に目を向けると時刻は午前二時を過ぎていた。
「……眠っちゃったんだ……」
こんなに遅くまで眠ってしまったのかと羽衣子がゆっくりと身体を起こしたその時だった。
部屋の外から微かな物音が聞こえた羽衣子が耳を澄ませてみると階段を上ってくる足音だった。
(昴さん……?)
そう思った羽衣子は確かめる為に部屋を出た。
すると廊下へ出たところで、ちょうど階段を上りきった昴と目が合う。
「……昴さん」
「羽衣子」
思いがけず鉢合わせた二人の間にほんの一瞬、気まずい沈黙が落ちたものの羽衣子は少し戸惑いながら帰りを待っていたことを伝えるように微笑んだ。
「あの……お帰りなさい」
「ああ。ただいま」
短く返された声には僅かな疲れが滲んでいて、羽衣子は何か言おうとしたけれど言葉を選ぶように口を閉じる。
「…………あの……」
そんな羽衣子を見た昴は、
「すまない。先にシャワーを浴びてくる」
「あ、そうですよね。すみません……」
「いや、お前は悪くない」
すぐに否定してから昴は少しだけ視線を逸らした。
「その……シャワーを浴びたら、少し話をしよう」
「……良いんですか?」
「ああ」
そう答えた昴は表情を和らげる。
「お前の部屋に行ってもいいか?」
「はい。待ってます」
「分かった」
二人はそれだけ言葉を交わすとその横を昴が通り過ぎた、その瞬間、羽衣子の鼻先を掠めた微かな匂い。
それは鉄のような、血の匂いに似ていた気がして思わず振り返るけれど、昴は既に書斎へ入ってしまっていた。
(……今の……)
気のせいだったのだろうか。
そう思おうとするのに鼻の奥にはまだあの微かな匂いが残っていて、羽衣子の胸は不安でいっぱいになった。
昴がお風呂へ入っている間に羽衣子はキッチンで二人分のハーブティーを淹れて自室へ戻る。
それからほどなくして、控えめなノックの音が部屋に響いた。
「……どうぞ」
羽衣子の返事と共に扉が開き、シャワーを浴び終えた昴が入ってくる。
「待たせたな」
「いえ、あの、こちらへどうぞ」
「ああ」
羽衣子にベッドの上へ座るよう促された昴は素直にそこへ腰を下ろすと、羽衣子はその横に座ってベッド脇のチェストの上に置いていたカップを手に取ると昴へ差し出した。
「よかったら、これ……」
「ハーブティーか」
「はい、その、少し疲れているように見えたので……。良かったら飲んでください」
「……ありがとう」
昴は受け取るとカップに口をつける。
「……うん、落ち着くな」
「良かったです」
そう答えながら羽衣子は自身のカップを手にして飲むと、横に座る昴に時折視線を向けていた。
羽衣子は先程別れ際に感じた匂いのことを聞きたかったけれど、
「…………」
どう切り出せばいいのか分からず口に出来ない。
そんな中、昴が口を開いた。
「……羽衣子」
「はい?」
「この前言っていた旅行のことだが……」
「旅行……」
思いがけない話題に羽衣子は少しだけ目を瞬かせる。
以前話していた二人旅行。
けれど、色々なことが重なって先延ばしになっていた。
「来週末にしないか?」
「……来週末、ですか?」
「ああ」
旅行は行きたいと思っているはずなのに何故か躊躇いが生まれてしまう羽衣子。
だけど、色々なことがあった今だからこそ、何にも縛られずに二人きりで気分転換するのもいいのかもしれない。
そう考えた羽衣子が、「はい、楽しみにしてますね」と答えると昴の表情が僅かに和らいだ。
コメント
1件
お疲れさまー!86話読んだよ。 深夜の静かな再会シーン、すごく良かった…。羽衣子が待ってたって伝えようとする気遣いと、昴の疲れた「ただいま」がじーんとくるね。そしてハーブティー!そういう細かい優しさが沁みるわ。でも血の匂いの伏線が気になる…。旅行の話が出たから、少しは心が和らいだのかな。次が楽しみ!