チュンチュンチュン
おーい、__!!帽子忘れてるよ~!!!!
遅れるってぇ!!遅れたら_君のせいだからね~!
懐かしいなぁ、
俺だって、聞こえてたはずなんやけどなぁ
ーー
肩を叩かれた感覚がして重い瞼を開ける。
目の前には赤メッシュをぶら下げて俺を覗きこんでいる明那がいた。
お は や う
おはやうってなんやって一瞬戸惑ったけど、俺のために頑張ってくれてる。
ちょーうれしい。間違ったって顔してんのも可愛い。
優越感に浸りながら俺も身体を起こして、遅れておはよう、と返す。
明那はなにかを喋って、にこにこしながら部屋から出ていった。
きっと朝ご飯のことだろう。
俺は耳が聞こえない。聞こえなくなった。医者から聞くとストレスが原因だってさ。
最初は聞こえにくいだけだったんやけど、だんだん聞こえなくなってきて、、、って感じ。
もう覚えてないけど。
医者のあの表情。事実を受け止めきれなかった明那が、何回も何回も聞く。
面倒くさそうに、答えるあの顔。
患者を客としか見ていないあの目。
無駄なことしか覚えていない。脳が記憶していない。それほど感情的になってた。
明那の声を聞けない、自身の耳に。
明那に迷惑かけるくらいなら死のうかな、とも思った。というか現在進行形だったり。
そんな俺をずっと支えてくれたのが明那。
俺のために手話も覚えはじめてくれてる。ずっと、紙に文字を書いて俺が受け答えするのが普通だったから、ちょっと嬉しいの反面、焦っている。
何故なら、手話を習うのをサボっていたから。
少し前に頑張って覚えたんやけど、 どうせ使わないと思っていたから適当だったりする。
食欲をそそる匂いが鼻腔を掠める。
明那のご飯が食べれると思うと身体が勝手に動いていた。
ーー
朝ご飯を食べて、明那が大学に行った。
俺が目の前にいるのにわざわざ書いてくれた置き手紙。明那らしい絵文字まで。
[大人しくしてろよ❕❕😠😠お昼前には頑張って帰る🐱💪💪]
いつの間にか涙が頬を伝っていた。
インクが紙に滲んでいると認識するのには時間がかかった。
どれだけ優しいのだろう。
こんな耳も聞こえない奴に構っている時間なんてないだろう。
はやく帰ってくる必要もない。
ーー
生きているだけで皺寄せがくる。
死んでしまえば皺寄せなんてなくなる。
もう一回、明那の声が聞けたら。
他の音なんかどうでもええから、君の声が。
大量の錠剤の薬を水で流し込む。
胃に流れてくる感覚が分かって気持ち悪かった。
視界がぼやけるのが嫌で、重い瞼を閉じる。
数時間振りの睡眠。
もう明那のおはようは見れないやろうな。
END
コメント
4件
うわ…好きすぎる…ストレス溜まる不破っち、明那の声聞きたいって思ってんのめちゃめちゃすこです…‼️‼️ホストもできなくなると思うんですけど、その事を何も考えてないところ明那がどれだけ大きな存在か、ホストはただの「仕事」っていう感じがして良きです…(日本語壊滅的)