「月が綺麗だね」
「そうだね、てか雨降りそう」
「ほんとだ。いやもう降ってるよ!」
昼間に出る綺麗な月は暗い雲に隠れてしまった
ぽつぽつと頭の上に落ちてきたのは雨粒だった。そうだ、今日は雨が降る予報だったんだ。
「雨が降ってきたため今日の練習は中止します。速やかに室内に入るように」
頭がズキズキする 僕は偏頭痛持ちだから雨の降る日や気圧が下がる日は体調が悪くなってしまう。
「フィンくん行こう」
「あ、うん」
まだマッシュくんには気づかれて無いみたい。このまま通せればいいんだけど…
1、2、3、4限は難なく終わった。
酷くなり始めたのは5限目の始めからだった。
雨が強くなり始めて風も吹いてきた。
「うわあやべーな」「ガラス割れそう」「嫌な天気」
みんなが外を見て盛り上がってる。
「ほら静粛に。今は授業中ですよ」
先生が声をかける。
「ねえ」
「うわっ」
「びっくりした…どうしたの?」
「さっきからずっと机に突っ伏してるから。顔色悪いし。大丈夫?保健室行く?」
「偏頭痛だから大丈夫だよ。それにこの授業終わったら帰れるし。」
「そう、ならわかった。酷い時は言ってね。僕が一瞬で迎えに行くから」
マッシュくんはそう言いながら授業中にも関わらず小さなシュークリームを食べ始めた。
「うま」
「ありがとう、マッシュくん」
「友達の為だから。」
「うわぁ好き」
そんなこんなで話していると授業終了の鐘が鳴った。
やっと帰れる。帰って早く寝ようそう思いながら部屋に戻る。
「やっと終わった…おやす」
寝ようとした瞬間、ドアが開いた
「いた」
「え?」
「探したんだけど。」
「いや探されてたの知らないんだけど…」
「行くよ」
「え、どこに?てか僕今寝ようとしてたよね?見てたよね?」
「僕の部屋。」
「で何するの?」
「…」
黙っちゃったよ。早く寝たかったのに…
そこから少し沈黙が続いた。先に沈黙を破ったのはカルパッチョだった。
「…から」
「なんて?」
「一緒にいたかったから」
乙女だなぁ。僕より乙女してる。今僕どんな顔してるのだろう。
「そ、そっか」
「ついた」
「ちょっとベッド貸してくれない?少し休みたいんだ」
「なら隣の…」
「隣のベッドって先輩のだよね!?使えないよ!」
「お前うるさい」
「それは申し分ない、、じゃあカルパッチョのベッド借りてもいい?」
「え」
「え」
「…別にいいけど」
「ありがとう。」
「ちょっと寝るから何かあったら教えて。おやすみ」
「おやすみ」
カルパッチョには申し訳ないけどゆっくり休んじゃおう。次起きる頃には雨も上がってるだろうな そう思っていた。
ゴロッと1発鳴った
「ひっ」
「え、何」
「あ、いや、何でも…」
思わず飛び起きてしまった。僕は小さい頃から雷が苦手でトラウマをもっているから雷が怖くて仕方がない。
鼓動が早くなるのを感じる。ゆっくり深呼吸をして眠りにつこうとした次の瞬間
ゴロゴロゴロッと大きく鳴った。
怖い。ごめんなさい。鳴らないで。
呼吸すらも早くなり始める時、
「か、カルパッチョ、い、る?」
頑張って出した声は震えていて小さかった。
恐る恐るベッドから顔を出してみるとそこにカルパッチョの姿は無かった。
どうしようどうしようどうしようどうしよう
頭の中は「怖い」の言葉で埋まっていく。
身体は動かないし、頭は痛いしで最悪
どうしようと悩んでいると
もう1発大きな音が鳴った。
「やだ、もう無理、」
呼吸が浅いことは自分でもわかっている。けど深呼吸の仕方が分からない。焦りすぎて忘れてしまった。気分が悪い。
情けないな 雷如きでさ もう16なのに。
「フィン?」
聞き覚えのある声がした。
「大丈夫?」
大きな足音が頭に響く
「ごめ、ん」
「別にいいから。深呼吸して」
「わか、んない」
「教えるからゆっくりしよう」
そう言ってカルパッチョが背中を摩ってくれてるお陰で苦しかった呼吸は段々と落ち着いてきた。
「急にどうしたの。」
「…ちょっとごめん、トイレ、行かせて」
「待って」
腕を掴まれる。結構痛いんだけど
「…何」
「ここでいいよ」
「……いや、大丈夫だから」
「もう喋るのも限界なんでしょ」
図星だ。なんで痛いところばっか突っ込んでくるの…
「別に何も言わないし、思わない。僕が辛い時も一緒に居てくれるのはフィンの方でしょ。だから今は僕の方から一緒に居る」
何そのセリフ どこで覚えてきたのほんと
「…じゃあ」
「水」
「え、何するの」
「気分悪いなら先出しちゃった方がいいかなって」
「や、やっぱい」
「駄目。」
力強いな。抗おうとしたけれど気分が優れないからそんなに力が出なかった。
「大人しくしてればすぐ終わるから」
「ホントにいいって」
段々と迫ってくるカルパッチョの太くて長い指に恐怖を感じる。
「すぐ終わるから。気持ち良くなれるよ」
「……すぐだよ」
「僕嘘つかないよ」
意を決して口を開いた。カルパッチョの指はすんなりと入っていって喉の奥を付いた。
その瞬間今まで我慢してきた異物たちが胃から凄い勢いで逆流してきた。
「う”ぇっ」
バシャバシャとゴミ箱に打ち付ける吐瀉物に対して僕は申し訳なさと悔しさに涙を零した。
「結構な量だね。苦しかったでしょ。もう平気?」
「…うん、ありがとう」
喉が痛い。さっきの恐怖心がまた蘇ってくるみたいだ。
そんな不安げにしてる僕をカルパッチョは優しく包み込んだ。
「…なんかカルパッチョいつもと違うね」
「そう」
「いつもより優しいって言うかさ、頼り甲斐がある」
「いつもだよ」
「僕カルパッチョの恋人でよかった。カルパッチョは?」
「……うん」
照れちゃった そんな所も好きだよ。
不安と涙を飛ばした先には綺麗に光る無数の星が見えた。
「あれ、綺麗じゃない?」
「星?知らない」
「僕も知らないや」
そう言いながら2人で楽しく笑った。
お風呂にも入って食事も済ませた。
ベッドに入り込んで少し話してやっと就寝の時間。カルパッチョと居る時間が無くなってしまう。
もっと一緒に居たいな。
「ねえカルパッチョ」
「何」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!