テラーノベル
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カーテンの隙間から月の光が差し込む部屋で、エアコンの音と自分の息の音だけを静かに響かせながら、ソファに座っていた。日付は数時間前に変わってしまい、眠気もそろそろ限界で目もどんどんと重たくなってくる。寝てもよかったのだが、重たい目をしぱしぱと瞬かせながら、必死に眠気に抗っていた。
「待ってるから」と仕事に行く彼に声をかけ、見送ったのが遠い昔のように感じる。実際には今朝の話で、見送ってから1日も経っていないのだが、それほど彼がいない生活は長く、退屈で、彼の存在が日常に染み付いていたことを実感する。待ってる、と言ったからといって起きておく必要はないし、こんな時間まで起きていたことを彼が知ったら、心配するだろう。もはや起きておく理由なんてないが、それでもいつ帰ってくるかわからない彼を待ち続けていた。暖房をつけているにも関わらず、なんとなく寒い気がして、クッションを抱えなおす。
かちゃ、と静かな鍵の音が響き、玄関の方から靴を脱ぐ音が聞こえ、静かに歩く音が近づいてくる。「おかえり、」と眠気と嬉しさを含んだ小さく掠れた声で言うと、彼は驚いた顔をした後「ただいま」と柔らかく崩れた顔で返し、頭を優しく撫でてくれる。それだけで嬉しくなり、思わず口元が緩んでしまう。「遅い、」と不満気に呟くと「ごめんね」と申し訳なさそうに返す。責めるつもりはなかったということを伝えるために、未だ撫で続けている少し大きな手に頭を擦り寄せる。しばらく大人しく撫でられていると再度、眠気が襲ってきた。もう抗う必要はないので「おつかれさま」と言い残し、大人しく重たい目を閉じる。
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