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恥の多い人生を送ってきました。こんな太宰のなんとかにありそうなフレーズを使う羽目になろうとは思ってもいなかった。しかし、このことばでは足りないほどに、惰性にまみれた人生であったとは言っておこう。月が綺麗ですねなどと抜かせる相手もいないわけだが、なんの意味もなく、ただ、浜辺をあるいていた。幼き頃の唯一の思い出の場所でもあり、親を無くした粗悪の根源でもあった。しかし今は、ただ心地がいい。足の裏に触れる砂の感覚も、海からする潮の匂いも ただ今は身を任せたかった。よし、逝こうか。
波の音が消えた。いや、聞こえなくなったというのが正しいのだろうか、、、いや、今はそんなことどうでも良い。「人魚だ。」そう口に咄嗟に出てしまった。
まだ少しあどけなさを残した顔に、綺麗な銀色の髪、そして何より足がない。まさに典型的な人魚と言ったところだ。すぐにその場を離れようとも考えた。しかし、もう遅かった。目の前には自分より少し背の高いであろう彼女が居た。「こんばんは。」やはり綺麗だ。あまりの衝撃に忘れていたがかなりの美形である。それに声まで綺麗ときた。もし彼女に足があったなら、放っておく男もいなかったであろう。そう考えながら固まっていると、チョンチョン、、彼女の左隣を指さしてきた。隣に座れという意味なのだろう。恐る恐る座ってみた。いかなる形でも美女の隣に居て悪い気分はしない。「ねえ。」突然の事だったので少しビクついてしまった。「君、何歳?」「15…歳です」沈黙が続いた。なにか話さなければ。「あなたは何歳ですか」「失礼だね、君と同い年だよ」なるほど。人魚だから長生きという訳でも無いようだ。「名前は?」「アテネです」「敬語じゃなくていいよ、私はノン。よろしくね」やれに馴れ馴れしい。苦手なタイプだ。「ねえ、なんで死のうとしたの?」バレた。最悪だ。何故こうも上手くいかないものなのだろう。格好つけて死なせてくれやしない「疲れ…ちゃったんです。親が幼い頃に死んでからずっと1人で。今日誕生日なんですよ。15回目の、でもなんか、自分より幸せそうな人ばかりで…何やってんだろうって…くだらないですよねでもいい機会かなって」「死ぬのが?」「諦めるのがです。生きるのを」初めてだ。こんなに正直に話したのは。ピチョン水が滴り落ちる音がした。「泣いてるの?」「分かるよぉ私も親いないんだ。辛かったねぇ」驚いた。性格まで良いとは。危うく惚れそうになった。しかし、すごく嬉しい。気づけば僕の頬は既に濡れていた