テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ギターを抱えたまま
ため息をついていた。
窓の外は見え始めている。
「またかよお前」
背後から声がして振り向くと
元貴が笑いながら入ってきた
「んだよ、」
「涼ちゃんの事でしょ?」
図星を突かれ、一気に真っ赤になった。
「いやっ、違う!!」
「いやいや。w
お前のわかりやすさ 10年以上の
付き合いだから バレバレだよ、w」
元貴は椅子にドサッと座り
滉斗にジュースを渡した。
「なぁ、なんで言わないんだよ」
「…言えるわけねぇだろ」
滉斗は視線を落とす。
「だって、あいついつもキラキラしてて
俺がなんか言ったら
壊れちまうかもしれないじゃん。」
元貴は一瞬黙ってからにこっと笑った。
「ばーか笑壊れるわけないだろ?w」
「あいつ、音楽と同じぐらい人を大切にする人だし笑」
「…」
滉斗はジュースの缶を強く握りしめた。
「お前が怖がってるのは振られる事じゃなくて自分の気持ちに嘘つき続ける事だろ?」
元貴の言葉はいつになく真剣だった。
その時廊下からピアノの音が聞こえてきた。
柔らかく。優しい音色。
「涼ちゃんだ、… 」
滉斗の胸がぎゅっと締められる。
「行けよ」
元貴は軽く背中を叩く。
「俺は昔から知ってんだ。 」
「お前が1番夢中になってるのは
音楽でもギターでもなく。
涼ちゃんの事だって。」
滉斗は立ち上がった。
震える足を一歩踏み出す。
廊下の先にいる。大切な人に向かって。
元貴はそんな滉斗の背中を見送りながら
呟いた。
「…頑張れよ、相棒」
夜の帰り道
涼架と滉斗は並んで歩いていた。
ふと、空を見上げて
滉斗が口元をニヤリとさせて一言。
「なぁ、涼ちゃん月が綺麗ですね。」
「え?ほんとだぁ!!写真撮らなきゃ!」
「今日なんか大きいね!!」
「お月見だ〜!」
(…いやそうじゃないって、!!!)
そう心の中で滉斗は叫んだ。
必死に続きを考えるけど、
涼ちゃんは無邪気に月を眺めたまま。
「涼ちゃん…それは…俺が…」
声が震える。
その数メートル後ろ。
木陰に隠れて2人を見守っていた元貴は
頭を抱えた。
「馬鹿だなぁ…なんで直接言わねぇんだよ」
ため息をつきながらも
口元には小さな笑みが浮かぶ。
月明かりに照らされる2人。
その不器用な時間さえ、
どこか愛おしく思えてしまうのだった。