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ヨラ@低浮上
1,190
182
#ファンタジー
masyu
121
#オリジナル小説
速攻で涙を拭き取る。
「ドライアイです」とか言ってみる。
刺すような、痛くは無い彼の視線が刺さる。
嘘なのはバレてるらしい。
また泣いてしまった自分が純粋に怖い。
これこそ、私が知らないあたし。
本当に驚いた。
「驚いたよ、また泣くとは」
「私もです…」
「なんで、涙出たんだろ」
不思議すぎて、恥ずかしい。
なんで泣いたのか自分でもわかってないなんて、あたしおかしい子だ。
「ごめんなさい」
「なんで?」
「…変な人で」
「何も変じゃなくない?」
「どうして…」
「ん?」
「先生はどうして、そんなに優しいんですか…。」
先生の、嫌いなところは
優しすぎて、かっこよすぎるところ。
顔も、声も、身長もなにもかも
普通なはずなのに、
なんでだか私の瞳に映る彼は、
花や星と比べものにならないほどにきれい。
まだ恋をして、2日しか経ってないのに
大好き、本当に
大好き…
「先生」
「なに?」
「誰にも言わないでくださいね」
「何を」
「…そういうとこ、ウザイと思います」
「ひでぇ」
「変なことは言ってないですよ。」
「そうかも。」
「…ありがとう、」
「悩みあれば、聴くよ」
「言わない。」
「大丈夫なの?」
「大丈夫です」
「聞き方が悪かったかな、うーん… 」
「先生もまだまだですね」
あなたをあしらう時間が、一番の慰めで
13年間で一番のぬくもりということを
知ってほしいとも思うけど、
言えないし、言わない。
その薬指の銀色が光るかぎり。
気を取り直して、色塗りを進める。
手助けすると言った割には、アドバイスも何も無いので困惑したけど、隣に居てくれるのでその時点で最高である。
とはいえ、やっぱり沈黙は気まずい。
でも、先生も私も人見知りなので
どうすることもできないのだ。
さあっと通り過ぎる風の音と、
夕焼けの鳥の声だけがずっと揺れる。
ー不思議と、居心地は悪くない。
ちょっと、話しかけてみる。
「先生」
「なに?」
「なんか面白い話してください」
「うわーー困るなーーー」
「あははは」
「…あっ、1個あるよ」
「えっ!なんですか? 」
「薗田さんの肩にカナブンついてるよ」
「え?」
全然可愛くない反応をしてしまった。
先生のそういうところは本当にウザイと思う。
「よし、納得!」
「やっと完成か。」
「なんか改善点ありますか?」
「うーん…技術面では特にないかな
薗田さんが納得してれば提出で大丈夫だよ」
「おお。じゃあ遅れてすみません、お願いします」
少し深く頭を下げ、絵を渡す。
本当に、この3日は非日常だった。
何もなかった生活に、最悪な形で彼は終止符を打ってくれた。
思いやりでも、愛でもない
恋という大迷惑な形で。
絵が描き終われば、こうして先生と2人で話す機会も過ごす機会もきっとなくなる。
こうやって、戻らない、戻れない日が増えていくのが、生きるということ。
寂しいし、悲しい。
でも楽しいし、面白い。
それでも、
今日という日が終わるのは、悲しい
「…先生」
「なに?」
「あっ、やっぱり…
なんでも、ないです」
「そう?」
「はい、すみません。」
「いいけど…」
言えなかった言葉がつもるごとに、
大人になっていく気がする。
今日が終わると、
人生を無駄遣いしている気がする。
でも、愛おしいとも思う気がする。
第3話 Fin.