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「楽なイキ方、教えてあげるから」
耳元で落とされたその言葉に、息を呑む暇さえ与えられなかった。
「まずは、すぅーって吸って。……そう、ゆっくり吐いて」
耳元で優しく囁かれるリズムに合わせて、私はぎゅっと目を瞑り、呼吸だけに意識を集中させた。
ルシアンさんの体温と、甘く濃密なバニラの香りが、息をするたびに身体の奥へと満ちていく。血の巡りが早くなり、全身がじわじわと甘い熱を帯びていくのが分かった。
実習着越しに、私の胸のふくらみを下からすくい上げるようにして、タプ、タプ、と優しく揺さぶられる。
「……んっ、……ふぅ……っ」
服の布地が擦れる微かな刺激だけでも、背筋にツンと電流が走る。
呼吸が乱れ、肩がビクッと跳ねるたびに、ルシアンさんは「大丈夫だよ」と耳元で囁き、ペースを整えてくれた。
「どんどん敏感になって怖いと思うけど、吸い続けて……」
私の異常な感度の高さも、怯えも、全部お見通しだと言わんばかりに、その愛撫はひたすらに優しかった。焦らすように、この時間が長く続くように、ゆっくりと手のひらで胸の丸みを揉みほぐされる。
やがて、まわりをなぞるように動いていた指の腹が、服越しに硬く立ち上がり始めていた胸の先端を、チリッと意地悪に掠めた。
「……っ、ぁ……ふ、……」
我慢しきれず、甘い吐息が零れ落ちる。
下腹部に溜まっていた熱が一気に膨れ上がり、限界が近づいてくるのが分かった。今までの実習なら、ここで恐怖とパニックに呑まれて、反射的に息を止めて気絶するように絶頂へ落ちていたはずだ。
(だめ、また、イッちゃう……っ)
グッと奥歯を噛み締め、反射的に呼吸を止めて快感に耐えようとした――その瞬間。
「息、止めるとつらいよ?」
私の唇の隙間に、ルシアンさんの指がスッと滑り込んできた。
こじ開けられた口内に侵入した二本の指が、私の舌を軽く挟み込む。強制的に口が開いたことで、バニラのフェロモンを含んだ空気が一気に喉の奥へと流れ込んだ。
「……んぅっ、ふぁ……!?」
胸を揉んでいたルシアンさんの手が離れた――と思った直後、実習着の裾から、するりと黒いしっぽが滑り込んできた。
手の代わりに伸びてきたしっぽの先端が、敏感な突起をスリスリと器用に撫で回す。
「んふっ、吸ってー。……はい、吐いてー」
口の中を指で弄られながら、耳元ではルシアンさんのカウントが穏やかに繰り返される。
ねちっこい愛撫と、フェロモンの過剰摂取。許容量を超えた快楽の波が、ついに私の理性の堤防をひたひたと決壊させた。
「……っ、ぁ……ふ、ぅぁ……っ♡」
全身が弓なりにしなり、目の前が真っ白に明滅する。
けれど、いつもと違った。深い闇の中へ突き落とされるような恐怖はない。口の中のルシアンさんの指と、耳元で響く「吸って、吐いて」の声だけが、絶頂の波の中で唯一の命綱になっていた。
私はガクガクと身体を痙攣させ、口の中の指を無意識に甘噛みしながらも、必死にルシアンさんのカウントに従って、熱い吐息を震わせ続けていた。
「……うん。上手、上手」
やがて快感の波がゆっくりと引いていくのを見計らい、ルシアンさんが私の口から、銀色の糸を引く指をそっと抜き取った。
ぜぇぜぇと肩で息をする私の頭を、後ろからポンポンと優しく撫でてくれる。
「ほら。ちょっぴり楽だったでしょ?」
「はぁ……っ、ぁ……はい……っ」
まだ手足の先は微かに痺れている。けれど、いつも実習の後に襲ってくるような、あの絶望的な虚脱感やパニックはなかった。
ただ、心地よい疲労感と、私を包み込むルシアンさんの甘い体温だけが残っている。
「リルティってさ、実習ってなると特に固くなっちゃうタイプでしょ」
ぽつりと、耳元に落ちてきたのはあまりにも的確な言葉だった。
「……図星かな? 自分の身体とか技術に自信がなかったり、フェロモンにも弱いと……『何したらいいんだろう』ってなっちゃうよね。」
すべて見透かされた恥ずかしさと、初めて理解してもらえた安堵が混ざり合い、胸の奥がきゅっと締め付けられる。
「……ルシアン、さん。私……」
「今日はこれでおしまい。よく頑張りました」
背中を預けていたルシアンさんの身体が離れ、ふっと温度が下がる。
彼女は実習着の乱れを直しながら、ベッドの上にぐったりと横たわる私を見下ろした。
「次の実習も、今日みたいに『相手のフェロモンから逃げずに吸う』ことだけやってみて。」
淡々と告げられたその言葉は、不思議と私の心にスッと染み込んでいく。
(……逃げないで、吸うだけ)
今まで恐怖しかなかった実習が、ほんの少しだけ、違うものに見える気がした。
私は乱れたシーツをぎゅっと握りしめながら、まだ熱の引かない顔で「はい」と小さく頷いた。
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ぽん
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