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またマキノさんのお店に帰るのだが、途中ルフィが港の方を見てぱあっと顔を輝かせた。
「シャンクスの船だ!!」
「え?」
ルフィの視線の先にいるのはとても大きな船、確かにレッド・フォース号だった。船の方には人の気配を感じない。すでに村に上陸した後だろう。
「なあなあ! シャンクスの船の方に行こうぜ!」
「まずは濡れた服をどうにかしてからだ。シャンクスとやらも多分船を降りてると思うぞ」
「なんで見てないのにわかんだよ」
「お前より年上だからな、俺は。ほら行くぞ」
そう言って俺はルフィを連れてマキノさんのところへ向かう。中には案の定シャンクスたち赤髪海賊団がいた。
「シャンクス!」
「おお、ルフィ。何だお前、ずぶ濡れじゃないか」
「ジェイデンと川で遊んでたんだ!」
「ジェイデン?」
ルフィが俺の名前を言うと、シャンクスが俺のことを見た。俺は魚の入ったバケツを床に置いてからぺこりと礼をする。
「ルフィの友達か。俺はシャンクスだ」
と言って手を差し出してきた。すぐに俺はその手を取り、握手を交わす。
うひゃあ、握手しちゃった……四皇と……ああいや、まだこの時点では四皇じゃなかったんだっけか…? どちらにせよ感動モノだ……日記に書いちゃお……。
「……あっ、マキノさん。これルフィと一緒に捕った魚です」
「ありがとう。すぐ料理するわね」
マキノさんにバケツごと魚を渡す。
「シャンクス、ウタは?」
「ちょっと席を外してる。もうそろそろ戻ってくるぞ。その前に服着替えて来い」
「わかった!」
「おいルフィ、あまり走るんじゃねえ」
ドタドタと騒がしく走っていくルフィの後姿を見送る。転ばなきゃいいけど。
ルフィを見送ってから、俺は改めてシャンクスを見る。やっぱりかっこいいよなぁ。なんて思いながら見ていると、シャンクスが俺の視線に気づき、ぐしゃぐしゃっと頭を撫でた。
「わっ、わわっ…!?」
「そんなに見られると穴が空いちまう」
「す、すみません…」
「ははっ、冗談だ」
なんてやり取りをしていると、たたたっと軽い足音がこちらに向かってくる。ルフィ……じゃないな。ルフィはもうちょっと騒がしい。
シャンクスに撫でられて乱れた髪を手で整えていると、赤と白のツートンカラーの髪の女の子がいた。あれ、この子確か……映画の子じゃないか?俺あの映画見てねぇんだよなぁ……。
「……あんた、誰?」
「俺はジェイデンだ。よろしく」
じとーっと警戒心MAXで睨みつけてくる少女に対し、俺は過去、王子として無駄に叩きこまれた礼儀作法をフル活用して挨拶をすることにした。膝を突き、少女よりも目線を低くして、右手を差し出す。少女は驚いたような顔になり、それから恐る恐るというように俺の手を取る。
「……私、ウタ。赤髪海賊団の音楽家で、シャンクスの娘よ!」
「そっかそっか。お父さんと同じ綺麗な赤髪だなー」
「あ、ありがとう」
なんてやり取りをしていると、シャンクスが俺とウタの手をぱっと離させる。
「うちの娘を誑かすのはやめてもらおうか?」
「はは、そんなつもりありませんよ。ただ警戒を解いてもらおうと思っただけです」
そう言いながら俺は立ち上がり、再び軽く頭を下げる。
すると、ちょうどルフィが戻ってきて、シャンクスにぎゃんぎゃんと「入団テストしてくれ!」と言いはじめた。そういやルフィって最初はシャンクスの船に乗りたいって駄々こねてたんだっけか?
仕方ない、と言わんばかりにシャンクスが入団テストのようなものをルフィにやる、少しだけ頭を使う、簡単なミニゲームだ。それをクリアすれば合格らしい。
俺はルフィにがんばれー、と声援を送りつつ、マキノさんに出された飲み物を飲む。
それからすぐにルフィはミニゲームが出来ずに入団テスト失敗となってしまた。周りの反応を見るに、いつものことなのだろう。俺はルフィの頭を撫でながら「どんまい」と励ましの言葉をかける。
「ほら、しょげてないで外行くぞ。遊ぶんだろ?」
「うん……ウタも行こう」
「いいわよ! じゃあ、あの丘まで競争ね! 負けたら罰ゲームだから!」
と、ウタは走り出した。ええええええ、というルフィの声を聞きながらも、俺も既にウタの後を追いかけている。
「ほらルフィ、ぼさっとしてると置いてくぞー」
「あっ、待てよジェイデン!!」
「待たない」
「ウタもジェイデンもずりぃぞ!!」
と言ってルフィが追いかけてくる。なんだか懐かしいなと思いながら、俺はルフィと共にウタが駆けていく丘の方へと走った。
結局あの後、俺とルフィが同着ビリで、2人で罰ゲームを受けた。別に本気になれば2人を追い越すことなんてわけないのだが、ムキになっても大人げないしな。それから2人の競い合いの審判をやらされたりして、気がつけば夕方になっていた。
「あーもー、髪崩れちゃった…」
ウタが頬を膨らせながら自分の髪を整えている。
「ウタ、こっち来てみろ。髪直してやるから」
「出来るの?」
「年上を舐めんなよ~?」
ウタのヘッドセットを一度外し、髪も一度解く。それからウタの髪を結んでいく。
「出来た」
俺はポケットに入れてあるコンパクト式の手鏡をウタに渡す。すると彼女は目をキラキラさせている。
「ジェイデンすごい! 魔法使いみたい!」
「気に入ってもらって何よりだ」
ベタなツインテールも、ウタの顔が可愛いっていうのもあってか~~なり可愛く仕上がった。
「もう日も落ちるし帰るぞ」
そう俺が言えば、2人はにぱっと笑みを浮かべてついてきた。可愛いなチクショウ。
それから数日、俺は年下2人組にあっちこっち連れまわされることになるのだった。