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[シンデレラの罠]
涼架side
若井君との出会いから、私は少しずつ心を開き、自分を偽る時間が減っていた。
しかし、そんな穏やかな時間は、文化祭準備で再び終わりを告げる
クラスで出し物を決める話し合いな行われ、多数決の賛成でシンデレラの劇をすることが決まった。
シンデレラと言えば、魔法と王子様の物語。
誰もが憧れるお姫様だ。
クラス中が配役で盛り上がる中、私はいつものように隅で息を潜めていた。
そんな中、私の前にいじめの中心人物である女子が満面の笑みを浮かべてやってくる
「ねぇねぇ、涼架!シンデレラ役、やってみない?」
その言葉にクラス中がどよめいた。
誰もが、彼女が私をからかっているのだと思った。
しかし、その女子はさらに言葉を続ける
「だって、シンデレラって小柄で、ドジで、ちょっと頼らない感じがするじゃない?」
「それに、いつもみんなに優しくて、健気なところが涼架にぴったりだなって思ったんだ!」
彼女の言葉は、一見すると私を褒めているように聞こえた。
しかし、その裏にある真意を私はすぐに理解した
シンデレラは、物語の最初で継母や義理の姉たちにいじめられる役だ。
劇の練習と言う大義名分があれば、表立って私をいじめても、周りから違和感を抱かれることがない
むしろ、役作りの一環と見なされるだろう。
「あはは…そ、そんなぁ…私なんて、無理だよぉ…」
私はいつものように愛想笑いでごまかそうとする。
しかし、若井君と出会ってから、無理に笑うことが以前よりも苦しくなっていた。
その笑いが引きつっていることに、いじめっ子たちも気づく。
「シンデレラは、みんなに推薦されてるんだから、早くOKしなよ」
女子たちは、まるで涼架のために思っているかのように、巧みな言葉で追い詰めていく。
断れない性格の涼架は、追い詰められ、答えに詰まってしまう
教室の空気が、まるで凍りついたように静まりかえっていた。
いじめグループの巧みな言葉に追い詰められた私は、ただひたすらに下を向いた
断りたくても、その言葉が喉まで出てこない
いじめっ子たちの期待に満ちた視線、そして周りの生徒たちの**「どうするんだろう?」**と言う好奇の目に、私はただ耐えることしかできなかった。
「お願いだよ、涼架ちゃん。涼架ちゃんしかシンデレラはいないんだから!」
女子は、最後のダメ押しとばかりに、甘えた声で私の腕を掴む
彼女の顔は、天使のような笑顔を浮かべている
その笑顔の裏に、どれほどの悪意が隠されているのか私には痛いほど伝わってきた
しかし、私は若井君と出会ってから少しずつ芽生えた、自分を変えたいという小さな勇気を思い出した。
そして、震える声でしかし、はっきりとこう告げた
「わ…分かった……私、シンデレラ、やりましす」
その言葉に、いじめグループは満面の笑みを浮かべた。
彼女たちは、これで計画がうまくいったと確信したようだった。
「わー!よかったー!ありがとう、涼架ちゃん!」
女子たちは大げさに喜び、私の肩を叩いた
その様子を見ていたクラスメイトたちも
『これで劇の配役が決まるね!』
と安堵したように声をあげた。
「じゃあ、他の役もどんどん決めちゃおうか!」
いじめグループは、まるで主導権を握ったかのように、次々と他の役を決めていった。
「王子様はやっぱり、イケメンの〇〇君がいいよね!」
「姉妹役は〇〇と〇〇で!ぴったりじゃん!」
「継母は、演技力のある〇〇が適任だね!」
次々と決まっていく配役の中で、私はまるで存在しないかのように、ただ静かにその場に立っていることしか出来なかった
シンデレラの役をもらったはずなのに、私は、まるで自分だけが物語の外にいるような、そんな孤独を感じた
若井はそんな涼架の様子を、何も言わずに見つめていた。
次回予告
「偽りの練習」
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コメント
2件
これで若井さんが王子様役になってくれたら…!!!!
王子様が若井でキャッキャウフフしないかな?てか若井同じクラスだったんだ