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「……そんで、おまえらさ……俺とらんの理性崩してどうするつもりだったんだ?」
いるまの声音に、ひまなつとこさめは同時にぴくりと反応する。
らんもじっとこさめを見つめたまま、微動だにしない。
「……え、あの、だから、その……」
こさめが言い淀むと、すかさずひまなつが肩をすくめながら言った。
「だって手ぇ出してくんないじゃん、2人とも。……俺ら、我慢させてるのかなって、思って」
その言葉に、いるまの眉がピクリと動いた。
そして、ひまなつの前に立つと、腕を伸ばして軽々とひまなつを肩に担ぎ上げた。
「えっ、わ、ちょ、いるま!? おろして!? 」
「帰るぞ。お前が限界なら、俺も限界だ」
そのままぶっきらぼうに告げると、いるまは無言で玄関に向かった。
「えっ、マジ!? 今から!? 」
ひまなつの悲鳴が遠ざかっていく中、らんも静かに立ち上がる。
「……こさめ。お前……俺の前でそんなこと言って。責任、取れるのか?」
こさめははっとしてらんを見上げたが、すぐに頬を染め、俯いた。
「……責任、取れるし……」
その瞬間、らんはふっと笑って、こさめの手をとった。
「じゃあ、帰ろう」
こさめも素直に頷き、ふたりは並んで玄関へと向かっていく。
そして去り際、こさめは玄関から振り返って小さく手を振った。
「みこちゃん、すっちー、ありがと! すちくんの話、超参考になった~~っ!」
「……参考になってよかったよ」
すちは苦笑しながら手を振り返す。
玄関の扉が閉まり、家の中が再び静けさを取り戻す。
すちはソファに深く腰を下ろすと、背後からそっと覗くみことに目を向けた。
「……大丈夫? 怖かった?」
「ううん。びっくりはしたけど……」
「…おいで」
そう言ってすちは腕を広げ、みことを迎え入れる。
みことは照れながらも、その腕の中に身を委ねた。
静かな午後。
にぎやかだったひとときが過ぎ、すちの胸の中でぬくもりを感じながら――
みことはもう一度、小さくあくびをして、安心したように目を閉じた。
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こさめがらんの家に着くと、夜風の余韻がまだ頬に残っていた。玄関を入ってすぐ、らんは靴を脱ぐこさめをじっと見つめていた。
「……ちゃんと、話していい?」
小さく問いかけると、こさめは「うん」と頷く。リビングのソファに並んで座ると、らんがゆっくり口を開いた。
「……すち、理性崩したって言ってたけど、あいつは優しいからさ。たぶん、みことのこと大事に、ちゃんとしてやったんだと思う」
一瞬、間があく。こさめはじっとらんの横顔を見つめていた。らんは言葉を探すように視線を落としながら続けた。
「……でも、俺は多分、優しくなんてできないかもしれねぇ。嫉妬深いし、独占欲強ぇし。……こさめを怖がらせるの、怖くて……だから、我慢してた」
声は静かで、どこか自嘲的だった。
こさめの心が、きゅうっとなった。
「でも――」らんがふと顔を上げてこさめを見る。「……こさめが、俺でいいって思ってくれるなら、ちゃんと……向き合いたい」
こさめは一瞬だけ目を見開き、けれどすぐに笑った。
「……ばか。前から、らんくんがいいって思ってるよ」
らんの目が、ほんの少し揺れて、それから優しく細まる。
「俺のこと、怖がらないでな」
2人はそっと立ち上がり、手を繋いだまま寝室へ向かった。
薄暗い部屋で、らんはこさめをふわりとベッドに寝かせた。触れる指先は、どこまでも慎重で、どこまでもあたたかかった。
「痛いとか、イヤとか……あったら絶対言えよ」
「うん、わかった」
らんは照れくさそうに笑い、 優しくこさめを押し倒した。ゆっくりと、確かめるように重ねられる唇。甘く、深く、呼吸が絡まるたび、互いの体温が確かになっていく。
こさめの目が潤んで、とろんとしたままらんを見上げた。いつもの無邪気さが影を潜め、今はただ、らんだけを求める瞳になっている。
「こさめ……かわいすぎ」
らんの指先がこさめの髪をすくい、頬を撫で、首筋を辿る。触れるたびに、こさめの身体が震え、甘い息が零れ落ちた。
ベッドの軋む音が、やさしく夜の空気に溶けていく。
らんの手はずっとこさめの手を握っていた。強すぎず、けれど離れないように。
「……こさめ、大丈夫?」
息をひそめるような問いかけに、こさめは小さく頷いた。けれど瞳の奥に、一瞬わずかな痛みと戸惑いが混じる。それでも彼は笑った。涙を浮かべながら。
「ちょっと……だけ、でも……大丈夫。……らんくんと繋がれて、うれしい」
その言葉に、らんの胸がぎゅっと締め付けられる。嬉しい。だけど、苦しいくらい大切にしたい。
ゆっくり、ゆっくりと動くたびに、こさめの目じりに涙が滲む。それは痛みだけじゃなくて、愛しさと、幸せと、全てが溶けあった感情のかたち。
「……らん、くん……らんくん……」
名前を呼ぶ声は震えながらもまっすぐで、らんの胸を何度も打つ。
「……ここにいる。ちゃんと、いるから……」
その返事を繰り返しながら、らんは何度もこさめの額に、頬に、唇にキスを落とした。
重なり合う心音と、呼吸と、涙と微笑み。
肌と肌が触れ合う距離の中、らんの動きが少しずつ深く、速さを増していく。
こさめの身体がそれに応えるように震え、声をこぼす。
「……ら、んくん……っ、すき……っ」
声は熱に浮かされたように甘く、震えていた。
それを聞いた瞬間、らんの心はまた大きく波打つ。
「……こさめ……もう、……」
理性が揺らぎ、けれど壊れないように、最後まで優しく。
ぎゅっとこさめを抱きしめたまま、らんは唇を重ねた。
言葉よりも確かに伝わる想いと、温度と、ぬくもり。
繋がりながら、互いの名前を呼び合って、
同じ瞬間に深く沈み込むように――ふたりは、ひとつになった。
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こさめが目を覚ましたのは、朝の光が頬に触れたからだった。
微かに体が重たく、熱の余韻が残っている。
その感覚よりも先に、腕の中の温もりに気づく。
ぬくもりは、すぐそば――いや、すぐ背中。
そっと振り返れば、そこにはらんの寝顔。
安心しきったような、やわらかな寝息。
少し乱れた前髪の奥に、眠ったままの穏やかなまなざしがのぞいていた。
こさめは静かに息を吐く。
昨夜のことが夢じゃなかったことが、少し恥ずかしくて、でも嬉しくて。
小さく「……らんくん」と名前を呼ぶと、寝ぼけた声が返ってきた。
「ん……こさめ……おはよ」
その声に、胸の奥がじんわりとあたたかくなる。
らんの手がゆっくりとこさめの背に回り、抱き寄せる。
「……昨日、無理させたかもって思ってたけど……大丈夫だった?」
「……うん。ちょっと痛かったけど……でも、それ以上に、幸せだった」
ぽつりと落ちたその言葉に、らんの腕に力が入る。
優しく、でも絶対に離さないというように。
「……俺も、幸せだったよ」
静かな朝の空気の中で、ふたりのぬくもりが混ざり合う。
触れ合う額、重なるまぶた。
何も言わなくても、お互いの想いは伝わっている。
やがて、こさめが小さく笑った。
「……まだ眠いかも……」
「じゃあ、もうちょっと寝るか」
「……うん、らんくんの腕の中で……」
また静かに目を閉じるこさめを、らんは愛しげに抱き寄せた。
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