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あれ……俺はどうして今倒れているんだ……?
あぁ、レオに刺されたんだっけか……。
痛みはない。麻痺してるんだろう。
レオもソルも、リゲルが洗脳状態で魔族の力を使ってた時みたいな、魔族みたいな容姿になってた……。
“魔族化” しちまったってことか……?
いや、それよりも、俺は死ぬのか…………?
いや、死ぬとか死なないとかじゃなくて。
キラとルークの激化により、大きく吹っ飛ばされたレオは、服から蒸気を発しながら立ち上がる。
シュッ!!
そして、またしても異常なまでの瞬間移動。
「リリム…………!!」
“雷魔法・迅雷”
レオの標的は、リリムへと変わっていた。
「クソッ……! 間に合わねぇ…………!!」
キラも咄嗟に踏み出すが、レオのバチバチと雷を帯びた剣は、既にリリムの眼前に迫っていた。
キィン!!
防いだのは、
「ヒノ……ト…………?」
灰色の髪に変わり、ニタリと笑みを浮かべ、腹から血を垂れ流したままのヒノトだった。
その姿に、助かった安堵よりも、リリムの心に不安感が募る。
「何があっても…………勇者なら笑う…………」
そう呟くと、ヒノトはレオにニカっと笑い、そのまま剣を振り上げると、レオを吹き飛ばした。
「今の…………岩の魔力…………?」
ヒノトの剣からは、岩魔力が溢れていた。
「どうしてヒノトが……岩魔法を…………?」
周囲の全員が困惑の顔を示す中、先に降りていたシルフ、バーン、ラス、クロスは、目を細める。
「アレが…………人類初の “灰人” か…………」
ヒノトの相貌を見遣るバーンは、ふと溢すように呟く。
「あぁ、俺の息子だ」
そのまま、ヒノトはレオに向かって突撃する。
今度は、剣が赤く炎で燃え盛っていた。
「今度は炎魔法か……!? あの野郎、どうなっちまってんだ…………!?」
キラも、驚愕に声を上げた。
「でも、雷を帯びたレオと衝突すれば、過負荷で二人とも膨大なダメージを喰らう……」
ルークは、目を細めて二人の衝突を眺める。
ゴォンッ!!
激しくぶつかる二人の剣、そして、予想通りに引き起こされる膨大な過負荷により、二人は同時に、反対方向へと互いに吹き飛んでいった。
そのまま大きな音を立て、背から地面に叩き落とされるレオだが、ヒノトは何ともなく着地した。
「どうして…………!?」
ヒノトが何事もなく着地したことよりも、リリムは別のことに目を見開き、声を荒げる。
「どうして……お腹の傷が消えてるの…………!?」
レオに刺され、血が溢れていたはずのヒノトの傷は、血も溢れていなければ、傷も塞がっていた。
「アレが “灰人” の力ですか…………」
魔族と戦闘しながら、シルフも横目にヒノトを見遣る。
そんな折、国王ラグナは、駆け足でMCのマイクを握り締めた。
「よく持ち堪えてくれた!! 増援だぞ!!」
四人が突如、危機を感じ飛び降りた最中、国王はすぐに出動できる騎士たちを集めに行っていた。
国王ラグナの背後には、数十人の国家騎士たちが臨戦態勢を整えていた。
「レオ…………今助けるぞ…………!」
ラグナが武器を持って勇む中、ラスが目の前に立ち塞がる。
「ラグナ……それより先に、ヒノトだ」
「…………!!」
戦況を見ていないラグナは、反論に口を変えるが、次の瞬間、
ゴッ!!
ラスはヒノトを殴って吹き飛ばしていた。
「水魔法の騎士!! 早くコイツに水を付与させろ!!」
そして、ラスは騎士たちに向けて声を荒げる。
慌てて、水魔法の騎士たちは魔法を発動する。
ヒノトが水浸しになった途端、ラスは盾を上げる。
“氷魔法・新月”
ゴォッ!!
そして、巨大な氷でヒノトを凍結させた。
そのまま、ヒノトは動けなくなった。
次に、ラグナの指示により、レオも同じように凍結されていた。
「すまない……ラス……。レオが魔族化している中、戦場に居られないことが怖かったのだ…………」
ラグナは、ラスの行動に直様、状況判断をし、ラスの意を汲み取った。
「よかったな。あのままヒノトを放っておけば……レオは殺されていただろうな」
そう言いながら、上空の魔族を見遣る。
「どうやら、魔族さん達は俺たちで遊んでいるらしい」
ラスやバーンの相手していた岩魔法使いの魔族は、二人の攻撃を易く防ぐ割に、一切反撃を見せず、シルフとクロスで相手している魔族も、途中から魔族化したソルをうまく操り、支援魔法のみでおちょくったような戦い方を見せていた。
「こんな大切な試合中に二人を魔族化させ……混乱に乗じて生きた英雄たちを殺しにでも来たのかと思ったが、一体何を考えているんだ…………?」
バキッ…………バキッ!!
「王様…………それはね…………」
レオを運んでいた国家騎士を音もなく伏し、凍結された氷を割っていたのは、かつてカナリアの中に潜伏していた魔族軍 四天王、セノ=リュークだった。
その姿に、ラスとラグナは瞬時に臨戦態勢を取り、セノに襲い掛かる。
ザッ…………
「クソ…………!」
しかし、立ち塞がるのは、レオだった。
「お前があの魔族たちの親玉か? レオとソルを解放しろ!」
ラスは瞬時に回り込み、セノに剣を振るい上げる。
「人間は…………四人で組まないと本当に弱い……。だから魔族軍を滅ぼせないんだよ…………」
ニタリと笑うと、ラスの渾身の剣を片手で受け止める。
「コイツ…………強い…………!!」
「ここに来た理由、あの二人を潜伏させていた理由、それはね、魔族軍としても戦力の増強がしたかったからさ。だから、学生の中で強い二人を魔族化させた」
そのまま、ラスを剣ごと薙ぎ倒す。
「魔族化には時間が掛かるからね。それに、あの魔族戦争から、君たちだって、プレイバーゲームを然り、対策を練っているはずだ。僕たちも、次の戦争の為に情報を集めていたんだけど、まさか今日、一番の大収穫がお目に掛かれるだなんて…………。ホント、今日という大一番に仕掛けて大正解だったよ〜」
その言葉に、ラスは苦い顔を浮かべた。
「君の息子が……魔族に対抗する為の、改造人間だったなんてね…………」
そのまま、レオを握り締め、高笑いを浮かべる。
「アハハハハ!! 尚更、戦争が楽しみだ!! 人類がどこまで足掻いてくれるのか……。ああ、今日誰一人として殺さなかったのも、戦争がつまらなくなるからだよ。決して、君たちの力が通用してると思わないことだ」
シュン!!
その言葉を幕切りに、三人の魔族と共に、レオ、ソルは連れ去られ、姿は消えてしまった。
「レ……レオ…………!!」
「大丈夫だ、ラグナ!! アイツらは、戦争の為の戦力増強と言っていた。まず間違いなく、殺されることはなく、また俺たちに牙を剥いてくるだろう……。その時、また救い出せるチャンスはある…………」
「な、何故そう言い切れる…………!! ヒノトくんが “灰人” だとしても、また殺されるかも…………!」
しかし、興奮したラグナの言葉は制される。
「ラグナは、あの時居なかったから知らなかったな……。今回、魔族に知られなかったのも大きい」
次第に、リリムやロス、キラ、ルークたちも、国王とラスの下へと集まってくる。
「 “灰人” の能力は、見てわかる通り、『他人の魔力を自分の力にする』と言うものだ…………」
「ヒノトが魔法を使えなかったのって…………」
「そうだ、特異体質ではなく、親の俺…………いや、かつての魔族戦争参加者……国の判断でそう創られた」
そして、目を細く、ヒノトを見遣る。
「そして、 “灰人” の最も優れた力…………。『魔族の “闇属性の魔力” を弱める』ことができる…………」
ヒノトは次第にいつものオレンジの髪に戻り、そのままバタリと気絶した。