その日、元貴が連れてきたのは、とんでもないヤツだった。
まず見た目から気に入らなかった。
何だよ、そのとんでもなくセンスの無い服。
どこで売ってんだよ。
何だよ、そのバッサバサな金髪。
手入れくらいしろよ。
何でそんなにガリガリなんだよ、メシ喰ってんのか。
「よろしくお願いします!」
でも、挨拶と共に曲げた腰は綺麗に90度で。
芯は悪いヤツじゃないんだなって思えた。
体を起こした瞬間に、肩からズリ落ちるトートバッグ。
「あ。」
バラバラと落ちる中身。
財布やら、なんか入った袋やら、クリアファイルやら…。
「もー、またやっちゃった。」
タレ目な目尻がますます下がって、途端に困った顔になる。
よいしょと床にしゃがみ込んで、中身を拾い出したそいつを手伝う。
「なに、これ。」
中身が謎なビニール袋が、いっぱい。
「だはっ、僕も分かんない。」
何で潰れたパンが出てくるんだよ。
「あー、それ昨日探してたパン!」
カオスかよ、こいつのカバン!
前言撤回。
やっぱりコイツ、とんでもないヤツだわ。
名前は藤澤涼架。
歳は三つ上でもうすぐ二十歳。
二十歳であれかよ、大丈夫なんか。
「雰囲気がさ、オレのイメージにぴったりだったわけ。ちょっと年上で、ふわんってしてて。」
「俺、ヤダ。何なの、あの格好。」
元貴の部屋で、ギターを抱えて愚痴る。
「ピアノやってたって言うし、すぐキーボードも弾けるようになると思うからさ。ね?仲良くやってよ。」
「仲良くできる気がしない。」
元貴の選んだヤツだし、メンバーとしては受け入れるけども。
「若井は元々人見知りだしなぁ…。学校で一軍だったクセに。」
同じようにギターを抱えて、元貴が笑う。
「りょうちゃんは頑張るって言ってくれてるんだから。」
「その頑張るが、とんでもない方向に行かないことを願うよ。」
だって、アイツ、色々やらかしそうだもん。
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