テラーノベル
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結局、あの日は朝方まで元貴の色んな話を聞いて、時には俺の話も聞いてもらったりした。
あの日から数年の時が経ち、ミセスはバンドとしても大きなものになり、いつしか世界に認められるものへとなっていった。
それと裏腹に、失うものもたくさんあった。ここまで大きくなるためには、何かを諦めなきゃいけなくて、でもそれはとても尊いことで。
「りょうちゃーん」
先に楽屋入りしていた涼ちゃんの方へと駆け寄る。
あの日みたいに、プライベートで2人と遊んだり、飲みに行ったりすることは、ほぼ不可能に近い現状。それでも、毎日のハードスケジュールによって2人には会えるから、なんだかんだ言って悪くはないのかもしれない。
涼ちゃんは何やら着替えたての衣装で、スマホの画面を見つめている。
「…なんかあった?」
あまりにも黙ってそれを見つめる涼ちゃんに、俺は少し不思議に思いながらも問いかけた。涼ちゃんは俺から名前を呼ばれると、難しい表情のまま口を開く。
「いやぁ……なんかね、元貴また上手くいってないのかも」
涼ちゃんのその言葉に、嫌な予感が頭をよぎる。
「あー……彼女さん?」
「そうそう」
涼ちゃんは少し唇を尖らせながら頷いた。
実は、元貴と彼女さんはまだ付き合っているのである。もちろん未だに数年前と同じように、喧嘩をしては別れ話、という流れを繰り返している模様。
だけど、2人の関係は更に悪化してしまっているようだった。
「ほら…この前もあったじゃん?」
「その………刃物向けられたって話」
涼ちゃんは落ち着かない声色で話した。
実は最近、元貴と彼女さんが喧嘩をした際、ついに彼女さんが台所から包丁を取り出し、元貴に向けてきたんだとか。その時は、なんとか元貴が家から逃げ出し、数日間距離を取ることによって、その件はことを終えた。
「元貴もさ、特にあの日以外に刃物向けられた話しないじゃん?」
「やっぱおかしいよね……普通だったら本気で別れようって思うと思うんだけど……」
「うん…俺も思ってた」
涼ちゃんは、「どうしたらいいんだろう…」と本気で悩んでいるようで、ついには黙り込んでしまった。
俺も、どうにかして元貴を助けたい。そもそも、「助けたい」って言葉が元貴にあっているのかも分からないけれど、俺からすれば今のあの2人の関係は異常。ぶつかり合うにも程があるだろう。悔しさと自分の無力さに、どうしようもない感情が湧き上がる。
「………若井」
涼ちゃんの弱々しい声が俺の名前を呼ぶ。
「若井…いつでもいいからさ、近いうちに元貴の話、聞いてあげられない?」
「多分元貴、僕じゃ話してくれないこととかもたくさんあると思うんだ」
「元貴の一番繊細な部分を見てあげられるのは、一番元貴と付き合いが長い若井だけだと思う……」
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涼ちゃんのその言葉に、ドクンと心臓が音を立てる。
確かに、俺と元貴の付き合いは長いし、元貴も俺にしか話してくれない何かがきっとあるはず。それは分かっているけど……
今の俺にそんな大事な仕事が務まるのか?
もしここで、元貴の本当の気持ちを俺が聞き出せずに、また数年前に飲んだ日みたいに、元貴に上手く濁らせられてしまったら、次こそ元貴の命が危ないかもしれない。
彼女さんの行動が徐々にエスカレートしていっているのは、元貴も涼ちゃんも気づいてるはず。だから、ここで俺が元貴の本心を引き出せなかったら、想像しただけでも胸が苦しくなる。
涼ちゃんからのお願いに答えられず、黙っていると、
「大丈夫、一回で決めてこいって訳じゃない」
「何回も何回も歩み寄ればいいんだよ」
「ちゃんと僕も、若井のサポートに回るよ」
「……涼ちゃん」
涼ちゃんの真っ直ぐな言葉に、決意が着いた。
一回の話し合いで決めなくていい、何回も何回も話して、絶対に元貴を助けてやるんだ。
だって元貴は、俺の大切な”親友”だから。
「……元貴に連絡してみる」
「涼ちゃん、ちゃんとサポートしてね?」
俺が涼ちゃんに笑いかけると、涼ちゃんは最初こそぽかんとした顔をしていたが、すぐにいつもの笑顔で「任せなさい!」と元気よく返してくれた。
今度こそ、絶対に元貴の本心を聞き出す。
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お久しぶりです⸝⸝꙳
最近4月に入りましたね!作者は春が大好きなんですよ🌟 まぁ4月が誕生日っていうのもあるんですけど、春の雰囲気がめっちゃ好きなんです…🌷🎶新学期、新生活ってめちゃドキドキするじゃないですか!でもそれって、みんな同じじゃないですか!!つまりみんな仲間ってわけなんですよᐡ ̳ᴗ ̫ ᴗ ̳ᐡ💗そう思うと素敵だなーって💭🍀素敵な季節だと思います…!
作者も新学期ドキドキしてますが、皆さんも仲間ですよね!?一緒に頑張りましょう👊🏻💞
ではまた次のお話で^^
NEXT ▶︎ ♡1,000
コメント
4件
大森さんと彼女さんの間に何が起こっているのか…すごく気になる。
続きが気になりすぎるので1000いいねしときました