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背中に当たる床が温かい。
木の葉は風にゆっくりと押され、忙しなく音を重ねている。
沖田は縁側で寝そべっていた。
いつものアイマスクを首まで下げ、何やら眉間にしわを寄せている。
どうやら機嫌が悪いらしい。
ことの始まりは朝方だった。
「という訳で、これから一番隊の副隊長となる凉香だ。皆、仲良くしてやってくれ!」
静まり返った部屋に局長の大きい声はよく響いた。
あぐらをかいた局長の隣にはちょこんと正座をしている女性がいる。
突如として集合させられた隊員達はその女性を凝視した。
絹のような髪、水のような肌。
瞳は、まるで海を閉じ込めたかのように透き通っている。
神様がこしらえた人形のようであった。
彼女が静かに口を開く。
「未熟者ですが、よろしくお願いします」
彼女はゆっくりと頭を下げた。
髪がするりと垂れ下がる。
皆、何も言わなかった。
…否。
言えなかった。
ただただ見惚れていたのだ。
妖精のように美しい彼女に。
誰かがそんな静けさを破った。
「真選組に女ァ?足手まといになるだけだろィ」
一番隊隊長、沖田総悟である。
彼はアイマスクを着用しながら彼女を指差す。どうやら先程まで寝ていたらしい。
彼は冷めた目で彼女を見据えた。
「うるせェ、もう決まったことだ」
ずっと黙って彼女の横に座っていた土方が沖田を睨みつける。
沖田は暫く土方を見つめた後、小さく舌打ちをして目を逸らした。
「へいへい、さーせんした」
こうして彼女を迎え入れることになったのだが…。
沖田は1ミリも彼女を歓迎する気はなかった。
真選組で女なんて足手まといにしかならんだろうに、近藤さんも何考えてんだか。
そもそもなんでニコチンまであの女の入隊に賛成してるんだ、くそが。後でマヨネーズに歯磨き粉混ぜてやる。
考えていたらいろいろと面倒くさくなってきた沖田はうっすらと開けていた目を閉じた。
…。
あ、そうだ。
突然心境の変化があったのか、彼は目をぱっちりと開け上体を起こした。
「嫌がらせといこうかねィ」
この男は本当にろくな事を考えていない。
沖田は忙しく縁側を走り去っていった__。