テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
29
肌を重ねたあと、部屋には深い静寂が満ちていた。
ベッドの上、シーツに包まれたまま、
初兎はいふの胸にぴたりと寄り添っていた。
いふの心臓の音が、まだ少し速く響いている。
「……苦しくなかった?」
いふの指先が、初兎の髪をゆっくり撫でる。
「……うん、あったかかった。ずっと」
かすれた声でそう答える初兎に、いふは小さく笑った。
「俺さ……自分があんな顔になるとは思ってなかった」
「……どんな顔してた?」
「……初兎を大事にしたくて、でも触れたくて、我慢して……
たぶん、すげぇ必死だった」
初兎は笑いながら、少しだけ顔を上げる。
「それ、僕もだった。……けど、まろちゃんがちゃんと見てくれてたから、
僕……安心して、全部任せられた」
「……そっか」
いふはもう一度、初兎の髪を撫でる。
そしてゆっくりと顔を近づけ、
今度は、瞼に、そっとキスを落とす。
「……おやすみ、って何回でも言いたくなる」
「……じゃあ、何回でも言って」
「いいの?」
「うん。今夜だけは、甘やかして。
僕、まろちゃんにいっぱい触れられて……ちょっと泣きそうなくらい、嬉しかったから」
その一言に、いふは少しだけ眉を下げて、
もう一度、今度は唇に、そっとおやすみのキスを落とす。
「……おやすみ、初兎」
「……おやすみ。まろちゃん」
静かな夜。
寄り添う体温と、確かに交わした愛情。
この夜が明けても、
この絆は、きっと壊れない。
――
部屋は暗く、静かだった。
薄明かりの中で、いふはゆっくりと目を閉じ、柔らかなシーツに包まれて横たわっていた。
心臓の鼓動が穏やかに響き、体の力が抜けていく。
そして、その横で――
初兎は、すっかり眠ってしまったようだった。
初兎の体が、いふの体にすっぽりと収まる。
小さな手が、無意識にいふの胸に触れて、
そのまま、いふの腕を頼りに丸くなって、寄り添っている。
小さく丸まった初兎の背中には、少しだけいふの体温が伝わっていて、
それが、初兎にとってはとても心地よい――
いふは静かに、初兎の髪をそっと撫でた。
触れるたびに、ふわっと香る甘い匂い。
眠りに落ちた初兎は、安心しきった顔をして、まるで何も恐れることはないかのように。
「……寝顔、可愛いな」
いふは、初兎が完全に眠っていることを確認してから、
そのまま目を閉じ、彼を優しく抱きしめる。
やわらかく、まるで壊れそうなほど儚い姿。
けれど、いふの腕の中で、初兎はすっかりリラックスしている。
「お前が寝てると、俺、幸せだ」
眠っている初兎に、そう小さく囁いた。
いふの体にぴったりと寄り添った初兎は、もう完全に無防備で、いふの腕の中で丸くなりながら、幸せそうに眠っている。
その姿を見つめながら、いふは静かに微笑んだ。
「ずっと、こうしていような」
初兎が目を覚ますその時まで、
いふはそっと腕を回し、さらに初兎を自分に引き寄せた。
二人だけの、静かであたたかい夜が、やさしく包み込む。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!