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肌を重ねたあと、部屋には深い静寂が満ちていた。
ベッドの上、シーツに包まれたまま、
初兎はいふの胸にぴたりと寄り添っていた。
いふの心臓の音が、まだ少し速く響いている。
「……苦しくなかった?」
いふの指先が、初兎の髪をゆっくり撫でる。
「……うん、あったかかった。ずっと」
かすれた声でそう答える初兎に、いふは小さく笑った。
「俺さ……自分があんな顔になるとは思ってなかった」
「……どんな顔してた?」
「……初兎を大事にしたくて、でも触れたくて、我慢して……
たぶん、すげぇ必死だった」
初兎は笑いながら、少しだけ顔を上げる。
「それ、僕もだった。……けど、まろちゃんがちゃんと見てくれてたから、
僕……安心して、全部任せられた」
「……そっか」
いふはもう一度、初兎の髪を撫でる。
そしてゆっくりと顔を近づけ、
今度は、瞼に、そっとキスを落とす。
「……おやすみ、って何回でも言いたくなる」
「……じゃあ、何回でも言って」
「いいの?」
「うん。今夜だけは、甘やかして。
僕、まろちゃんにいっぱい触れられて……ちょっと泣きそうなくらい、嬉しかったから」
その一言に、いふは少しだけ眉を下げて、
もう一度、今度は唇に、そっとおやすみのキスを落とす。
「……おやすみ、初兎」
「……おやすみ。まろちゃん」
静かな夜。
寄り添う体温と、確かに交わした愛情。
この夜が明けても、
この絆は、きっと壊れない。
――
部屋は暗く、静かだった。
薄明かりの中で、いふはゆっくりと目を閉じ、柔らかなシーツに包まれて横たわっていた。
心臓の鼓動が穏やかに響き、体の力が抜けていく。
そして、その横で――
初兎は、すっかり眠ってしまったようだった。
初兎の体が、いふの体にすっぽりと収まる。
小さな手が、無意識にいふの胸に触れて、
そのまま、いふの腕を頼りに丸くなって、寄り添っている。
小さく丸まった初兎の背中には、少しだけいふの体温が伝わっていて、
それが、初兎にとってはとても心地よい――
いふは静かに、初兎の髪をそっと撫でた。
触れるたびに、ふわっと香る甘い匂い。
眠りに落ちた初兎は、安心しきった顔をして、まるで何も恐れることはないかのように。
「……寝顔、可愛いな」
いふは、初兎が完全に眠っていることを確認してから、
そのまま目を閉じ、彼を優しく抱きしめる。
やわらかく、まるで壊れそうなほど儚い姿。
けれど、いふの腕の中で、初兎はすっかりリラックスしている。
「お前が寝てると、俺、幸せだ」
眠っている初兎に、そう小さく囁いた。
いふの体にぴったりと寄り添った初兎は、もう完全に無防備で、いふの腕の中で丸くなりながら、幸せそうに眠っている。
その姿を見つめながら、いふは静かに微笑んだ。
「ずっと、こうしていような」
初兎が目を覚ますその時まで、
いふはそっと腕を回し、さらに初兎を自分に引き寄せた。
二人だけの、静かであたたかい夜が、やさしく包み込む。