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「彗、1年が呼んでる 学生証の子じゃない?」
翌日の昼休み、颯にそう話しかけられた。
「あー…そうだ」
「ふーん、早く行きな」
「ん」
会話を手早く終わらせ、廊下に出た。
そこには、壁にもたれかかりどこか遠くを見つめる背の高い人がいた。
まさか、この茶髪イケメンが天野?
入学式のときは後ろ姿しか見えなかったから顔は知らなかったけど、想像以上に王子。
背は高い、顔はいい、茶髪でさらさらな髪。
「ぁ、天野くん?」
俺が話しかけると、王子はこちらを向いた。
「彗先輩?」
「え、なんで名前知ってんの 苗字しか言ってないよね?」
「2年に知り合いがいるんで」
「あーね… あ、はい 学生証」
友達も多いのかよ。
その羨ましさが嫉妬に変わってしまう前に、早く渡して颯のところに帰りたい。
「あざす」
「んー、もう落とすなよ じゃあな天野」
「待って」
途端に、腕を強く引かれた。
「え、?ちょ、どした」
「名前で呼んでください」
「いや、急になに_」
「彗先輩」
その言葉と共に、顔をかなり近くまで寄せられた。
「ッ、! ねえ待って! 近い!」
抵抗しようとしたが、体格差で俺は勝てない。
そのままずっとぐぐっと近づけられる。
「待て待て待て!! 」
「彗?」
最悪だ。颯。
なんで颯はいつもこうタイミングが悪いんだよ。
「…あー、お楽しみ中? 邪魔してごめんね、天野クン」
「ちげえよ!!ちょ颯助けろ」
「…、彗先輩のお友達ですか」
「まあね〜」
「名前教えてください」
「奥野颯でーす、颯先輩って呼んでね」
「はやてせんぱい」
「はは笑 天野かわいー」
なんでこいつはずっと俺の腕を引っ張って離さないんだ。
なんでこいつは俺を助けようとも気にしようともしないんだ。
「ねえお前らなんなの?! 天野まじで離して」
「どしたの天野 彗なんかした?」
颯もようやく言い始めてくれた。
「彗先輩が名前で呼んでくれないんすもん」
「あー、それは彗が悪いな! けど 離してやって」
「はーい」
「なんで天野は颯の言うことだったら聞くんだよ!早く腕離せや!」
それだけ言ってやっと天野は俺の腕を離してくれた。
「いてー…まじで天野おまえ許さんから」
「彗先輩酷いです」
「わかるわあ〜、俺も酷いと思う」
「颯先輩はわかってくれますね」
「うるせえよ、早く帰れ」
「また来まーす あ、彗先輩DMするんで返してください じゃ」
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嵐みたいだった。
「天野、だっけ あの子おもろいね」
「んー…大変」
「好かれてんじゃない?」
「なんで、学生証拾っただけだし」
「ふふ、まあね」
颯は安心する。
そばにいてくれると安心するんだ。
けど、こいつのことは好きにならない。
王子だと思っていたあいつは、
やっぱりあいつは、王子なんかじゃなかった。
火宝