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昇降口を出て並んで歩く。
紙袋の半分を抱えた咲は、思ったより重さに腕を震わせながらも、妙にうれしかった。
「亮のやつ、こういうの忘れっぽいよな」
「……そうですね。前も教科書、机に置きっぱなしでした」
ふたりで同じ人の“お世話”をしているような会話に、自然と笑みがこぼれる。
「兄妹そろって苦労してるな、俺たち」
悠真が軽く肩をすくめる。
その何気ない冗談が、咲には特別な秘密を共有したみたいに響いた。
ほんの少しだけど、歩く距離が近づいている気がした。