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「ここ……どこ……?」
目を擦りながら、横になっていた身体を、ゆっくりと起こす。
辺りを見渡してみると、ここは地下の独房のような場所だと分かった。
地面に足をつけてベットから立とうとすると――『ジャラッ!』と音がしたと同時に、
数歩あるいた所で進めなくなった。
「…ぇ、なに…これ……」
自分の手足を見てみると、両手両足にしっかりと4本の鎖が繋がれていた。
いつからここに居るのか、どうやってここへ来たのか、
頭に霧がかかったように思い出せない。
だけど、なんか………
「……ずっとここに居た気がする」
(コツ……コツ………
なにやら、ドアの向こうから足音が近付いて来る。音のする方へと視線を向けると、
そこに現れたのは爺面をしている、物腰が柔らかそうな男性だった。
「…おや、起きていたんですね」
爺面越しから聞こえる声は、とても穏やかで、落ち着いている。
だから、不思議と警戒心や怖さはなかった。
(……、ッ、この人だれだろう……、)
この声を、以前にもどこかで聞いたことがある気がする。
わけもわからずに首を傾げていると、目の前の男性は爺面を左手で支えて
もう片方の手で紐を外す。
すると、そこに現れた顔は爺面とは裏腹に、目の前の顔は自分よりも少し幼く見えた。
(紫の髪に、……火傷みたいなアザ……、目は……、赤と白……)
「……、学園長……、……?」
「ええ、そうですよ」
「よく覚えてましたね」
学園長がそう言うと、コツコツと小さな足音を立てながら僕の方へと近づき、
頭を優しく撫でられる。
「え…へへ……」
なぜ彼のことを忘れていたんだろう?
彼のおかげで僕は憧れの教師になって、大切な友達や生徒達が出来て……
………………あれ?
…………友達って?生徒達って誰……?
そもそも、なんで僕は教師になろうとしたんだっけ……?
上手く思い出せない。そういえば起きてからずっと頭がボヤボヤする。
寝起きは強い方だった気がするのに…………。
「……」
「晴明君、お薬の時間ですよ」
「………?」
撫でていた手を止めて、学園長がそんなことを言った。
(……お薬?なんのことだろう)
頭の中が『?』でいっぱいになり、また首を傾げていると、
学園長はポケットから小瓶を取り出して、コロコロと薬を手のひらに落とした。
「さぁ、どうぞ」
自分から手を伸ばして、薬を一粒受け取る。
見た目は普通の錠剤と変わらない。
はずなのに…
なぜか、飲んではいけない気がする。
「……」
(……なんでだろう……飲みたくない)
本能的に身体が拒否反応を起こしており、手のひらにの物を飲まずに、
ただそれを無言で見つめていると、彼が小さく言葉を零した。
「…珍しいですねぇ、いつもなら迷いなく飲んでくれるのに」
「ぁ……ご…ごめんなさい………」
彼の言葉でアホ毛をしゅん…と垂らす。
「……! 、謝らないでください、決して晴明君を責めているわけじゃありませんから」
スっ、と頬を撫でられる。
その手は温かくて、なんだか心地が良い。
「それに、今日はいつも以上に晴明くんの声が聞けて嬉しいくらいです」
「?、そうなんですか?」
「ええ、だから安心してください」
彼が優しく微笑んでそう言うと、薬を持っていない方の手をぎゅっと優しく握れらた。
それはまるで…
僕が薬を飲むのを促しているかのようだ。
「…学園長」
「なんです?」
「薬を飲む前に質問しても良いですか?」
「もちろん」
ニコリと笑って答えてくれる学園長。
だけど、その笑顔がなんだか少し怖く感じる。
「…ここってどこですか?」
「……」
「……はぁ」
「……またその質問ですか…」
僕の質問を聞いた瞬間、
学園長は耳を澄まさないと聞き取れない音量で、小さくため息をついてそう呟いた。
…また?
こんなことを聞くのは初めてなはずなのに、
彼は何回も…、何十回もこの質問をされたような口ぶりだ。
「あなたの部屋に決まっているでしょう」
「どうして僕はここに居るんですか?」
「私が連れてきたからですね」
「……この薬はなんですか?」
「飲めば分かりますよ」
最初の質問以外は学園長はニコリとした表情で答えてくれたが、
どの回答も曖昧で、答えになっていない。
「やっぱり、この薬飲みたくないです…」
「…そうですか」
「少し残念です」
僕の手のひらにある薬を取り出された。
『嫌なら飲まなくても良い』という意味だろうか。
と、そんなことを考えていた瞬間――
彼はその一粒の薬を口に放り込んだ。
「? 学園長が飲むんですか?」
「ちがいますよ」
彼がそう言うと、後頭部に手を回されて、
ぐっ、と引き寄せられ、そのまま晴明へと口付けた。
「ん……ぅ……⁉////」
『嫌なら飲まなくても良い』という事ではなく、
『自分の意志で飲めないなら飲ませる』の間違いだった。
結局、飲んでも飲まなくても、
自分には拒否権なんてものはなかったと、回らない頭の中で理解する。
「んっ……ふっ…んんっ…!///」
強引に舌を差し込まれて、身体が反射的にビクつく。
逃げられないように、ぐっと腰を引き、後頭部も引き寄せて押さえつけられている。
「っッ……ふっ…はッ……///」
舌が擦りつくと同時に、薬を奥へと押し込まれ、
思わずゴクリッと薬を吞み込んでしまった。
離れる間際に晴明の舌をじゅっ、と強く吸い口を離す。
強く舌を吸われて、腰を微かに跳ねさせて、身体がじんじんと熱で痺れる。
「…っ、はぁ、はぁ……ぁ………///」
口づけで荒くなった呼吸を整えようとすると、ギュッと身体を抱きしめられた。
「……?………、?」
息も少しずつ整い、学園長のほうを不安そうな目で見つめると、
先ほどと同じく、頭に手を置かれて優しく撫でてくれる。
(あれ…なんかボーっとしてきた気がする…)
(…さっきの薬、一体なんなんだろう…)
(少し怖いけど、やっぱり、学園長に頭を撫でられると安心する…)
(なんでだろう…)
そんなことを考えていると、突然、
視界がマーブル柄のようにグニャグニャと歪んだ。
「あ、…ぇッ??」
……°˖✧………✧˖°……☆……°˖✧……
見てるもの全てがキラキラとして、なんだか心地が良い。
…………あれ
さっきまで…何を考えていたんだっけ…。
……°˖✧………✧˖°……☆……°˖✧……
思い出せない…。
なんだか……………
……………もう……、どうでもいいや…。
…✧˖°……☆……°˖✧°˖✧…✧˖°
……なにより……。
………ずっとここにいたい…………。
…✧˖°……☆……°˖✧°˖✧…✧˖°
(ぎゅっ…。
「晴明君?」
力なく、学園長をギュッと抱きしめ返す。
指を絡めて、夢じゃないと、現実だと確かめるように強く握った。
「ん…えへへ…///」
「…°˖✧、きもちぃ…˖°///」
「ふふ、でしょうね」
晴明の言葉に、くつくつと喉を鳴らして笑う。
突然笑い出したことを不思議に思っていると、
ちゅっと小さくリップ音を慣らして、晴明の頬に口付ける。
「じゃあ、晴明君」
再び後頭部に手を回してぐっと引き寄せると、
耳元で甘く身の底まで溶かしてしまうような声で囁く。
「もっと気持ちいことをしましょうか」
溶けた頭の中で響く甘い声に、
きゅんと、ないはずのお腹の奥が疼いた気がした――。
コメント
6件
ふっ………神だな…???口移し???予想してたけど、結構、最高……((鼻血 あ、もう学晴信者の座を貴方に譲りますわ(?) 貴方、その内に有名人になりますね、はい。(?) 続き待ってます!
控えめに言って最高です.....( ⸝⸝⸝ ♡ཫ♡⸝⸝⸝)