テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#大人の恋
鷹槻れん

704
1,407
#ハッピーエンド
美凪ましろ
514
トワって言った?
まさか、聞き間違えよね。
だって、知るわけがないし寝ぼけているから何かの言葉の一部だろう。
弥生にカメラが見つかったのは痛い。
下手に部屋を物色することは出来ないし、何より私を疑うだろうか?
私しか疑う人はいないか・・・
海はよく眠っている。
このまま放置して、一人でベッドで眠ろうかと思ったが、こんな男でも人肌は精神安定剤になる。
海の隣に横になるとゆっくりと目を瞑った。
もうすぐ
もうすぐ
眠りの海に溶けそうな時
「行くな!ナオっ」
叫び声と共に海は勢いよく起き上がり、その拍子で私が危うくソファから落ちそうになった所を抱き止められた。
「奈緒?」
「よく寝てたね海。てか、凄い寝言」
海は状況が把握できずに周りを見渡してから、私がシャツ以外何もつけていなくて、自分も裸だということに気がついたようだ。
「俺はずっとここにいた?」
「うん」
「そうか」と答えた海の表情が明るくほっとしたように見えた。
「まだ起きる時間には早い、ちゃんとベッドで寝よう」
そう言うと、海は私を抱き上げてベッドルームに連れて行き目覚ましが鳴るまで眠った。
朝食の準備をしながら昨夜の海の事を考える。
もっと焦るかと思ったのに、何となくほっとした様に見えたのは錯覚なんだろうか?
それに、寝言で私の名前を呼んでた。
弥生〜とか言ったら急所を蹴ってやったかしれないけど。
海の事がわからない。
スマホに通知が入り見てみると弥生から今日は来なくていいとの事だった。
流石にあの部屋を見られたくないのか、他にカメラがないか探すんだろうか?
どちらにしても、助かった。
「おはよう奈緒」
「おはよう」
こんがりトーストを一口噛んで咀嚼する音がサクサクと小気味良い。
パリパリウィンナーをフォークで刺すとプツンという音がなり口に入れるとパリンという音とともに肉の旨味が口中に広がる。
暫くは無言で食べていたが、海が気まずそうに話を始めた。
「昨夜は、俺が奈緒をソファで襲った?」
神妙な顔つきが可笑しくて噴き出してしまった。
「そうね、でも途中で寝落ちしてたから」
「そうか、じゃあ奈緒に無理強いみたいなことはしてないんだね?」
「そんなことを気にしていたの?」
「記憶がないから、何か酷い事をしたんじゃないかと、ちょっと心配になって」
酷い事ならたっぷりしてるわよ。
と、言いたい所だがグッと我慢をする。
「よかった」海はそう言って穏やかに微笑んだ。
土曜日の海と弥生の密会動画と昨夜のウキウキから大暴れの動画をクラウドとUSBにコピーしていつものようにハードディスクからは削除する。
弥生の部屋の隠しカメラ用のアプリは削除した。
これからどうしよう。
キッチンのカメラは必要ないから、リアルタイムで見られるように、リビングのSDカード式のものと交換した。
こっちのベッドルームのカメラはそのままにして、SDカード式のはどうしよう。
あちらの家のキッチンにでも置いてみようか。
どちらにしても必要な証拠は集まったし、二人の情事なんか見たくないから、弥生のベッドルームのカメラはもう必要ないとして、弥生が私を疑うのは間違いないだろうし、慎重に行動しないと。
弥生の悔しそうな姿を思い出すと、滑稽すぎて笑っちゃうけど、海の行動がよくわからない。
前回とは違いが多すぎて、よくわからない。
よくわからない分
不安もある。
「海?何か心配事でもあるの?」
夕食後リビングでビールを飲む海の様子が何となく心ここに在らずという感じなのだ。
弥生とデキない上に、きっとヒステリックに責められて魂が抜けてしまったのかしら?
「ドラマの続きを見るからもうあっちに行くね」
声をかけても一瞬気がつかなかったようで、ピクリと体小さく反応させて「ああ、お休み」と言って、また何かを考えているようだった。
会社で何かあったのかしら?
だとしたらお義父さまは大丈夫かしら?
今日の会合はうまく行ったんだろうか?
今夜は遅くなるって言っていたけど、体に気をつけてほしい。
気がつくと、お義父さまのことばかりだ。
ベッドに入って、イヤフォンをつけてドラマに接続しておいてから、リビングのカメラに接続する。
海がスマホに何かを打ち込んでいる姿が映し出される。
時折、片手で髪をくしゃくしゃと乱暴に掻きながら画面を見ている。
弥生とのLINE?
暫く見ていると、スマホを耳元に持っていったので、通話に切り替えたようだ。
「通話はだめだと言っただろう。いい加減にしろ」
冷たい声で話したあと、スマホをソファに放り投げてから、頭を抱えるようにして座ったまま動かなくなった。
弥生と険悪になったのかしら?
私には関係ない。
スマホを置いて眠りについた。
朝、海を送り出してから“あちら”の家の掃除に向かう。
弥生に何かを言われるだろうか、言われたとしても私がカメラを設置したという証拠もないしシラを切るしかない。
「おはようございます」
「奈緒さん、夜にそちらに行ったりしてごめんなさいね。まぁ、新婚ですものね」
「ふふふ、海ったら困った人ですよね。じゃあ、始めますね」
「ええ、お願い」
いつものように、シーツを剥がしてランドリーに出すものと一緒にしておいてから、ベッドメイキングをする。ベッドの下に隠してある盗聴器が気になるが、下手に動く訳にはいかない。
ハンディの埃とりでサイドボードなどの埃を落としていくジュエリーボックスが気になるが、カメラに気づいた今ではほかに移動してるかもしれない。
さりげなくカメラを隠していたリースを見ると、きちんと元の場所に戻してあった。
気にしないようにロボット掃除機を起動したら、お義父さまの書斎に移動しようとした所で弥生がこちらを見ているのがわかった。
変な動きをしなくてよかった。
一通り済ませると、残り物でお昼を済ませてスクールに向かった。
歪な日常、いつ終わりにしたらいいのだろう。
コメント
1件
おお、第20話読んだわ。奈緒の冷静な観察眼と、海の「行くな!ナオっ」っていう寝言がめっちゃ気になる…。前回と違う海の行動に戸惑う奈緒の心情が丁寧に描かれてて、感情移入しちゃった。弥生の悔しそうな姿を思い出して「滑稽すぎて笑っちゃう」ってとこ、わかるわ。でも最後の「歪な日常、いつ終わりにしたらいいのだろう」って問いかけが切ない。続きが楽しみ🔥