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春風薫る4月の教室。 今日は始業式だ。
担任の先生は新任の「若井滉斗」っていう人らしく、男女問わず人気らしい。
教室の窓側にある自分の席に座って、ぼーっと運動場に沿って連なる桜の木を眺める。
まだまだ朝は寒くて学ランは羽織ってないとやっていけない。
そんなことを考えているとトントンと肩を叩かれた。
「ねぇ、元貴ぃ、俺らのクラスの担任の先生さ、なんであんなに人気なの?」
答えようの無い質問をしてきたのは、小学生の時からずっと一緒の幼なじみ、「藤澤涼架」
だった。
「え〜?知らんよ、顔がいいとか?身長が高いとか?女子はそんなんでも惚れるんじゃない?サッカーやってるって言ってたよね?男子はそれに興味持ってんだよ、まぁ知らんけど」
「俺廊下側の席だから若井先生通る度に女子たちがうるさくて気が気じゃないんだけど…」
「笑、それはもう慣れるしかないね」
「え〜、まじかよ……」
若井先生……ね、
「てか、元貴、またテストサボったの?いい加減真面目になんないと、成績下がっちゃうよ?いいの?」
「ん〜別にいいかな、中学までは義務教育だからいくら成績悪くても卒業できるし、高校は通信行けば何とかなるよ。」
「えぇ、いやまぁそうなんだけど…あ、若井先生来た。」
職員室から戻ってきたのだろうか、たくさんの女子達を連れて、談笑しながら教室に入ってきた。
教卓に荷物を置いて、周りの女子たちに座るように指示をする。女子たちは「はーい」と言って席に座った。
先生が教室に入ったからか、教室は静まり返っていた。
「はいっ、皆さんお待たせしました〜、帰りの会はもう今日なしでいいかな?じゃあ、もう帰って大丈夫です。気おつけて帰ってね、」
話したことはないが、なんだか結構あっさりした人なのかもしれない。
帰っていい、という言葉に女子たちが「え〜……」と一斉に残念そうな声を上げた。
「若井先生とまだはなしたぁい!放課後まだ話していいでしょ??せーんせいっ♡」
「俺、先生とサッカーしたい!どうやったらそんなに上手くなんの?教えてよ、先生!」
相変わらず人気だ、
「あは、うーん、みんなと話したいのは山々なんだけど、今日は始業式ってのもあって、職員会議があるんだ。せっかく午前中で終わるんだから、早く帰りなさい。明日沢山話そう。」
愛想笑いからのイケメン特有の話し方。
(若井先生若干嫌がってんじゃん……笑笑)
なんてことを思いつつ、みんな帰りの支度を始めたので僕もいそいそと帰りの支度を始めた。
すると……
「大森くん、ちょっといいかな?」
振り返るとそこには若井先生がいた。
「え?、あ、なんすか?」
「放課後、時間ある?少し大森くんとお話したくて、」
「……話って?内容によります。」
話ってなんだよ、めんどくさいなぁ、
僕は基本的にさっさと帰りたい派の人間なので、こう言うお話しようとかほんとに面倒で仕方がないのだ。
「えっと、君のことについて色々知っておきたくて、」
「とりあえず来なさい。」
急に低くなる声にビクッと心臓が跳ねる。
少し大人の怖さを感じた。
周りを見渡すとさっきの喧騒が嘘のように静かで、気付けば教室には若井先生と僕の2人きりだった。
「……はい……で、でも、先生今日は職員会議なんじゃ、」
「ん?あ、あれね、今日じゃなかったみたい。先生間違えちゃった。」
と、わざとらしくうなじを掻く。
コイツ、嘘ついてる。
なんでコイツはこんなに生徒と距離が近い?おかしいだろ。
若井先生と僕の間には10センチ程の距離しかなかった。あと少しでくっつきそうな距離。
あぁ、そうか、、若井先生は女子に色目使ってんだ。
そこでようやく若井先生が女子から好かれている理由がわかった。
若井先生との距離に戦いて、身を少し後ろに倒した。
「早く準備して、少し話そう」
僕は鞄を背負って、若井先生の背中について行った。