嵐が一時的におさまった隙を見計らって、八尾は美華を家まで送っていった。
「今日はありがとうね。八尾君のおかげで、雷怖くなかった。」
「あ、うん。どういたしまして……」
美華は笑顔を見せた。相変わらず太陽のような明るい笑顔だった。
「ばいばい。八尾君。」
「ばいばい。美華さん。」
美華は八尾の方に向き直し、
「あ、これから美華ちゃんって呼んでいいよ。」
「え?う、え?」そんな八尾を笑顔で見た後、家の中へ入っていった。
八尾はしばらく呆然としていた。
2人が雨宿りしていた所には、靴がぽつんと残っていた。
「あー!靴忘れた!!」
美華は自分の部屋で叫んだ。
そこから1ヶ月半。特にこれといった出来事はなく、定期テストを終え、皆夏服に変わっていた。
「はい、定期テストの結果は廊下に張り出してあるから見ておけよ〜。はい、では終わります!」
2時間目の授業が終わると、皆テスト表を見に廊下へ出た。
一位 八尾 498
二位 美華 485
三位 津雲 477 と、三人が並んでいた。
「八尾は今回も一位か……そして合計点四百九十八って化け物かよ……ほとんど一教科九十八点じゃん……」津雲は呆気に取られている。
八尾は「二点足りない…悔しい…」と残念がった。
「完璧主義か!」津雲がツッコむ。
すると美華が来て、「あー…負けちゃった…やっぱ八尾君はすごいなぁ……」と言ってきた。
そもそも津雲も美華も八尾も元々頭がいいため、皆から羨ましがられている。
「いや、美華もすごいよ。」
津雲が励ます。美華は微笑を浮かべて、
「ありがと」と言った。
「津雲、購買行こうぜ。」
「あ、あぁ。」
津雲は陽キャ達に誘われて、購買へ文房具を買いに行った。
美華と八尾は何か話をしているようだった。
「……ここまで来ても八尾は気づかないのか」
津雲は心底呆れていた。ここまで鈍感な奴はあいつ以外にいないだろう。
「アッハハハwそれ鈍感すぎだろww」
陽キャ達も少し呆れていた。そろそろ気づいてやらないと美華が可哀想だと思っていた。
八尾に直接言っても信じないと津雲は思っていた。なので、何とかしてキッカケを作ってやりたいという気持ちが津雲にあった。
友人の恋に干渉するのはあまりよくないが、
それではあまりにも美華が可哀想だ。
八尾が早く気づいてくれることを津雲は願っていた。
その頃八尾はというと、美華と会話していた。
「何でそんなに頭がいいの?」
「俺頭良くないよ。」美華は笑った。
「いや頭良いよ、八尾君は。本当に尊敬してる。」
「ッ……!?」
美華は八尾の赤い顔を見て、爆笑した。
「何で赤くなってるのw八尾君変〜〜ww」
八尾は異性に尊敬されたことなどあまりなかったため、赤くなってしまったのだ。
美華はずっと笑っていた。が、突然心臓あたりを抑えて片目を瞑った。
額に脂汗がにじんでいる。
「ん?どうしたの?美華さん。」
「な、何でもない。ちょっと笑いすぎて痛くなっただけ…」
「そっか…気をつけてね…」
「うん、気をつける……」
購買から帰ってきた津雲は、その光景を見ていて眉間にシワをよせた。美華は何か隠している。そう津雲は感じた。
放課後、津雲は美華を呼び出した。
「んで、話って何?」
「1つ…聞きたいことがある。」
美華は首を傾げて、「え?」と言った。
「美華さ……八尾に隠し事してね?」
「んあ!?……」美華はドキッとした。
「……やっぱりそうか。」
美華は俯いて答えない。
「…あいつには言わないからさ、教えてくれないか?俺口硬いから大丈夫だよ。」津雲の声はどこか美華を安心させるトーンだった。
津雲なりの説得の方法だ。
美華は大きく深呼吸をして、話し出した。
「私ね……心臓の病気なの……」
津雲は予想外の答えに驚きを隠せなかった。
「何だって?!」
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