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「彩葉先生。すみません、最後まで残ってもらって。どうしても話したいことがあって」
「ううん。今日は大丈夫だから気にしないで」
誰もいない保育園。
奥の保育室で2人きりで話す。
本当なら彩葉先生をご飯に誘いたかったけど、婚約者がいる人に、それはできなかった。
「雪都君のパパは本当にイケメンですね。何度見てもそう思います」
「……うん」
少し答えにくそうにしてる彩葉先生。
さっき保育園に来て、雪都君を連れて帰った九条さんは、登場から退出まで、あまりにも爽やかでカッコ良かった。
そんな姿を見て、他の先生達もみんなキャーキャー言ってて、相変わらずのミーハーぶりには笑ってしまう。
どこまでもいっても本物のイケメンには敵わない、敵うはずがないと思い知る。
それに……
あの人は、イケメンということ以外にも僕に無いものを全部持ってる。
どれだけ頑張ったところで、僕が勝てる要素なんて何ひとつないんだ。
「いいですよね。好きな人と一緒に暮らせるなんて。どんな感じなのかな……本当にうらやましいです」
「理久先生……ごめんね」
「すみません、謝らせて。嫌味でしたよね、ごめんなさい」
本当に情けないな、僕は。
かっこ悪い。
「理久先生の気持ちに応えられなくて申し訳なかったって……すごく思ってる」
彩葉先生をこんなに悩ませて、僕の方が申し訳ないよ。
でも……
「僕は九条グループの御曹司には勝てないです。ましてやあんなにイケメンで賢くて優しくて。全てにおいて劣ってる」
溢れる想いはどうして消せなくて、結局、こうしてまた大好きな人を悩ませてしまう。
「理久先生……本当にそんなことないよ。理久先生には理久先生の良いとこがたくさんある。私は知ってるよ。だから、そんなこと言わないで」
必死に言ってくれる彩葉先生の言葉、すごく嬉しい。
なのに、その言葉が余計に自分自身を追い込んでしまうんだ。
「彩葉先生には本当に感謝してます。いつもそうやって励ましてくれて。でも、僕はそんな良い人間じゃないから。先生が結婚するって知って、正直すごく落ち込んでます。大切な人が幸せになれたことを心から喜べない男なんです……最低ですよ」
「理久先生……本当に……ごめんなさい」
また……
本当、何やってんだ。
「彩葉先生を悲しませたくないし、笑ってなきゃって思います。だけど、側にいると……やっぱりあなたを求めてしまう」
「……」
「いつか先生が僕に振り向いてくれるんじゃないかって。そんな望み、1ミリだってあるはずないのに。どうしたらいいのかわからないんです。僕は、この想いを死ぬまで抱えて生きていくんですかね」
「ごめん、私……」
こんなバカなことばっかり言ったら、彩葉先生に嫌われてしまうだけなのに。
わかってるのに……
でも、このままじゃダメだ、僕の覚悟、ちゃんと言わないと。