パシフィック銀行強盗。
不破のギャングたちの金持ちはヘリで逃走し、建物内で生存していたギャングたちもバイクで脱出した。現場の残りは屋上のぺいん、さぶ郎とヘリのミンドリーのみとなり、三人が離脱するだけとなった。
犯人たちにまんまと逃走された警察は現場に残ってる犯人だけでも確保しようと屋上への進行を始めた。おそらくサーマルで残っている人員が報告されているのだろう。金持ちの追跡を阻害されたせいで、現場に残っていたヘリが屋上へのアタックを仕掛けてきた。
「さぶ郎!」
少し広い場所にいたさぶ郎はヘリのブレードに当たりダウンしてしまった。ぺいんはすかさず浮上しようとしているヘリを撃つが、そちらに意識が向いている隙に梯子を登ってきた警官に撃たれてダウンした。
くそっ。気づけなかった───近づいてくる足音に気づき見上げるとこれまで何度か顔を合わせてきた小柳が立っていた。
「やってくれましたね、でも倒しました」
荒く息を吐きながらそれでも勝ち誇ったような表情で小柳はぺいんに言葉をかけた。
「………今日はヘリじゃないんだね」
「青いウサギが屋上で暴れているのを見かけたので降りました」
「なるほどねぇ」
自分とさぶ郎は逮捕か───ぺいんを護送した小柳がさぶ郎の方に歩いていくのを感じながらそう考えていた時、上からヘリが降ってきた。
「んなっ!」
気づいていなかったであろう小柳の驚く声と、ヘリが何かにぶつかる大きな音。同時にぺいんは小柳もろとも壁まで吹き飛ばされた。
ぺいんが状況を把握しようとしている間に、抱えられそのままヘリに乗せられた。横を見るとさぶ郎もいた。外を見れば倒れている小柳と自分と同じ服装の金髪の男───ミンドリーが居た。
「誰だお前!」
「渡さないよ」
小柳の問いには答えず、ぺいんたちを乗せたヘリはそのまま離陸し去っていった。
「くそっ」
ヘリが数台落とされ周りの屋上と銀行屋上への配置が邪魔されてできず、金持ちは逃げられヘリの追跡も邪魔された。建物内の犯人は何名か逮捕できたが、数名は逃走された。屋上に残った犯人もヘリとの連携でダウンさせたのに、最後の最後で護送を取られた。
青いウサギ───ぺいんの言う正義にはまだ納得できていない。未だに警察に協力しない彼の考えが理解できない。
ヘリから見て屋上に青いウサギが居るのは分かっていた。彼に落とされるヘリや周辺屋上の仲間を見て、中華料理屋では見られなかった資料通りの実力があるのだっと思った。最後に屋上に残った彼を見て一泡吹かせてやろうと思いヘリから降りて屋上を目指した。
警察の事件対応は勝ち負けではない。現に何名かは逮捕しているし、警察も殲滅されたわけではない。ただ、倒した犯人を目の前で奪われた。
自分に、自分たちに足りないものはなんだろうか………。
ぺいんとさぶ郎をピックしたミンドリーのフロガーはパシフィック銀行を離れた。追いかけてくる警察ヘリはなかったが、念の為上昇を続けいざとなったら急降下で逃げる予定だ。
しばらくして完全に尾行されていないことを確認すると、ギャングのアジトを目指した。
「流石に逮捕されるかと思ったわ」
そんなぺいんの言葉にミンドリーが返す。
「家族は助けると決めたから」
「神タイミングだったわ」
「ぺいんがラストのヘリ落としていたから拾えたよ。逆にヘリが残っていたら無理だった」
「あれ、抜いてたんだ?けど、梯子を登ってきたのに気づけんかったわぁ」
「さぶ郎も気づけなかったぁ」
少ししょんぼりしているさぶ郎にぺいんもミンドリーも声をかける。
「でもさぶ郎もシアター上とかヘリ落としてたじゃん。すごいよ!」
「ほんとぉ?」
「本当。オレ一人じゃ無理だったよ」
「報告もしてたしね」
「やったぁ!」
やがて三人を乗せたフロガーは逃げ先のアジトに到着し、ぺいんとさぶ郎はギャングが用意した個人医の治療を受けた。その後、不破から報酬を受け取り、プリズンへ行くギャングたちと別れて帰路についた。
「ダウンしちゃったけど、みんなで一緒に帰れるのいいね」
前はぺいんを連れて帰れなかった。今回は全員一緒だからか、さぶ郎は嬉しそうだ。
「明日は自転車レース大会だっけ?」
「そう。楽しみ!」
「花火も上がるらしいね」
「花火って聞くと夏の終わりって感じがするなぁ」
「まぁ、俺たちの休暇もそろそろ終わりだしね」
「そうだねぇ」
なんとなく窓から夜空を見上げる。休暇で元の街や仕事から離れだいぶリフレッシュできた。家族の思い出も増えた。
夜空の向こうにあるあの街に帰るまであと数日。
ぺいんたちは残り時間も家族で楽しもうと心に決めた。
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