テラーノベル
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あれから数週間が経った。すちくんの束縛は次第にエスカレートしていった。
平日の昼休み。こさめは大学の食堂で友人とランチをしていたが、何度も振動するスマートフォンが気になる。またLINEだ。
“今どこ?”
“誰といる?”
“早く帰ってきて”
十数件の通知を見てため息をつく。友達は怪訝そうに覗き込み、「彼氏さん?」と揶揄ってくる。
「まぁ……うん」
曖昧に笑うものの内心は複雑だ。すちくんの愛情は確かに嬉しい。だが過剰な干渉が日常を圧迫し始めている。
夕方、授業終わりに買い物しようと声をかけられた。〈こさめ、駅ビルの新店舗行かん?〉
だがスマートフォンを見ると――案の定。
“買い物は必要最低限に。一人で行かないで”
こさめは立ち尽くした。一体いつ自由を与えられるのか?
「ごめん、今日は帰るわ」友人に断りを入れて足早に帰路につく。
マンションに帰るとすちくんが待ち構えていた。玄関先で出迎えるなり肩を掴んでくる。
『どこに行ってたの?』
「学校やけど?」
『ライン返さなかったよね』
責めるような口調に胸がざわつく。
「そんな時間なかったんよ。疲れてるのに説教されるの嫌や」
抗議してもすちくんは引かない。
『説教じゃないよ。俺は心配してるの』
「それが余計に疲れるんやって!」
つい強い言葉が漏れた。すちくんの目が泳ぐ。
「なぁ、こんな生活続けてたらこさめおかしなるわ。もっと気軽に話したり遊びに行きたかっただけなのに」
数秒間の沈黙。部屋の中に漂う緊張感。
すちは俯き、拳を握ったまま黙り込んでいる。
『……ごめん』
掠れた声が落ちる。
『俺、怖くてさ。またこさめちゃんが離れていくんじゃないかって』
「そんなんあり得へんよ」
こさめは真剣に見つめた。
「こさめだってすちくんのこと大好きやからこそ、ちゃんと対等でありたいねん」
すちはゆっくりと息を吐いた。肩の力が抜ける。
『本当だよね……俺が間違ってた』
彼の表情から焦燥の色が薄れ、代わりに柔らかい光が灯る。
『少しずつ、信用しようと思う。こさめちゃんのこと信じる努力する』
こさめは満面の笑みを浮かべた。
「うん、それでええよ!そうやって少しずつ歩幅合わせていこ」
そう言って彼の頬に触れる。
夕焼けが窓辺を染め始めた。二人の距離は確かな温もりで埋められていく。これからの日々にはまだまだ課題も多いだろう。だが今はこの小さな和解の芽がすべてだと信じている。
『そういえば、明日の晩御飯何食べたい?』
『……うどんが食べたい』
『え~また~?しょうがないなぁ。こさめちゃんには、きつね乗せたげる』
「ほんま?!最高!」
笑い合う二人。過去の葛藤を超えて生まれた新たな絆。窓の外では雪がちらつき始めたが、部屋の温度はもう下がらなかった。
コメント
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第32話、読み終えました。すちくんの束縛がエスカレートする一方で、こさめが「対等でありたい」と自分の言葉で伝えた場面が印象的でした。彼の「離れていくのが怖い」という本音が謝罪に繋がり、信頼へと歩み出す決意をする――この関係性の変化がとても丁寧に描かれていると思います。最後のうどんのやりとりで部屋の温度が変わった感じ、好きです。少しずつ歩幅を合わせていく過程を、これからも見守りたいと思いました。