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ぎこちない大好き

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ぎこちない大好き

1 - 大好きやから心配なんです

♥

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2025年06月29日

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「今度、紅組で旅行 行きません?」


そんな俺の一言が始まりだった。





_ 6月中旬という名の真夏の日。


俺ら8人は東京駅に集合の約束をしていた。



俺は集合時間の15分前に到着。


すると、集合場所には、いつもの帽子を被ったぷりっつくんがいた。分かりやすくてありがたい。




「お疲れ様です!」




声を掛けると、ぷりっつくんはスマホから顔をあげてこちらを見る。下を向いていたから分からなかったが、オシャレなサングラスをしていた。




「お、らぴすやん!お疲れ~」




目線を合わされ、にこっと微笑まれる。


先輩なのは分かっているけれど、ふいに可愛いと思ってしまう。




「あれ?ぷりっつくんだけですか?」


「あー、るぅちゃんは着いてるらしいんやけど…改札から出れないらしいで…笑」


「ww広いっすもんね、東京駅」


「なー、普通に人酔いする」




人混みを眺めながら、そんなことを話していると、知ってる顔の人が近づいてきた。




「_らぴすとぷりっつくん?」




「お!ロゼやん!」


「流石だね、2人とも。早いわ」


「まあな~ロゼには負けねぇもんw」


「ぷりっつくん、それ馬鹿にしてますよね…?笑」


「ww」




「てか、俺で3人目ですか?」


「うん」


「あと10分もしたら集合時間ですけど…これ来ますか?笑」


「遅刻常習犯いるからなぁ…」


「まじで新幹線の時間あるから、やめてほしい…笑」




今回の旅行は、紅組優勝記念で温泉旅行に行くのだ。


メンバーは すとぷりは莉犬くんとるぅとくん。騎士Aはばぁうくん、てるとくん。AMPTAKはぷりっつくん。めておらは心音とロゼと俺。


AMPTAKのあっとくんとけちゃくんは直前で大事な予定が入り、来れないそうだ。めっちゃ残念…




ほんの数秒後にロゼを追いかけるように、てるとくんが到着。


「はぁ、はぁッ…、みんな、おはよ~!!ロゼく~んっ!止まってよぉ…!」


「!、てるとくんっ!おはようございます!!すみません気づきませんでした…w」


「ひどいっ!!」


「「ww」」




笑い合う2人を眺めていると、視界の端にどうも知ってる人たちが近づいてきていた。




「_ウェ~ぃ、みんなお疲れ~?」


「みんないるっ!やっほー!」




色気ましましのばぁうくんと、いつ見ても可愛い莉犬くんが来た。




「お疲れ様です!」


「りぬくーん!おつかれっす~!!」




「早いじゃないすか、ばぁうくん」


「まあなァ?りぬと来たからなぁ」


「へへんっ、俺のおかげ~!」


「りぬくん、かわええなぁ……」


「尊い…全てが可愛いんすよ…」


「w、なんかここに限界オタク2人いるってw」




その後すぐ、道に迷っていたるぅとくんも来る。




「みんなー!おはよー!」


「おはようございますっ!」


「迷子お疲れ様です~w」


「久しぶりに迷ったぁ~…東京駅って疲れるねぇ」




るぅとくんはふっとため息を吐くと、目視で人数確認をしていた。




「7人…あと誰?」


「………えぇと、心音が…来てないっすね」




ロゼが気まずそうに言う。



「本当すみません、うちのリーダーが…」


俺もロゼに便乗して謝る。

あいつ、本当にリーダーなんだよな…?



「あ~…w」


「なんとなくそんな気はしてたけど…」



莉犬くんとるぅとくんは苦笑い。



「あいつリーダーなん、えぐいなぁ」


「めておらっていつも心音くんだけ遅いの?」


「まあ、そうっすね。ま~心音と、らいと?が常習犯っすね」


「なるほど…w」


「大変そうやなぁw」



「も~遅いよ心音!電話も出ねぇし!」



ロゼがキレながら言う。

あいつ、大事なときに連絡つかないから嫌だよな。



「もう、あんなやつ置いてっていいっすよw」


「あ~そうっすね!俺らが許可するんでw」


「めておら、リーダーに辛辣www」




数分後、心音が小走りでやってきた。




「せ、セーフっ!?」




「「「「「「「 いや、アウト」」」」」」」





なんとか間に合った時間通りの新幹線に皆で乗り込む。席に 2人ずつ座っていく。


莉犬くんは、ばぁうくんと。


るぅとくんは、てるとくんと。


心音は、ロゼと。


俺はというと…



「らぴす~!!隣座るで~」


「はーいっ!」



俺はぷりっつくんと座ることになった。



新幹線が発車し、荷物も整理し終わると、ぷりっつくんが外の景色を眺めながらぼやいた。



「…なんか、俺でごめんな? 」


思いもしなかった発言にびっくりする。


「え?全然そんなことないですよ?」


「ほんまに?心音とかロゼとか、莉犬くんとかの方がよかったんやないの?」


「まあ…仲はいいかもしれないですけど。ぷりっつくんとはあんま話せないんで、隣なの嬉しいです!」

「そう?ならよかったけど… 」


「てかAMPTAKが俺だけなの悲しいなぁ~」


「あ!そっか…!あっとくんも…けちゃくんも…」


「そうそう、仕事やって。なんであいつらこういう時に来れないねんっ」


ぷりっつくんは頬をプクッと膨らませる。 かわいい。

だが、やはり申し訳なくなる。



「…なんかこちらこそ俺ですみません…」



「あ、いや、ちゃうちゃう。そういうわけじゃなくて」


ぷりっつくんは慌てて否定する。


やっぱり優しい人だ。



だが、一呼吸置くと本音が出たらしい。



「…でも、莉犬くんがよかったなぁ」


「…ちなみに、俺もです」






「わーい!温泉旅行だぁー!」


「旅館でか。これ貸し切り、ま?」


「ま!!」


「さすが、りぬ。太っ腹~」


「へへんっ!みんな頑張ってくれたからね!」


「りぬくん、、大好き、、」


「なんかここにまた限界オタクいるよ?w」


「ww」




新幹線を降り、そこからバスに乗り、とある旅館についた。


貸し切りの旅館は本当に大きかった。


しかも露天風呂もあるらしい。


最高すぎる…




みんな次々とロビーに入る。


莉犬くんはチェックインを済ませると、バッグからトランプを取り出した。



「じゃあ!みんなお待ちかねの!」



「部屋決めタイム~!!」


「ふぅ~!!!」



「8人で4部屋だから、2人1組で!」


「トランプあるから、どんどん引いていって、せーので表にしよう!」



なんでこの人たちはこういうときだけ準備がいいんだろうか。



「うひゃ~!ドキドキだわ」


「なんか、まじ、受験より緊張してる」


「心音くんは、やだなぁ。笑」


「えぇ……なんで…???ひどくないっすか…??」


「ww」


「やばい、俺も初ライブより緊張してる」


「それはやばすぎません?」




わいわいしながら、トランプを引いていく。


残り2枚、あとはぷりっつくんと俺。


だが、ぷりっつくんはトランプを取る素振りを見せず、腕を組んで俺を見ている。




「…ぷりっつくん、引かないんですか?」


「残りものには福があるって言うやろ?待ってんねん」


「なるほど…!」


「これで俺もりぬくんと…な?」


「いや、俺が莉犬くんと寝ます」


「らぴす、それ、やましい意味なんやないの?」


「w違いますよ!」




全員が引き終わり、それぞれ顔を見合わせる。




「_じゃあ、いくよ?」




「せーの!!!」



一斉にトランプを表にする。


( 俺は4か…! )



みんなそれぞれ確認して、相方を探し始める。もちろん、俺も。




「エースのトランプ、だれ?」


「え!俺です!!」


「うぇ~い。ロゼ、宜しく~」


「こちらこそー!」




エースはイケボ組のロゼと、ばぁうくん。




「僕、2!!!!2、誰!!?」


「僕、2!!!!!」


「うぇ!?やったぁっ!!」




2は変わらずるぅとくんと、てるとくん。




「3番だあっ!3、誰ー!?」


「あ!!俺です!!莉犬くんだ~!」


「おおー!心音くんかぁ~!w」


「なんすか、それw」


「いやwなんか賑やかになりそうだなってw」


「ww」




3は莉犬くんと、心音。




…そして俺は?



「4は?誰?」



ぷりっつくんが4のトランプを見せてくる。



「あ、俺、4です」




俺がそう返事をすると、ぷりっつくんは少し拍子抜けたような顔をして、でもすぐ優しく微笑んで呟いた。




「…結局俺は、らぴすなんやなw」



「…なんか、デジャブっすねw」


「なw」




「おおー!ベッドふかふかそうやで!」


「まじっすか!?」




みんなとは廊下で別れ、部屋に荷物を置くことになった。


部屋は特別広くもなく狭くもなく、ちょうど良かった。


窓からの景色も綺麗だ。




「あ!俺、窓側のベッドがいいっ!」


「え…!俺もなんですけど…」




「……」


「……」




無言でこぶしを突き出す。




「……」




「「…最初はグー!じゃんけんぽいっ!!」」




俺はチョキ。ぷりっつくんはパー。




…ということは?




「っ…よっしゃあああああああ!!!!」


「っ…くそおおおおおおおおおおお!!」




「て、ことで??俺が窓側いただきます~w」




煽りつつ、俺が窓側のベッドに荷物を置こうとすると、ぷりっつくんは窓側のベッドにダイブしてきた。




「やだやだやだ!!ここ、俺のっ!!」




「いやいやwちょっとwぷりっつくん?w」


たまに発動する、ぷりっつくんの赤ちゃんモード。先輩なのは分かっているが、かわいい。




「どいてくださいよっ!そこ、俺のベッドです!」


「やだやだー!!コンセント近いから窓側がいいのー!」


「理由一緒なの、やめてもらっていいですかw」


「ww」




「だとしても!!俺が窓側ですって!!!じゃんけん勝ちました!!」


「別に何のじゃんけんか、言ってないもん??」


「ぐ……で、でも!!」


「やーだ!!ここ、俺の!!先輩だから!!!」


「ここで先輩って切り札を使うの せこいっすぅ…!」


「ww先輩やもん?」


「っ…くそぉ………」




何を言ってもこの赤ちゃんには無駄だと悟り、譲ることにした。


…じゃんけん、俺が勝ったのに。




「…じゃあ仕方ないなぁ、窓側譲りますよ」


「っ!!まじでぇ!?」


「ぷりっつくん、一応先輩なんで…ね?」


「まじかよっ!!ここはお言葉に甘えてありがとう!!!がちぃ、先輩でよかったぁ~」


「ここで実感します?w」




不服ながらベッドの位置も決まり、荷物整理をしていると、ドアを2回ノックされた。


ドアに近い俺が開けると、莉犬くんが立っていた。




「2人とも!荷物整理してるとこ悪いけど、集合!温泉いくよ!」




「「はーい!」」





「ひゃっほ〜!温泉♪温泉♪」


「心音くんノリノリだねw」


一番に体を洗い終わった心音が先頭で、露天風呂の 扉をガラッと開ける。

するとふわっと良い匂いが流れ込んでくる。


「でかあ!?」


「いや〜広いなぁ」


「すげ〜」


それぞれ目の前のどでか露天風呂に感想を述べながら、入っていく。


「コケんなよ?」


「めっちゃツルっていきそう」


そおっと湯に足を入れる。


「うわー!あったか!!」


「これだから温泉はいいね…」


「くっそしみる。最高」


「きもち~」


肩まで浸かると、この人数なので湯が少し溢れた。


「この人数で風呂入るの初めてかもっす」


「俺も!…あ~やけど、しらんおっさんもカウントしたら分からんかもなあ」


「カウントすんなよw」


「ww」



生産性のない会話は、るぅとくんがとっくにのぼせてることに気づくまで続くのだった。





「いや~、やっぱ温泉っていいんだな!」


「疲れ全部取れたわ」


「だなぁ~!」




温泉に入り終わり、今からご飯だ。


久しぶりのバイキングに、心音とロゼとワクワクしながら、食堂に向かう。




「え!全部美味そう…!」


「わーっ!ハンバーグあるっ!」


「う”…野菜…」




沢山並んでいる料理にそれぞれの反応を示しながら、おぼんを持ち、各自トングを使い、料理を取っていく。




大きめの皿を取り、ハンバーグや卵焼きを取っていく。


もちろん、野菜はスキップ_




「_はーい、野菜も食べてくださぁい?」




「…げ、ぷりっつくん」




隣にはいつの間にかニヤニヤしたぷりっつくんがいた。野菜のトングを持ちカチカチさせながら、こちらを見てくる。




「食わないとぉ、身長伸びねぇぞ?」




「いや俺、ぷりっつくんより身長高いっす」




さらっとマウントをとると、ぷりっつくんは顔をむっとさせて、半ば強引に俺のハンバーグにレタスをのせた。




「ああ”ー!?ちょっとぉ!?」


「ふははははっw、煽ったのはそっちやからな?」




ぷりっつくんはケラケラと笑い、呆然とする俺を横目にデザートコーナーに向かっていった。


「あの人…許さん…!!」



結局、レタスはるぅとくんに食べてもらった。


本当ごめんなさい…






時計が日付を超えようとしていたので、もう寝ることになった。さっきまで一緒に話していた心音たちと別れ、部屋に戻る。


部屋にはすでにぷりっつくんがいて、ベッドに座り、パソコンで作業をしていた。




「…もー、こんなときまで編集ですか?」




俺もドア側のベッドに腰をかけて、話しかける。




「あー…次の個人動画のやつ、間に合いそうやなくてなぁ、」


「…んー」




せっかくの旅行なのになぁ。休んでほしいのになぁ。




「明日も早いんで、寝ませんか?」




寝るように促してみる。




「…んー…あとちょっとだけやからやっちゃうわ~…らぴす先寝てていいからな?電気は消すから」


「…」




どうしても寝ようとしないぷりっつくん。


少し腹がたったので、無理やり寝かせてやることにした。




「…ちょっとパソコン貸してくださいっ!」


「ぅえ、ちょッ、!」




俺は無理やりパソコンを奪う。


編集していた動画は長尺動画で、まだ序盤のテロップを入れているところだった。




「…… “ あとちょっと ” とか、嘘じゃないですか…!」


「…それは…っ…」




「………はぁ」




俺は編集を保存すると、パソコンを閉じて、遠くのクッションに優しく投げた。




「えぇ”、?ちょ、、保存したやんなッ?」




そう少し不安そうなぷりっつくんを、俺はベッドに押し倒す。

覆いかぶさり、目線を合わせる。



「…ぁぇ、!?」




「ッ~…もう、寝てくださいってば!」


戸惑うぷりっつくんの両手を掴み、ベッドに固定する。



「ちょ…ぇ…」




動揺するぷりっつくんをここぞとばかりに質問攻めする。




「…目の下のクマ!朝から気になってたんですけど!昨日、何時間寝たんですか…!」



「ぇ……あ…」


「…んー…8、時間とかぁ、?」




( めっちゃ目が泳いでる… )




「…嘘ですね。どうせ5時間も寝てないですよね」


「…っ、( 図星 )」


目をそらすぷりっつくん。


「……ッ」


「…あの、…俺、無理してほしくないんですよ」




「…」



「確かに、ぷりっつくんの動画すっごい面白いから、その分編集が大変なのは分かってます」


「動画の投稿を待ってるリスナーさんが沢山いるのも分かってます」


「…やけど…それでぷりっつくんの体が壊れたらどうするんすか…!」




「………ッ、」




「…俺、みんなに休んでほしくて旅行の提案したんです」


「いつもの編集とか録音とか…そういう仕事に追われる生活から、少しでもリフレッシュしてほしかったんです」


「……ぷりっつくんぐらいですよ、こんな時まで編集してるのッ、」




「…」



黙りこくるぷりっつくんをみて、怒りが立ちこめる。

違う。こんなこと言いたいわけじゃないのに、口が止まらない。


_今言わないと、ぷりっつくんが倒れてしまう気がして。


「お願いッ、お願いだからっ…!!」


「…今日ぐらい、寝てくださいよッ”!!」



「…っ…もうッ、」


「ぷりっつくんの馬鹿ぁッ゙!!( ポロッ」




「…ッ……え、」




目を見開くぷりっつくん。




「……ッ”、」




俺は居ても立ってもいられなくて、部屋を出た。





「_で、部屋を飛び出て、行く当てもなく俺たちのとこに来たのね?」


「…はい…そうです」


「…らぴす、まじ馬っ鹿じゃねぇの?」


「心音、お前は黙れ」



勢いにまかせて放った言葉に収集をつけられず、何故か出た涙を拭きながら部屋を飛び出した俺は、莉犬くんと心音の部屋に駆け込んだ。


部屋には、別室のはずのばぁうくんとロゼもいた。どうやら4人で雑談してたらしい。




「そんな大乱闘したの?」


「らぴちゃんが泣くって、相当だよなァ」




「あ…いや…俺が勝手に泣き始めただけで…全然泣くつもりはなくて…」




「…そんな、泣きそうな顔で言われてもなぁ。笑」


「それはそう、w」




「…でもまあ、らぴすくんの気持ち分かるなぁ」


「ぷりっつくん、真面目ですもんね。こんな時までも編集してるの納得」


「解釈一致」


「でも、うん。そうっすね。休んでほしいっすね、すごく」


「編集上手いし、頼れるんだけど。頑張りすぎなんだよなァ、ぷりちゃん」


みんなもぷりっつくんへの印象も「頼れるけど最近頑張りすぎ」らしい。



「…俺が、言いすぎた気もしてて、」


「なんか事情があったかもしれないのに、何も聞かず勝手に詰めちゃったから…ッ」




俺がそう呟くと、莉犬くんが優しく微笑んで頭を撫でてくれた。


「…!」


「…もし、らぴすくんにちょっとでも非があると思ってるなら、謝まりにいってみたら?」




「きっとぷりちゃん待ってんだからよォ、行ってきな」


「待ってるよ」


「仲直りしてこーい!!」




( …本当みんな優しいなぁ。)




よし、決めた。

ちゃんとぷりっつくんに謝ろう。


俺はもう涙が出ないであろう目を、ごしっと擦る。




「…ありがとうございます! 俺、行ってきます…!」




「おう!行ってこい~」


「頑張れよ!」


「ぷりちゃん優しいし、きっと大丈夫!」


「ファイト~!」



みんなの励ましの言葉は俺が部屋を出るまで続いた。






トントン…と控えめに扉を叩く。


返事はなかった。




ゆっくりとドアを開けると、ぷりっつくんは窓側のベッドに横になっていた。


(寝てる…?)


仰向けで目をつぶっている。寝ているのかもしれないが、寝息は聞こえない。


なるべく物音を立てないように近づき、ぷりっつくんの目の前に目線を合わせるようにして、しゃがむ。


寝ているからもう意味はないのかもしれないが、このまま寝るのも癪なので、俺は謝ることにした。




「…あの…ぷりっつくん」




「…いきなり、生意気なこと言ってしまってごめんなさい」


「俺、ぷりっつくんに無理してほしくなかっただけなんです」



「こんなの、言い訳にしかなってないと思うけど、」


「ぷりっつくんの頑張りも何も知らない俺が言えることやなかったです」




「っ…」




「……だから_」








「_なぁ、もう、謝らんでええよ」




「…え、」



ぷりっつくんはいつからなのか、起きていた。


仰向けから体勢を変えて起き上がり、ベッドに腰を掛けて、俺と目を合わせる。




そしてぽかんとしている俺に向けて、ゆっくりと口を開き、話し始めた。


「…まず、ほんまにごめんな」



ぷりっつくんは頭を下げた。


ふさふさなつむじが見えた。



「あ…ぃや……そんな…」



「いや。まず謝らして。俺が悪かった」


「俺も、こんなの言い訳にしかやってないと思うけど、許して」



きっぱりと言い切り、

ぷりっつくんは顔を上げて続ける。



「俺さ、らぴすがこの旅行計画したの知らんかって。」


「でも、らぴすは皆のことを思って、考えて、旅行の提案してくれたんやろ?」


「っ…でも……」


「その意図を汲まずに無視して勝手に仕事してたのは、まぎれもなく、俺や。」


俺の否定の声を遮ったぷりっつくんの目は、真剣だった。

真面目に見つめられて、少しドキっとする。



「…旅行のことありがとう、でもほんまに勝手なことしてごめんなさい」


「俺が悪かった、泣かせたのも俺や。ごめん。」



俺は謝ってほしいんじゃないんだ。



「らぴすには、心配させてもうて、ほんまに申し訳ないと思ってる」


「…やから、俺も自分のことには気をつけるようにするから、もう、らぴすは俺のこと心配せんでも_」



_違う。


俺は、ただ。




「っ、俺はッ!ぷりっつくんが大切なだけなんで…!」




「…!」




「っ~……だからッ、これからも、心配します…!」


「だから、もう、謝らないで、。」



俺の途切れ途切れのなんとか伝えた言葉に

ぷりっつくんはゆっくりと微笑んだ。


「らぴす、本当俺のこと、大好きなんやなぁ、笑」



「……!」




やっぱりぷりっつくんの笑顔が可愛いと思った。




「…当たり前っす、だから無理せんといてください」



「うん、分かったって。ごめんな」


「だから!謝るの禁止ですって!」


「あぁw」


「ww」




部屋に響く笑い声。


この雰囲気が、空間が、心地良くて。


今はそれだけでよかった。


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