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KUNさんがとってくれた広い店の片隅で、紅茶は静かにグラスを傾けていた。50人クラフトのオフ会は、いつも通りの大盛況。にぎやかな笑い声や話し声が響き渡る中、紅茶は少し離れた場所で自分のペースで飲んでいた。人混みに混ざるよりも、こうして一人で落ち着いている方が性に合っている。
そんな時、不意に誰かが隣に座る気配を感じた。見やると、そこにはほのかに酒気を帯びたウマヅラハギが座っていた。
「ウマヅラ?」
呼びかけるが、ウマヅラハギは返事をせず、ぼんやりした表情のままだ。次の瞬間、何も言わずに紅茶の手にウマヅラハギ自身の手をそっと重ねてきた。
「…え?」
一瞬、紅茶の心臓が跳ねた。無言で触れてくるウマヅラの行動に戸惑いが隠せない。普段の彼からは考えられないような接近に、紅茶は軽い混乱を覚えつつも、酔いが回っているのだろうと自分に言い聞かせた。
それでも、ウマヅラの指が触れる感触は妙に生々しく、紅茶の心は落ち着かない。たまにスリスリと手の関節をなぞるような動きに理性をそがれるような気持ちになり手を引こうとしたが、なんとなくそのままの状態を保ってしまう。酒のせいかもしれないが、ウマヅラの手は少し温かく、その心地よさが自分を変に意識させていた。
「…紅茶さんの手、大きいね」
突然、ウマヅラがぽつりと呟いた。紅茶は一瞬、言葉が理解できなかった。
「…は?」
なんとも間の抜けた声が出てしまう。手が?大きい?そんなことを突然言われるなんて、紅茶は予想だにしなかった。その言葉に対するリアクションも思いつかず、ただただ困惑する。
「…あ、そうか?」
かろうじて返した言葉は、ぎこちなくて自分でも納得できないものだった。けれど、ウマヅラハギは特に気にする様子もなく、紅茶の手をじっと見つめ続けていた。その視線がなぜか熱を帯びていて、紅茶の胸の鼓動がさらに速くなる。
(なんやこれ…)
内心、混乱しながらも、紅茶は妙に期待している自分に気づいた。ウマヅラがこんな風に触れてくることも、さらにはこんな甘い声で話しかけられるのも、全てが非日常的で不自然なはずなのに、拒絶できない。
「ウマヅラ、酔ってるんやろ?」
とりあえず声をかけてみるが、ウマヅラは答えず、ギュッギュッと手の弾力を楽しんだり手を合わせて大きさを比べたり更には手を繋いで紅茶の反応を楽しんでる様子だ。手を離す気配もない。その無防備な姿に、紅茶はさらに混乱しながらも、どこか心の奥でふつふつと湧き上がる感情が気になった
(このまま続けさせたら、どうなるんやろうな…)
そんな考えが頭をよぎるたび、紅茶は自分の心が掌握されている感覚に陥り、困惑と期待が綯い交ぜになったまま、ただその場の空気に身を任せていた。