目が覚め、見慣れた天井と大好きな匂いに包まれた。
隣には僕の手をしっかりと握りながら眠っている桃くんがいた。
目をしっかり見てみると、隈が濃くはっきりしていた。
ごめんね、ごめんね桃くん。
僕のせいで我慢させちゃったね。
そっと桃くんの指を解いて、スマホに手を伸ばす。
ありがたいことに、近くにあった机に置いてあった。
きっと彼が置いてくれたのだろう。
ほんと優しいな。
そっと桃くんに毛布をかけ、キッチンへ行く。
痩せ細った彼を見たら、何かしら食べさせてあげたくなった。
勝手に食材とお鍋使うのは許して。
ゴツゴツと野菜とお肉を煮込んでいたら、後ろから抱きしめられた。
いつもの僕なら、おはようって言えたのにな………。
「なんで急にいなくなったの。」
僕は火を止め、後ろを振り返り、彼の顔を一目見て微笑み、スマホを取りに行った。
メモを開き、文字を打つ。
『急に消えてごめんね、今僕声が出ないの。話すと長くなるから、今スープ作ってるからとりあえず食べよっか。』
スマホの画面を彼に見せると、彼は驚いたような顔をした。
まあそれはそうだろう。
ごめんね、びっくりさせちゃって。
僕はもう一度キッチンに立ち、スープをお椀に注ぐ。
2つのお椀と箸をテーブルに持っていく。
桃くんが座ってる隣に座る。
「つくってくれたの?ありがとう。いただきます」
僕はいただきますとは言えないから、手を合わせ軽くお辞儀をした。
1口食べ、またメモを起動させる。
『僕、活動やめますって報告したの、声が出なくなったからなの。心因性失声症って言う病名がついてるの。だから、もう活動する気は無いし、できないの。迷惑ばっかでごめんね。もう、メンバーにも桃くんにも会うのはこれで最後にするから。』
「………なんで何も言わなかったんだよ、…ッ!!」
「そんなに俺頼りなかった、?いつも言ってんじゃん、迷惑なんてかけてないって。しかもなに、俺に会うのこれで最後にするって。ふざけてんの?俺がそう簡単におまえのこと離すと思ってんの?俺がどんだけ心配したと思ってんだよ…!!!」
「ッ……ポロポロ」
「……ギュッ 無事でよかった。生きててくれてありがとう。」
「心因性失声症って、ストレスで声が出なくなるやつだろ。」
「ねぇ、教えてよ、辛いんでしょ?なんで1人で溜め込もうとしてんの?言ってくんなきゃわかんない。無理して笑っててもおまえの気持ち分かんない。恋人には、青には幸せになって欲しいの。((ギュッ」
「ッ……ポロポロ」
「泣いてもいいから、ゆっくりでもいいから、ちゃんと教えて。」
「今すぐじゃなくても大丈夫。声が出ないの不安だよな。怖いよな。でももう大丈夫。俺がおまえの隣にずっと居るから。((ナデナデ」
青の辛いことも、嫌なことも、悲しいことも全部受け止めるから。
仮に俺がおまえの隣にいれないとしても、俺が世界で1番おまえの幸せ願ってやるから。
涙が止まらない。
桃くんの服を僕の涙で濡らしていく。
この優しい温もりが、香りが大好きで、離したくなくて、ギュッと力強く桃くんの服を握った。
全然泣き止まない僕を彼は決して笑わなかった。嫌な顔ひとつせず、ずっと背中を摩ってくれた。その大きな手がとても心地良かった。
もう、君には敵わないわ。
コメント
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最高すぎて…500まで♡押しちゃいました(´>∀<`)ゝ