運の悪い男
俺は自慢できるようなことが何も無い平凡以下の人間だった、勉強は集中力がもたず定期テストでは毎回赤点、スポーツも昔から苦手意識があり自主的には絶対に取り組まない。それに自分で言いたくはないがクラスの女子からデブと言われるレベルで太っていた。最初は見返してやると思い勉強をテスト1ヶ月前から1日に3時間以上し、体重を減らそうと食べる量を減らし早朝川沿いをランニングするなどの目標をたてた、しかし最悪なことにその生活は1週間も続かなかった。
好きな人でもいたらその人のために頑張れたのだろうか、応援してくれる人がいればもう少し頑張れたのだろうか、俺の決意がもっと強ければ俺は変われたのだろうか。結局諦めたのは俺だから今更こんなこと思っても仕方がない。
俺はだんだん何事にもやる気を失っていった。元々趣味がなかった俺はゲームをやってもすぐ飽きる、本なんて1ページ読み終わったら閉じてしまう、テレビの番組はスリルがなくてつまらない俺は次第に学校に行くことも憂鬱になり学校を中退した。先生が進めてきた訳じゃない俺の意思だ。学校はクソみたいなやつしかいないが、家にいたらいたですることがなくマイナスなことを考えてしまう。自分が社不すぎて将来のことを考えて不安になる、生きた心地がしない、こんな俺に明るい将来なんてあるのか?
なんで学校のクソ共は今頃楽しそうに友達と話したりして将来もそれなりに楽しい生活を送れるはずなのに俺は…俺が何をしたんだ、高校受験だって将来の学歴に傷がつかないためにって背伸びして必死に俺の限界の力を使い切ってなんとか合格を勝ち取ったのに背伸びしすぎた。受験が終わったら終わりじゃなかったんだ、背伸びした分学校にいる生徒はみんな俺と同じかそれ以上の学力を持っていたんだ。俺にデブっていったやつは毎回テストの結果をみんなの前で堂々と言えるレベルで頭が良かった。
世界って不平等だと思った。俺は人の悪口をその人に聞こえるように言わない人間性は俺の方が上だったはずなのに、中学生の時も思ったが性格が悪い奴に限って頭がいいのはなんでなんだろうな。ほんとに腹が立つ、あいつらテストの前日に合コンしてたのにあいつらは努力しなくてもいい人種なのか?つらい、苦しい、なんで俺は出来ないんだ?なんであいつらと同じことが出来ない?なんでこんなにダメなんだろうなずっとあいつらみたいなクズは社会のために死んだ方がいいと思っていたが、ほんとに死ぬべきは社不で何も出来ない俺なのかもな。
その考えにたどり着くまでに時間はあまりかからなかった。
いつもは行動も決心するのも遅いのに今回だけはこの考えに至った瞬間体が動いた、動いてしまった。俺の家はは9階建てのマンションだ。
俺自身が住んでる階は3階だったから何となく足早に9階まで階段でのぼって行った。
階段を登ってる間俺の意識はほぼ無いに等しかった、ただ、もう終わりにしたいという気持ちだけで進んだ。
次で9階、運がいいのか悪いのか階段を上る途中で人とは会わなかった。
1度身を乗り出して下を見てみる。この前ニュースを見ていたら飛び降りをした人と下で歩いていた人が衝突して2人とも無くなってしまう事件を見たからだ。俺は俺のせいで誰かが亡くなってしまうのだけは嫌だった。ネットで自殺を匂わすツイートのコメには人に迷惑をかけるなとどこでも書いてある。俺はそんなことは死ぬほどどうでもいい。なんなら俺を嘲笑った奴らがしたにいたら迷わず飛び降りてそいつら諸共死ねばいいと思うほどだ。しかし知らない人、この後幸せになるかもしれない人を俺のせいで死なせる訳にはいかない。死ぬのは俺だけでいい。こんなことを考えながら朦朧とする意識のなか決心を固め親に最後のLINEをし、今までの感謝を伝え柵の上に座った。
座ってからは流石に恐怖が湧き出てきた、痛そう、思ったより高い、どんな風に落ちるんだろう、怖い、怖い、怖い、死にたくない。
え?
俺は今何を感じたんだ?死にたくない?今更そんな考え浮かんで欲しくなかった親に送ったLINEはすぐ既読が着いた今スマホは親からの鬼電がかかってきている、この電話を取って今まで苦しかったこと俺が感じてたことをすべて親に話してみようか?いいや。もういい。頑張りたくない。よし逝こう
座ったままだと怖くて手で柵を掴んで決心が折れた瞬間落ちそうで怖かったので俺は柵の上に立った冷たい風が俺の頬を撫でた。お疲れ様よく頑張ったねと言われているように感じ。俺は…目を瞑り、体の力を抜き、体重に任せ前に倒れた。体がクルクルと回っている感覚があった落ちてる、俺落ちてるんだ9階から…。
これ死ぬのかな、死ねるかな。死ぬのこわ…
(ドンッ)
ちゃんと落ちたはず何も掴まず落ちたはずなのになんでだろうか、俺は生きていた。
発見が早かったのもあっただろうが医者曰く足から落ちたため当たり所がよく今生きているとのこと。落ちた瞬間は頭からだったはずなのに。体が回転してる気はしていたが、自分自身が死を拒んだからか、結果的に俺の足が機能しなくなっただけで俺の自殺未遂は終わった。
足はもうリハビリをしようが動くことはないらしいもう、それでいいやと投げやりになりながら医者の話を聞いた。
元々何も無かった俺の人生にさらに不可が増えた。高校中退、自殺未遂、足も使い物にならない、俺の人生今度こそ終わった。
死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい
今飛び降りたら絶対死ねると思えるほど俺は酷く生を拒んだ。
自殺する直前は死を拒み、自殺未遂後は生を拒む
俺って身勝手なのかもな。めんどくせぇな俺って。
全部全部めんどくさい。もう全部辞めたい。
今は家でもできる仕事になんとか就職したが、給料は低い割に仕事量多いし、上司はキレ症ですぐ怒ってくる。今の俺にとって自殺とは救済みたいなもんだ。
死のう。今度こそ失敗しないように確実に。
自殺のために12階建てのホテルの12階に泊まり最後の晩餐をしてベランダに出た。足が使えなくて立てないからなんとか車椅子をベランダに持ってきたり椅子を持ってきたりと試行錯誤してなんとか柵に座れた。
その時、車椅子などを持ってくるのにも疲れていたし、何となく達成感もあってか気を抜いていた。手が滑った足も機能しないからそのまま落ちてしまった。あ、嘘だろ。落ちる、いや落ちてる。最悪だ、なんで寄りにやって最後も失敗するんだ。そんなことを考えてる間に気づいたらもう地面と衝突していた。不思議と痛くはなかった。安心した。でもなんでだろうなんか地面が柔らかいというかなんか地面ぽくなかった。なんとか目線を地面に向けた。
あ…あぁ…あぁぁぁぁぁぁぁぁァァァ
俺は歩行者の上に落ちてしまったらしい。
どうりで痛くない訳だ。いや全く痛くない訳では無いが。どうにか声を絞り出し、俺の下になっている人に声をかけた。ごめんなさいほんとにごめんなさい、大丈夫ですか?聞こえてますか!?反応はなかった。一部始終を見ていた別の歩行者が救急車を呼んでいた。
俺はまた助かってしまった。ホントに運がない。そして俺のせいで…あの歩行者の人のところに行かなきゃ…謝らないと、ダメだ死なないで、頼む。神にもすがる思いで歩行者の人の部屋に行った。顔に白い布がかけられていた、死んでいた。その人は死んだ。俺は2階も生き残ったのに、その人は死にたくもないのに死ねたのか。何故か見た瞬間に込み上げてきた思いは妬みだった。ついカッとなって白い布を掴み投げた。俺のおかげで死ねたやつの面でも拝んでやろうじゃないか。
白い布に隠れていた顔は知っている顔だった。
しかもかなり見慣れた、俺の記憶に鮮明に残っているこの顔は…
俺が学校で、今までの人生で1番嫌い、嫉み、1番死んで欲しいと思っていた、あのクラスメイトだった。俺はショックのあまり倒れてしまった。
落ち着いてきた後日死んだクラスメイトの親が俺を尋ねてきた。侮辱されるのだろうか、こいつも俺を罵倒するんだろうか、と思いながら覚悟を固め話を聞いた。
俺をいじめたやつは俺が1回目の自殺未遂をした後、俺のせいだと自分を責め不登校になったらしい、そして反省し俺に謝るために俺の家を尋ねた帰り道にあったホテルが俺が自殺する場所に選んだホテルだった。そこでちょうど俺が滑って落ちたタイミングでそいつが通ってしまった。俺が少し決行する日をずらせば、もしかしたら分かり合えたかもしれないあいつにされて辛かったことを全部当人に伝え罵倒してやれば俺もスッキリできたんだろうな。
俺はほんとに運がない、1番悪いタイミングで滑ってしまった。
それから5年、色々あったが俺は今でも生きている。今はもう死にたいなんて思わない。そして俺のせいで死んだクラスメイトの命日に毎年墓参りに訪れている。流石にそいつの親と会うのは死んでもお断りだが俺は自分の罪を全部背負って新しい未来を諦めずに進んでいこうと思う。よーし!!これから色々大変なことが続くかもしれないが自分のためにもあいつのためにも頑張るぞ。決意を固めたその時、腹部当たりに激痛がはしった。痛い、痛すぎる、自殺未遂した時の何倍も痛い痛い痛い。何が起こった?何が?訳が分からない。俺は必死に後ろを振り返った。状況を理解するのに時間はかからなかった。俺が殺してしまったあいつの母親が、右手に血まみれの包丁を持っている。やっぱりそうだよな。自分の息子がいくら悪いことをしたとしても、しっかり反省し、被害者に謝りに行ったのにその結果は被害者の自殺に巻き込まれて死亡。そりゃ恨むよな。ほんとに申し訳なかった。俺がすべて悪い。ごめんなさい。
最後に見たのはあいつの親が涙を流しながらも今まで見たことがないほどの笑みを浮かべ声を出して笑っているそんな光景だった。
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