コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
音星の浄玻璃鏡で、無事に八天街へと戻った。
今日はきっと熱帯夜。
懐かしい感じがする八天街の民宿で。
みんなが俺たちの生還に大喜び。
夕暮れ時の民宿の面積一杯に大きな声が反響している。
「いや、良かったなあ!」
「本当に、無事に戻れて良かったねえ!」
「良かったよ。本当」
「火端くんって、ほんとタフねえ。ねえ、今度お姉さんと一緒に日本一周の旅に行きましょうよ」
「……あのさあ、みんなに水を差して悪いんだけどなあ……弥生ちゃんは?」
…………
「そうかあ……無事に人間に生まれ変わったかも知れないって? 弥生ちゃん?」
「ああ……」
「ええ……」
「どうしても、帰るのか?」
「ああ、古葉さん。俺のここでの役目はもう終わったんだよ」
「私も旅の途中でしたので、もう実家に帰らないと」
俺たちは八天街駅へと来ていた。
古葉さんの後ろでは、みんなが手を振っていた。
ロータリーからのクラクションの音。人々の忙しない雑踏。暑かった八天街の日差し。
どれも懐かしいんだ。
「じゃ、もう行くよ」
「それでは、お後よろしいようで……」
駅へ電車が走って来た。
帰りの際に、俺は音星の顔を見つめた。
「なあ、音星。……弥生は……ありがとうって、言ったんだよ。最後に」
「へえ、そうなのですか」
「ああ、きっとな」
「では、青森県へと行きましょうか」