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嗚呼、ここに来てどれほどの月日が経ったのだろうか。黒髪の青年は、現在それすらも分からない状況下に置かれていた。
唯一の救いといえば、腕時計が許可されているぐらいだが、時間しか把握出来ないのは、だいぶ絶望的だった。
「Buongiorno、菊〜」
ニッコリと微笑む、くるんとしたアホ毛が特徴の青年、それは日本の化身”本田 菊”と元同盟仲間であるイタリアの化身 “フェリシアーノ・ヴァルガス”が、嬉しそうにニコニコと微笑みながら菊の前に現れた。
「おはようございます、フェリシアーノ君 」
正直、この生活にも慣れてきた。 否、本来ならば慣れてはいけない事なのに、私はなぜ──
そんな事を考えていると、フェリシアーノから向けられる鋭い針のような視線と、いつもの声色とは異なる低い声で私の名前を呼ぶ。
「菊」
「ぁ…はい、すみません。私とした事が…」
鋭い目つきで見つめるフェリシアーノのカナリア色の瞳には、まるで狩りをする狼のような目付きに変わっていた。
恐怖でまともに声が出せずに、菊の口からは少し喘ぎ声が漏れた。
部屋中には、時計の秒針がカチッカチッと一秒一秒進んでいる音だけが響いた。
フェリシアーノは、ニコニコと無邪気な笑みを浮かべ、「今日はね〜!」と一日の予定の話を、フェリシアーノがほとんど一方的に話していた。
そんな時、ふと、フェリシアーノの脳内に、アルフレッドのある言葉が響いた。
「キミはいつまで菊の傍らに居座るつもりなんだい?」
その言葉に、フェリシアーノは苦虫を噛み潰したような表情をし、「菊、ほらいくよ」と言うと、菊の手を強引に掴み、彼は光りある外の世界に繋がる扉へと菊を誘った。
✦
「あっ、そうだ!菊、菊〜!」
菊が返事をする間もなく、フェリシアーノは頬を染めながら言った。
「菊が良ければ、俺と一緒に踊らない?」
そう言って、踊るのは19世紀初頭にヨーロッパの宮廷で流行したワルツだ。
日本人の菊からすれば、4分の3拍子で踊るワルツはあまり馴染みがなく、覚えるのに相当な時間を費やていた。
ワルツが、昔どれほどの上流階級の貴族達を魅了し夢中にさせたのかは、言うまでもないだろう。 勿論、ワルツの 魅力 という名の 沼 に、菊もどっぷり浸かってしまった。
最初の頃は、ワルツステップのリズムに戸惑ったり、踊れても途中で足が縺れて、その場に座り込んでしまう事が多々あった。
菊が転けそうになる度に、フェリシアーノは菊を抱き寄せ、 その度に「すみません、」と無意識に言ってしまうと、 穏やかな笑みを浮かべたフェリシアーノは必ず、
「大丈夫だよ、ゆ〜っくり慣れていこうね!」 と口にしていた。
まるで、赤子に子守唄を聞かせるような声で話すフェリシアーノに、菊は恥ずかしくなり目線を逸らした。
顔を赤く染める菊の顔を覗こうとするフェリシアーノに、菊は応えるかのように目をギュッと閉じて首を横に振る。
その愛らしい菊の横顔と態度に、フェリシアーノの口元は自然と上がっていた。
✦
「おい、馬鹿弟。最近ジジイの行方が分からないんだそうなんだが、お前は何か知らないのかよ。」
兄である南イタリアの化身”ロヴィーノ・ヴァルガス”ことロマーノの口から遂に菊の話題をもち出された。
フェリシアーノはロマーノの話に対して、眉を八の字にして、泣きそうな震えた声で言った。
「ヴェー…菊、大丈夫かなぁ・・・俺、凄く心配だよ、」
フェリシアーノの返答に、ロマーノは何も言わなかった。
オーディオから流れている
【 ラフマニノフ 交響曲第二番 第三楽章 】
の序盤、クラリネットから放たれる、美しく、触れると溶けてしまうような儚さと芯のある暖かく優しい音色が、二人の間に流れる不穏な空気を中和していた。
✦
──やはり情報が回るのが早い。
ある程度予想はしていたが、どうもここまで早いとは思ってもみなかった。
今頃、アルフレッドかアーサー辺りが血眼になって菊の行方を探しているだろうが、 俺の菊に対する想いはそれほど甘くない。
なんてったって、やっとの思いで 自分の手元に来た のだ、こんなチャンス二度と無いかもしれない。
それならいっそのこと、消えていなくなってしまうその時まで、俺の傍にいて欲しい。
でも、菊はそんな俺の我儘を聞いて受け入れてくれるだろうか・・・ そんな漠然とした思いに、フェリシアーノはフッと鼻で笑い、呟いた。
「まだまだ子供なんだなぁ──俺って・・・」
一人の部屋にフェリシアーノの心から溢れた言葉が小さく響いていた。
✦
「 菊 」
目を覚まして、乱れた呼吸を整えた。
不快感のある冷たい汗が額に流れ、心臓が激しく鼓動を鳴らしていた。
先程見たのは夢・・・だったのだろうか? だが、夢にしてはやけに現実味を帯びていた。
──何よりも、あの声は、アーサーさんの声だった。
イギリスの化身”アーサー・カークランド”、以前といっても何百年も前に菊の元同盟だった英国生まれ英国育ちの紳士。
今でもアーサーさんと同盟を結んだあの日の出来事は、今でも脳に焼き付いて残っている。
フェリシアーノ以外の誰かを思い出すことが出来る菊には、まだ微かに残る希望を捨てきれずにいた。
黒い真珠のような瞳から溢れる一筋の涙が、小さな顔のラインを伝っていく。
まだ未熟な青年は、日々ただひたすらに神や仏に助けを求め、祈っていた。
だが、彼の願いは虚しく、フェリシアーノと一緒に、笑う度・話す度・触れ合う度にそれらの思いは少しずつ罪悪感や喪失感へと変わっていづていた。
菊は、自分自身が気づいた頃にはもう遅く、彼はもう、何をしようが、フェリシアーノの手のひらで菊は踊らされていたのだ。
✦
──菊が消えてから数日が経った。
国がいきなり消えてしまう事は稀にあるが、1000年以上も存在し続けていたあの日本が、突如消えてしまう事なんて有り得るだろうか・・・?
人差し指をトントンと不規則なリズムで机を叩いているアメリカの化身”アルフレッド・F・ジョーンズ”の頭の中には、数日前に突然、連絡が途絶えた菊の事でいっぱいになっていた。
「おひさ〜」 と言いながら、アルフレッドの隣にある空席に腰掛けた、 フランスの化身 “フランシス・ボヌフォワ”が、アルフレッドの様子を見ると少し言葉を詰まらせながら話し始めた。
「おいおい、いくら菊ちゃんが心配だからって、少しくらい機嫌直せよー…」
そのフランシスの発言に、アルフレッドが現在抱えている、怒りやら不安やらの複数の感情が、溢れた。
「へー、君は菊の事が心配じゃないのかい?」
彼は一瞬、少し驚いた様な表情を見せたが、直ぐにその表情は悲しそうな、寂しそうな、そんな複雑そうな顔をした。
「──そりゃぁ、お兄さんだって菊ちゃんの事が心配に決まってるだろ、」
フランシスはそれだけ言って、会議室から背を向けた。
「くっそ・・・どこにいるんだよ、菊」
この気持ちを一体どこにぶつけたら良いのか分からず、アルフレッドはその行き場の無い気持ちを拳に込め、勢い良く机へ叩きつけた。
菊を探す為に、現在進行形で全国各地でお偉い人さん達が動いてくれている。
それなのに、未だ菊の安否は不明なままだ。
彼の安否が不明なのにも関わらず、のうのうと休もうだなんて事ができず、 アルフレッドは3日間もの間、寝る間も惜しんで菊の捜索に打ち込んでおり、彼の目の下にはくっきりとクマができていた。
「おい、アルフレッド、本田は俺たちが引き続き探しておくから、その…流石にもう休め。」
そう言い、ドイツの化身”ルートヴィッヒ”が顔を顰めると、隣にいた彼の兄であり、元国のプロイセンの化身 “ギルベルト・バイルシュミット”が、 「そうだぜー…爺の事は、俺様達に任せて、お前はサッサと休め。お前が倒れたら元も子も無いぞ。」 と横から口を挟んだ。
「…分かった。そこまで言われたら、少し休むよ。」
アルフレッドはそう言い、渋々捜索の手を止め、休憩室へと向かって行った。
✦
ジリリリリと甲高い音で鳴っている電話機を、フェリシアーノがゆっくりと受話器を取って口を開くと、電話の相手はギルベルトだった。
最初はお互いに最近あった事などと他愛の無い世間話をしていたが、突然、ギルベルトが菊の話を持ち出した。
「なぁそういや、フェリちゃん。爺の事…本当に知らねぇか?」
「ヴェ?!知らないけど…どうして?」
「あー、いやその…疑ってるわけじゃねぇん
だが…何だか最近やけに嬉しそうじゃないか?
──例えばだがよぉー、今までずっと欲しかった物を手に入れたとか。」
ギルの言葉に、俺は全身の血の気が引き、全身から冷たい汗が吹き出る。
誰にもバレないように色々と細工をしていたりするのに、ギルベルトの発言は綺麗に的を得ていたのだ。
まるで全て見透かされていて、甘い罠に引っかかった袋の中のネズミのような感覚に陥った。
ギルベルトの言葉に、フェリシアーノは返す言葉が見つからず、少しピリついた雰囲気が流れた。
「あ、でも、これは唯の俺の感?だからさ、まぁなんつーか、あんま気にしないでくれ。」
フェリシアーノがだんまりなその姿に、ギルベルトは小さく「すまん、」と謝り、その場を去っていった。
バタンと閉まる扉の音をかき消す様に、心臓が大きな音を振動させていた。
冷や汗や動悸がさっきから止まらない、 早く菊の元に帰って嫌な事を忘れよう。
✦
「ヴェー…ただいまぁ〜ねぇねぇ菊ぅ〜」
「どうしたんですか?フェリシアーノ君」
ソファーに腰掛けていた菊に駆け寄ると、フェリシアーノは無言で菊を抱きしめた。
以前の菊なら、「何ですかいきなり!!」といってフェリシアーノを突き飛ばしていただろうが、今の菊は、優しい安心感のある包容力で、フェリシアーノを包んだ。
「菊はさ、俺が急に居なくなったら・・・どうする?」
「ぇっ…えっと、そうですね・・・悲しいです。
それに、フェリシアーノ君がもし居なくなってひまったら、色んな人が悲しむと思います──」
菊の若干、的外れな回答に、フェリシアーノは「何かそれ、質問の内容とちょっとズレてる気がするんだけど…」と言って、眉を八の字にして、「ヴェ〜」と小さく呟いた。
少しの沈黙の後、フェリシアーノは困った様な笑みを零したすと、 「まぁ、良くも悪くも菊らしいね」と、その言葉に 菊は肩を竦めながら、
「それ、褒めてますか?」と聞くと、フフッと柔らかい表情で笑った。
フェリシアーノは菊から手を離し、ピシッと敬礼のポーズをすると、
「菊〜!俺シエスタしたいであります!」と元気な声で言う 彼の発言に、菊は優しい笑みを浮かべて、 「では、私も是非ご一緒させて頂きましょうかね。」 と提案に乗ると、フェリシアーノは目を輝かせ、まるで無邪気な子供のような顔をして笑った。
その表情に菊は、
「今自分がフェリシアーノから離れてしまうと、彼は一人で生きていけるのだろうか…」
なんて考えが脳裏によぎり、菊の心の天秤は、上下に激しく揺れていた。
「菊?」
まるで、絡まっている糸を解くように、フェリシアーノは甘い声で菊の名前を囁くと、菊はハットして、咄嗟に作った笑みで自分の思考を隠した。
「いえ、なんでも無いですよ。 少し上の空になったですから、心配しないでください」
「ウワノソラ?って何?」
フェリシアーノの質問に、菊は手を顎に当てて、少し首を傾けると、フェリシアーノが理解しやすいように、菊は答えを探した。
「そうですね…凄く簡単に言ってしまえば、”ボーッとする”みたいな意味ですかね?」
「へぇ〜そうなんだ〜!じゃぁ菊、早くシエスタしようよ〜!」
フェリシアーノは菊の手を優しく引き、二人寝室へと向かっていった。
✦
隣でスヤスヤと小さな寝息を立てて、さぞ気持ち良さそうに眠るフェリシアーノの頭を、菊は彼を起こさないように、優しく艶やかな髪を 撫でた。
「いっその事、このまま時間が止まってしまえばいいのに。」
菊の心にそんな言葉が思い浮かんだ。
その時、菊はもう自分は引き返せないところまで、フェリシアーノに溺れている事を理解してしまったのだ。
知らない方が幸せだったその事実に、菊はフェリシアーノを撫でる手をそっと離した。
否、私はまだ完全に溺れていないはず──
そんな希望を胸に、菊は物音を一切立てないように、身体中の全神経を集中させ、ゆっくりと寝室から玄関へと向かった。
金色にキラキラと輝くドアノブに、菊はゆっくりとドアノブを回すと、 目の前の扉から、
ガチャリと 音が鳴ると、菊は扉を力いっぱいに開けた。
その刹那的瞬間に広がった景色は、どこを見渡しても大量に生い茂る草木に、橙色の夕日がほんのりと赤くこの地を染めた。
菊は本能的に”無理だ”と絶望したが、もう食い下がることなど出来ないこの一生に一度の状況に、恐怖で足が竦んで動かなかった。
固唾を飲んで右足を外へ一歩進ませると、先程まで動かなかった両足が、一歩一歩、踏み締めるように前へと進んで行く。
そして、手につけていた腕時計を見てみると、秒針は6時30分を指していた。
視覚から得られる情報的に、現在の時刻は午前6時ではなく午後6時30分と言うことしか分からなかい。
だが、時間だけでも分かったことは大きいかもしれないが、兎に角、今は人が多い場所へ行って、最終目標は私の故郷へ帰ることだけである。
一番不安なのは、日本へ帰国する前にフェリシアーノに捕まり、あの場所へ連れ戻されてしまうと、せっかくのこの脱出が、無意味な行動になってしまうのは避けたい。
菊は体も心身も、もうとっくの昔に疲れ切っていたが、引きずる足に鞭を打ち、無理矢理足を前へ、前へと進ませた。
幸いにも、この場所は前にフェリシアーノに連れられて一緒に行った覚えがあると、私の記憶の断片がそう叫んでいる。
ここは、イタリアの首都、ヴェネチアから少し離れた場所。
北側に位置していたはずだから、このまま他の国へと逃亡してしまうのもいいかと思ったが、菊はパスポート含め身分証等を何も所持していないため、その計画は無慈悲にもゴミ箱へ放り投げられた。
ひとまず、初めての試みだが、ヒッチハイク行い、何とかして南イタリアの方、即ちロマーノの所へ向かいだした。
ここで菊にこれまでの人生史上一番の転機が訪れたのだ。事情を説明すると、 イタリアの人々は快くOKを出し車に乗せてくれたり、電車代を貰ったりと…その他にも色々な良いことをしてくれた。
そして、もう逃げ出してからどれぐらいの日付が経ったのだろうか──
✦
そして、菊はどれ程、この日を待ちわびたことか・・・武者震いで震える指でインターフォンを鳴らす。
すると、扉の中から、いつしか聞いたことのある声が聞こえ、菊はホッと胸を撫で下ろすと、ガチャリとドアノブが回る。
扉が開くと同時に、菊は目の前に立っている ロヴィーノに抱きつくと、ロヴィーノは何も言わずにただ静かに菊の頭を優しく撫でた。
「良かった・・・本当にどこに行ってたんだよ!」
ロヴィーノのオリーブ色の瞳から、大粒の涙が溢れた。 外だった為少し目立っている気がしたが、そんなこと、今は脳に無かった。
そこからは早かった。ロヴィーノ君にお願いして、お風呂に入り、洋服等もロヴィーノ君に貸して頂いたりと、彼には感謝してもしきれない程に尽くしてもらった。
「早速だが、菊、また後からアルフレッド達からも何か聞かれるかも知れないが・・・菊に何があったか話してくれるか?」
その瞬間、喉が言葉を話すことを拒んだ。 先程 風呂に入ったばかりなのに、冷や汗が額からダラダラと垂れていくあの不快感が私を襲った。
必死に何か言語化しようと口を動かすも、実際に自分から出る言葉は、全て二酸化炭素へと変わってしまう。
そんな菊の様子に、ロヴィーノは 「あー…すまん… 今はその…言いたくなかったら言わなくていいから、ただ── 否、なんでもねぇ。」と、言葉を濁しながら、菊に何か伝えたそうにしていた。
ロヴィーノのその言葉に、菊はこれまでのナニカが外れたかのか、彼はボロボロと涙を流し、嗚咽を漏らした。ロヴィーノは菊の近くへ寄ると、彼は赤子を泣き止ませるかのような優しさで背中をさすっていたが、菊にはその優しさに心が締め付けられた。
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それから数日後、ロヴィーノの家には大勢の|人が集まった。 勿論だが、その”大勢”の中にはフェリシアーノもいた。
彼は菊と目が合うと、ニッコリと微笑んだが、フェリシアーノの目の奥は笑っておらず、菊は悪寒のようなものを感じ、ブルブルと体を震わせた。
アルフレッドが口を開き、彼は開口一番で自分自身、その場にいる全員が思っているであろうことを真っ先に聞いた。
「菊、君本当に話せなかったのかい?」
その場の空気に耐えられず、菊は首を横へ振り、経緯を話そうと必死に口を動かしたが、結局、声は出ず、さらには口パクをして伝えようとしたが中々伝わらずじまいで、菊は諦めたような表情をして俯いた。
菊のその反応に、誰も何も言わずただただ無言で菊を心配そうな哀れんでいるような目で見つめていた。
その後、四方八方から沢山の質問や心配の言葉等を皆が真剣に話していたが、彼らが話している内容が全くといって菊の頭に入らず、まるでラジオ番組を垂れ流しで聞いているような感覚に、頭がボーッしてくる。
すると、ゆっくりと 世界がぼやけ始めた。
ぼやけた世界の中でも、時間はあっという間に過ぎ、聞き流している番組は、終了時刻が迫っているのか、先程とは打って変わった話題を切り出し、ゴールラインまでの道を作り始めたが、途中でノイズが走り、番組は突然終了してしまった。
「菊、聞いてるあるか──」
中国こと王耀が問いかけると共に、菊の顔を横から覗き込もうとすると、今まで黙っていたフェリシアーノが遮るように声を上げた。
「そういや、菊は何で話せなくなっちゃったんだっけ?ドラマとかである何か菊のトラウマを思い出したのかなぁ…」
純粋な疑問のように話しながら、フラッと菊の近くへやって来たフェリシアーノは、眉を八の字にして、菊に「大丈夫だよ」と言い聞かせ、自分の元へ帰らせるように、糸を優しく手繰り寄せるかのような暗示をした。
フェリシアーノの トラウマ と言う言葉に引っかかった耀は、唇を噛み締め、一言も言わず、後方へ下がった。
菊の所持品はイタリア中探したが、結局どこにも見当たらず、自国へ帰る為に必要なパスポートが無いため、菊はパスポートを再発行することになった。
再発行していその間は、菊本人の意思を尊重した結果、フェリシアーノ・ヴァルガスの家へ滞在する事が決まった。
フェリシアーノは心良くOKすると、二人は颯爽と北イタリアへと向かって行った。
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「Bentornato、菊」
✦
END