──彼の家へ帰り着くなり、迎えに出た華さんが、「……まぁ!」と、大きな声を上げた。
「陽介様、髭を剃られたんですか!?」
そのただならないような雰囲気に、ふと『──君に言われたのもあるが、それだけではないからな』と、他にわけがあるようにも彼が話していたことが思い出された。
「それでは、もしかして……」
と、華さんが意味ありげに言葉を切って、彼の顔を窺う。
「ああ、そういうことだ」
蓮水さんが頷いて返すと、
「まぁ、なんてことでしょう……。本当に、よかったですね……」
華さんがじわりと目に涙を滲ませて、手で目頭を抑えた。
「あの、華さん、どうして泣かれて……」
ふいの展開について行けずに、ひとり立ちすくむことしかできないでいると、
「……私が髭を剃ったら、その時は愛する人への想いを固める時だからと、前々から言っていたんだよ」
そう彼の口から伝えられて、「まさか、そんな理由が……」と、声を詰まらせた。
「ずっと剃れずにいた髭を、もう剃ることもないだろうとも思っていたが、ようやく誓いを立てることができた。君のおかげで……」
「私のおかげだなんて……」
火照る頬に両手を当ててうつむくと、彼が黙って私の肩を抱いて、あやすように小さく揺すぶってくれた。
「御二人共、ようございましたね」
涙ながらの華さんの心からの言葉が、胸にじんと沁みて広がるようだった……。
コメント
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本当に、ようございました😊