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かんな
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寿命㌫(主) 🔮🖤ᩚ
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――コンコン
ドアをノックする音が聞こえて、イソトマは顔を上げた。
「どうぞ」
扉を開けて入ってきたのは、護衛騎士のディルクだった。
「転んで頭を強打したと聞いた」
ディルクが淡々と質問する。何というか、声が冷ややかだ。
表情も硬くて、お見舞いに来た人の顔ではない。
(そうだった。ディルクもイソトマのこと、嫌いなんだった)
イソトマ付きの護衛騎士だが、本当なら王立騎士団でも上位の実力を誇る黒騎士だ。
父親が息子のためにと無理矢理引き抜いて護衛に付けた。
アルシュタイン家の当主の鶴の一声に、誰も逆らえなかったのだろう。
ディルクにとって今の地位は不本意以外の何者でもない。
(その上、僕はディルクに酷いこととか無茶ばっかり言うから、余計に嫌われてる。推しなのに、悲しい)
カップリングの推しはルシリリだが、キャラ推しはディルクだ。
寡黙だけど態度で見せる優しさが魅力のキャラだ。
(硬派キャラ、好きなのになぁ)
本当に悲しくなってきた。
「俺が席を外した隙の事故とはいえ、護衛として至らなかった。申し訳ない」
ディルクが深々と頭を下げた。
「え……えぇ? やめてよ。僕が勝手に転んだだけなのに。その場にいなければ、助けられなくて当然だよ。気にしないで」
頭を上げてもらおうと、かなり慌てて言い訳した。
「だから、頭を上げてよ」
ディルクの肩を撫でる。ディルクがゆっくりと頭を上げた。
その顔が、驚きに染まっている。
「今、何と……?」
驚きすぎて、もはや無表情だ。イソトマはさらに慌てた。
(そうだよね! イソトマはこんな風に言わないよね!)
何とか、イソトマが言いそうな言葉を考える。
(前世を思い出すまで僕はイソトマとして生きてたんだから、体に染みついているはず)
プルプル震える指でディルクをさした。
「ぼ、僕を一人に、するなんて、なんて……ダメな奴だ。使えない……」
口に出すのが辛くなって、途中でやめた。
(こんな言葉、どうして平気に言えてたんだろう)
悲しい気持ちが、どっと増した。
「そうだな、俺は使えない。父君に頼んで、解雇してもらって構わない」
ディルクの言葉に、ピンときた。
(もしかして、解雇して欲しくて、わざと離れたの? そんなに僕のこと、嫌いなんだ)
当然と言えば、当然だ。ディルクからしたら、さっさと解雇してもらって王立騎士団に戻りたいだろう。
(イソトマが悪い。それは間違いない。ディルクの気持ちも、当然だ。わかっているけど)
じわりと、涙が瞳を濡らした。
ディルクがビクリと身を震わした。
「ごめん、何でもないから。目にゴミが入っただけだから」
ごしごしと目を擦る。息を吸って、何とか涙を止めた。
「お父様に、王立騎士団に戻してもらえるように話してみるよ。こんな仕事、させてごめんね」
「そういうつもりで言ったわけではない」
ディルクが、気まずそうにしている。
イソトマは、首を横に振った。
「いいんだ。ディルクは僕の護衛なんてつまらない仕事で収まる騎士じゃない。実力に見合う場所に行くべきだよ」
微笑みかけたら、ディルクがポカンと口を開けていた。
「ディルク? どうしたの?」
「……いや、その。打ち所が、悪かったんじゃないのか?」
言いづらそうに、ディルクが目を逸らした。
(あぁ! またやっちゃった! 高飛車にしてないといけないのに)
気持ちばかりが慌てるが、どうすればいいかわからない。
ディルクの手が伸びてきて、イソトマの頭を撫でた。後頭部のたんこぶが、ちくっと痛んだ。
「いた……」
「まだ腫れているようだ。休んでいろ」
ディルクに促されて、イソトマは横になった。
「部屋の外にいる。出る時は、声をかけろ」
そう言い残して、ディルクが部屋を出て行った。
パタンと閉まった扉を見詰める。
「……ちょっとだけ、優しかったな」
推しに優しくされて、少しだけ嬉しくなった。
この先、イソトマとしてどう生きるべきか、思い悩んだ。
コメント
1件
第3話、読みました〜! ディルクがお見舞いに来たのに冷たい態度で、イソトマが「推しなのに悲しい」って思うとこ、すごく切なかった🥀でも最後に頭撫でてくれたときの「ちょっとだけ優しかったな」がもう…!推しにちょっと優しくされるだけでこんなに嬉しくなるの、すごくわかる気がする…。 イソトマが「解雇してあげる」って言ったときのディルクの驚き方とか、今後の関係性がどう変わっていくのか気になるな〜