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第8話です。今回も特に話が進むわけではありません。前回同様気長に見てくだされば嬉しいです。
ではどうぞ
第8話【嘘つき者は】
あまりの声の大きさに身体が海老のように跳ね、耳鳴りがする耳を抑えながら振り返る。すると王力と英豪は前に手を重ね、頭を垂れており、その前には舞台のような場があり、その上で大きな玉座に座っている者こそが門主なのだろう。
「お父上、遅くなりすみません」
「構わぬ、連れて来てくれただけでも充分だ。 」
門主の視線が英豪から烨霖に向けられ、烨霖も慌てて前に手を重ねて深く会釈する。
「門主様にご挨拶申し上げます。」
「そうかしこまる必要はない、君には感謝しているんだ。」
「、、、え?」
思いもよらない言葉を返され、思わず腑抜けた声が口から零れ、門主を見上げる。
「君があの山の瘴気を解決してくれたのだろう?英豪から全て聞いた。」
「高度な術で門弟を救ったという事も、な」
含みのあるその言い方に身体が強張り、無意識に顔を伏せる。
「そうですか、、、ですが何故私をお呼びしたんでしょうか、、、?」
「ははっ、君はどう考えてるんだ?」
「私が測り得ることが出来るものとは思っておりません、、、」
先程から門主の口調や表情の節々には烨霖の反応を試しているような雰囲気があり、1つでも穴を見せれば恐らく絶対逃がさないだろう。
門主は己の髭を軽く撫でながらこちらをじっと見つめる。
「ふむ、、私は君とは何の面識もないが、、、確かに、噂に聞く傲慢な態度ではないな、、」
「、、、私は記憶をなくしておりますが、過去の自分の事を聞き、己を恥じております。」
「だからこの様に、前の己を捨て、今の自分をよく作っていきたいのです」
「、、、作っていきたい、か、、、そうか、、、」
「それはいい心掛けだな、」
「ならば、今の君の志でも聞こうか」
門主の質問の意図が掴めず首を傾げる。その様子に門主が軽い笑い声をあげる。
「深く考えなくていい、私は記憶をなくした痴れ者がどう変わるのか知りたいだけだ」
その声には優しさが含まれていた。普段なら特に何も思わないが今の状況ではその優しい声色も訝しげに思えてしまう。
烨霖は少し思案し、口を開ける。
「、、、私の志はまだ未熟ですが今まで迷惑を掛けていた方々に誠心誠意償いたい と思います」
「、、、そうか、随分と思い上がりな」
「えっ? 」
門主のそれは耳を澄ませていないと聞こえない程の大きさで、先程まで身体全体を研ぎ澄まし、警戒していた烨霖の耳にはしっかりと聞こえていた。
思わず顔を上げて、門主を見詰めると門主の表情は先程と同じ笑みをたたえていたがその笑みはゾッとする程の憎悪を感じた。
「ははっ、怖がらせたな、ところで 君が使った術の事のことだが 」
「はぁ、、、」
門主の烨霖へ向ける視線はまるで自分の養分となる獲物を狙う獣の視線そのものだった。その視線に妙に既視感があり、眉間が歪む。
「どうかそれをご教授願いたくてね。」
「さぁ〜?すみません、その知りたい術がどんなものかさっぱり分からないですね、記憶が曖昧に、、、」
明らさまな言い訳に門主は更に目を細め笑みを深め、無造作に手を振る。
「ははっ、まぁいい、君の話を真面目に聞くつもりはさらさらないからね」
「それはどう言う、、、」
門主は烨霖の質問には答えず、王力に手を振り合図する。それに応じた王力はこちらに近付き、1つの剣を差し出す。
「この剣の名は【说谎裁】」
「その名の通り、嘘つき者を裁くという意味でね。」
「その剣に相手の血を滴らせ、相手の身体の何処かに触れさせ、尋問をし、 その者が嘘をついていれば剣は赤く光り出す、黙秘をすれば剣自ら徐々にその者の皮膚を削るのだ。」
わざわざ門主から説明をされずとも烨霖はその剣の事を隅々まで知っていた。なぜなら、この剣を作ったのは烨霖自身だからだ!!前世、烨霖は門主に口が固く嘘つきな悪人への拷問法を編み出すように命令を与えられ、嫌々しながら作ったのだ。拷問法としては門主からは大分褒められたがこういう物を作るのが好きではない烨霖としては微妙な気持ちだった事をよく覚えている。
だが烨霖もまさか100年も経った今でもこの器具が活用されているとは思っておらず、過去の自分が作った者に自分の首を締められる結果となり、頭を痛める。
だがそんな烨霖を察しているのかいないのか、門主は言葉を続ける。
「さぁ、お前の言葉に、剣はどれだけ反応するだろうか、、、王力、始めろ」
王力はそれに頷き、烨霖に手を伸ばす。だが烨霖は反射的にその手を避け、またしても王力は手を伸ばし、また避ける。
何か隠し事をしている充分な証明だ。思っていた通り、門主は即座にそこに漬け込む。
「なんでそんなに逃げ回るんだ?なにかやましい事が?」
烨霖はまるで怯えたようにわざとらしく身体を震わせ、弱い物乞いのように逃げ出す。
「いきなりこんな所まで連れてこられ挙句の果てに斬られるんですよ!?逃げるのは当たり前じゃないですか!!」
だが、王力は追いかけようとはせずに余裕の笑みを浮かべながらその場で立ち止まり、己の手を後ろに引く。するとどういう事だろうか、烨霖の手が王力の方へと引っ張られ、思わず目を見張る。
すると王力の手から烨霖の手へと繋がれた1本の金色の縄が徐々に浮かび上がる。
「これは、、、」
「諦めてこっちに来い、君に逃げ道はないんだ」
「こんな物いつの間に、、、」
その瞬間、烨霖の頭で階段へ登っていた時にした握手の風景が思い起こされる。
「あの時か、、、」
「ほら、来るんだ」
まるで警戒している猫に呼び掛けるかのような言い方に少し不遜に感じる。
烨霖が覚悟を決め、1歩踏み出した時、奥で今まで黙って傍観していた英豪が声をあげる。
「おい!!焦れったいぞ!俺に貸せ!! 」
英豪は荒々しく王力が持っていた剣を奪い、門主の方を向く。
「父上、このままでは何も進みません!!俺が此奴の全てを暴いてみせます!!」
それを聞いた父上は数秒考えた後、ため息を吐き、ヤンチャな子を窘めるような目を向ける。
「まぁいい、ならさっさとしなさい」
「ありがとうございます」
許しを貰った英豪は大股でこちらに近付く。
「おい、この紐を切れるようにしろ」
まるで鬱陶しいものを見るように目を鋭くさせ、繋がっている紐を剣で叩く。
「なぜ?逃げるかも」
「逃げたら俺が斬る」
そのまま暫く睨み合っていたが英豪の絶対に引き下がらないという念でも感じたのか降参だとでも言うように王力は紐に注ぎ込む霊力の量を減らし、それに乗じて紐も柔らかくなる。
即座に紐を断ち切った英豪はこちらに向き直り、更にこちらへ近付く、手を少しでも伸ばせば当たってしまいそうな距離だ。烨霖はどうにか逃げようとするが生憎後ろは鉄壁の重たい門であり、更にここまで近くに来られては逃げる事など出来ない。
「おい、手首を出せ」
「、、、あぁ、、、」
烨霖は諦めてゆっくりと手首を差し出し、次に襲ってくるであろう痛みに身構え、目を閉じる。だがいくら待っても来ない痛みに、烨霖はゆっくりと目を開けると己の手首と同時に英豪の手首が見え、そこには己が刻まれるはずだった傷が刻まれていた。極小の傷だがそこからは少量の血が流れ、剣に滴り、剣が二人の間で宙に浮く。門の場所は門主からは勿論王力からも随分離れており、それに加え英豪は背中で手元を隠していたため、恐らく2人にはこの事はバレていないだろう。
「なぜ、、、」
そんな烨霖の声を遮るように英豪は腹から思いきと声を張り上げる。
「お前に問う!!!お前の名はなんだ!?」
英豪の気迫に押されて烨霖は慌てて答える。
「わ、私の名は李・梓豪です!!」
皆の視線が一斉に剣へと向く。だが、そもそも血を滴らせた当人が質問をされていないため、剣が反応を見せる事はない。
「お前の使ったあの術は、なんだ?」
「え、と、、、、あ、あれは、瘴気を浄化する術です!!この術は有名だと思いますが、、、!!」
またしても反応はない。
「お前は、本当に記憶をなくしているのか?」
「嗚呼!!」
またしても剣が反応することは無い。
それまでの結果を見て、門主は期待外れだとでも言うように明らさまな深いため息をつく。
「父上!!これ以上何か?」
「、、、、いや、もういい、大丈夫だ」
そう言われた英豪は剣に付着した血を拭い取り、王力へ荒々しく投げ返す。
「ははっ、すまなかったな、わざわざここまで来てもらって。」
門主はすぐに薄っぺらい笑顔を貼り付け、髭を撫でる。だが、瞳からはまだ疑いの色が消えていない所を見るに、まだ諦めてはいないようだった。
「王力は残って英豪はその者を送り届けなさい。」
「え?」
「はい、父上」
指示を受けた英豪は即座に重い 門を両手で力いっぱい押し開けた。
第8話【完】
ここまで見て下さりありがとうございました。 次回は若君の好感度が上がると思います。
ではまた次回
コメント
1件
うわ、第8話読んだよ…! 烨霖、自分の作った嘘発見器に追い詰められるとか運命の皮肉すぎるし、英豪が代わりに自分を傷つけてかばったシーン、本当に胸熱だった…! 門主の笑顔の裏の冷たさもやばくて、烨霖がずっと警戒してる感じがヒリヒリ伝わってきた。次回、若君の好感度上がるの楽しみにしてます!
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