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中日
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「……どうして、こんなに優しいんですか」
肩で息をしながら、日本はぽつりと呟いた
頬は紅潮し、睫毛には涙の粒が残っていた
けれど、その目はもう、拒絶ではなかった
ただ、静かに揺れていた
心の奥で、何かが崩れて、溶けていた
「優しい? 違うアルよ」
「俺は……君が欲しかっただけアル」
中国は、日本の頬を両手で包む
その掌は熱く、鼓動のように脈を打っていた
「最初は、支配したかっただけアル。無理やりでも、従わせたかった……」
「でも……君が涙を我慢して、声を殺して、それでも“逃げなかった”時……俺の方が、負けてたアル」
日本の唇が震える
それが、熱のせいか、言葉の重みかは、もう分からなかった
「そんな顔……見ないでください」
「やめるアルか?」
「……やめてほしいなんて、一度も言ってないでしょう」
その瞬間――中国の腕が、日本の身体を強く引き寄せた
額と額が触れ合い、唇と唇が、今度は静かに重なった
舌も、熱も、息も、優しく絡んで
それは、欲望でも征服でもない“キス”だった
「……君の中で咲いた声、もう忘れられないアル」
「だから……これからも、何度でも、聞かせてほしいアル」
日本は、何も言わなかった
ただ、目を閉じて、頷いた
もう理性も、役職も、国という名前すらもいらない
この夜を境に、彼らは恋をした
支配と従属の先にあった、熱くて、静かで、確かなもの――
愛を、認めてしまった
「月の下に咲く、君の声」
完結致します。
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