──────いえもん視点──────
「…まあ、いいです…よ?」
ぜんさんの協力要請に俺は応えることにした。応えるまでずっとせがまれそうだったからそれならさっさと応答した方がいいだろう。そう、考えての事だったが、ぜんさんは号泣しながら俺に抱きつく。
「あ” り” が” と” う”!!」
俺のパーカーに鼻水やら涙やらがぐっちゃぐちゃに混じった液体が付着する。普通に拒否反応が出たので引き離そうとするが、いかんせん力が強い。こんなに愛らしい見た目をしていても中身は人外なのだ。そう、認識させられた。…今はただの泣きじゃくっている子供にしか見えないが。
「あ、いえもんさん」
めめさんが俺に話しかけてくる。嫌な予感がするが、耳を傾けない訳にもいかない。
「生命力吸われすぎると寿命縮みますので。お気を付けて!」
「…」
俺は、軽率にOKした過去の自分をぶん殴りに行きたくなった。
「話を戻しましょうか。」
「ぽれにとっては戻せる内容じゃない…」
めめさんがそう仕切り直すが、ぜんさんは自分が死んでいるというショックを時間差で感じたのか、ショボンと耳を垂れさせ椅子の上でガックリと頭を下げている。いつの間にか俺からは離れていた。
「…これから、本当にどうします?」
めめさんの一言はその場の空気を壊すのには十分すぎるほどの重みのある言葉だった。これから。
そんなこと、俺は考えてもいなかった。明日も、明後日も。俺は生き続けられるなんて思っていなかった。いつ、死ぬかも分からないあの生死の狭間。まともな教育を受けれない環境。腐ってる食べ物にすら感謝しながら食べたあの日。
めめさんに拾われてから俺の人生は天地がひっくり返るほどの逆転を見せた。
俺は、英才教育を受けた。人の言葉を理解し、書けるようになり、相手が何を考えているのか、と考えることが出来るようになった。
剣を振るえるようになった。銃を扱えるようになった。槍を使えるようになった。様々な武器を扱えるようになった。自分を守る手段を手に入れた。弱い能力者や、人外なら殺せるようになった。俺は、人間に負けることが無くなった。
感情を理解できるようになった。なんで悲しいのか、嬉しいのか、笑い方。人間にとって必要不可欠の感情を理解できるようになれた。人生に色が生まれたのだ。
世界を知った。俺は荒れ果てた地で育った。倒壊したビルが並ぶ、昔発展しただろう元都市で育った。でも、そこだけが全てではなかった。世界は広かった。
人外を知った。怖くて残酷な人外だけではない。優しく、人間にすら情をわかすお人好しがいることを知った。
仲間を知った。自分のことよりも他人を優先して動いたり、時にはからかい、時には共に笑って、時には戦って。自分より大切なものがあった。
絶望を知った。裏切りという人を簡単に信じてはいけないという教訓。幸せから絶望へと転落したあの瞬間。脳が真っ白になる瞬間。
明日を知った。明日も、明後日も、その先も。生きてていいという事実をしれた。生きる権利があることを知れた。光だった。
神とか言うやつなんかに。俺の日常を。幸せを。明日を。奪われたくなかった。1度手に入れた幸せを失いたくはなかった。理不尽に抗いたかった。だから、俺の決意はめめさんと会った時から決まっていたのかもしれない。
「生きましょう。俺達で。」
俺の一言にみんなが驚いた様にこっちを見てくる。俺は基本的に最初に喋る柄でもなく、こんなに声を出すのも中々にないからだった。でも、俺は、それを差し引いても言いたいことが。訴えたいことがあった。
「理不尽に抗いましょう。」
大きな声を出すことは出来ない。けれど、力強く言うことは出来る。俺がそう言い切ると、ルカさんが笑みを浮かべながら
「そのセリフ、まるで勇者みたいですねw!」
笑っている、だが、その目からは俺と同じく決意した目だった。勇者、というセリフを俺は否定する。
「俺は勇者になんかなれません。なんなら、むしろ序盤に出てくる程度の悪役でしかないです。」
そこまで言いきってから、俺は深く息を吸う。そして、言い切る。
「でも、例え悪役でも。理不尽に抗わないのは悪役にすらなれないんです。」
俺の、精一杯の気持ちだった。普段出さない声に所々かすれ声になってしまったが、そんなことはどうでもよかった。
意見の大切さ。自身の主張。それもまた、俺の学んだことの一つだろう。もう二度と後悔はしたくなかった。
「…つまり、いえもんさん。あなた、神に反逆するってことですか?」
めめさんがそう、確認してくる。しかし、その顔にはニヤニヤとしたワクワクとした笑みを浮かべていた。
めめさんだけでは無い。ラテさんも、菓子さんも、ルカさんも、八幡さんも、ぜんさんも、みぞれさんだって。そう、このめめ村という集団はイカれてる。
だって、神に反逆するという大罪にワクワクしているのだから。
ここで切ります!ほ、ほんとに完結近くなってきました…!!そろそろリメイクのアイコンを作らねば…!!っと、なっております。
まだ完結はしてませんが、なんか伝説を作っている気分ですね。mmmrのストーリーの中で最長記録な気がします。それに、ハート数もサラッとえげつない数行ってますし…。凄くないですか(自画自賛)?ここまで来たら誰にも来せない記録を作りたいですね!
それでは!おつはる!
コメント
6件
タイトル回収やん...
いえもんさんそういえば奴隷出身だったわね…忘れかけてたわ