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ライブ翌日。とても清々しい朝だった。小鳥のさえずりが聞こえ、空も青い。リビングに行くと、母さんがテレビでニュースを見ていた。
その時だった。
『今朝未明、トランスジェンダーアイドルの古城カレンさんが、東京都渋谷区の〇〇通りで死亡しているのが見つかりました。』
「・・・は?」
僕は全身が凍ったかのように寒気がし、全身が石にでもなったみたいに動けなくなった。ニュースキャスターの話している内容も、テレビに表示された文字も、頭に入ってこなかった。
しばらくして、もうどれほど立ち尽くしていたのかわからないが、いつの間にか母さんは仕事に行ったみたいだった。深く息を吸って、吐いて、それを数回繰り返して、まずは机の上に置いてある今日の朝刊を手に取る。見出しはすべて読んだが、彼女に関する記事はどこにもない。もしかしたらさっきのニュースは夢だったのではないかとも思ったが、新聞の内容が決まってから死んだ可能性もあるため、今度はテレビをつける。そもそもニュースをやっていなかった。次に、彼女のSNSを確認する。
「ライブ楽しかった。最高の誕生日だったよ。来てくれたみんなありがとう♡」
それが彼女の最新の投稿だっだ。
「どういたしまして。ニュースで古城さんが死亡したと聞いたんですが、夢だったんですよね?」
返信が来てほしいと願いながら僕は文字を打つ。左胸の奥で鼓動がドクン、ドクン、と大きくなるのを感じながら僕は返信した。
数時間後の夕刊には「トランスジェンダーアイドル死亡事故」と書いてあった。工事現場の鉄柱が落ちてきて、彼女のみぞおちを貫いたらしい。
Twitterはライブ終了から約ニ時間後の投稿が最後だった。ユーチューブも、何も更新されていない。ショート動画も、配信も、Twitterも何も更新されていない。無論、僕の送ったメールの返信も来ていない。
テレビをつけるとニュースがやっていて、彼女の顔写真が映っていた。ほぼ反射的に僕は電源ボタンをもう一度押した。