episode12 私のために
ブライドside
「やっぱこいつか……」
任務用の端末が鳴ったので所夜と見に来たら案の定また映矢輝がウイルスをばらまいていた。
たが、以前戦った時とは別人のようだ。
以前は私が駆けつけた時は楽しそうにウイルスをばらまいていたのに対し、今では一言も喋らない。真剣にやっている様子が伺える。
目やチョーカーの色は依然変わらないまま。
「おい、映矢輝。また何やってんだお前。」
こちらが口を開くと、ようやくあいつは喋った。
「あれ、えーちゃんと千ちゃんだ。もしかしてまた止めに来たの?」
その通りだよと鼻で笑い、武器を手に持ち身構える。
映矢輝も同じく、魔導書を取りだしてこちらを睨む。
所夜は私より前に立ち、いつもより真剣に身構える。
なんだコイツ。
「まだ邪魔をするなら、生きて返さない!!」
映矢輝はそういい、魔導書を片手にもち片手を大きく上にあげる。
「金を操縷魔砲!!」
その瞬間、鎖や針、刃や針金などが次々にこちらへと向かってくる
「あなた一人で私達を殺せるとでも?」
あやべ、なんか今日こいつスイッチ入ってんな。
「大空間縮小異変」
所夜が追いついた顔でそう言い放つと、映矢輝を半円型のドームのようなものが囲う。
その間に、金属達は私が対処。全て塵になった。
ふと気になり映矢輝の方を見る。
彼女は驚いたような悲しいような顔をして咄嗟に武器を魔導書から斧に持ち替える。
が、時すでに遅し。ドームは目玉模様に成り代わり、一斉に映矢輝を見る。
所夜はやったかと言うような顔でじっと目玉を見つめる。
ところが、映矢輝は口角をニッと上げ、斧でドームを切り刻んだ。
ドーム状の空間はパリン、と音を立ててガラスのように粉々になった。
「こんな物であたしは殺せないよ!!」
「やりますね、これを破った相手は200年ぶりです!!」
「おいしれっとそういう事言うな」
「え?なんのことでしょう」
「ちっ、めんどくせえ奴」
「えー酷いです!」
「あーわかったわかった」
「適当ですね。もっと真剣に謝ってください」
「大体お前なぁ……!」
そんなやり取りをしていると、映矢輝はなんとも言えない表情で斧をぎゅっと握りしめる
「こっちに集中してよ!!」
「もー!戦闘中にそんな会話してるなんて舐められてるとしか思えない!」
「あたしが地獄の神だってこと、2人なら調べて来てるでしょ!?」
かなりご立腹なようだ。
だが、最初に会った雰囲気よりかは幾分も前のようになっている。
「一応あたし、敵なんだけどなぁ。舐め腐ってもらっちゃあ困るんだよね。」
頬を膨らませ、いかにもぷくーっと言う効果音が似合う顔だ。
てか、やっぱりこいつ100年以上も生きてないだろ。子供にしか思えない。
「……そろそろほんとの本気出すね。子供っぽいって思われるの、すごい嫌なの。」
おい、こいつ私の心読んだぞ。
どうなってんだ。
「起死回生 封印されし大魔法使い!!」
うわ、やっべ。
これ結構逃げなきゃやばいやつだ。
周りに生えた木は全て枯れ果て、金属で出来た愛武器は何故か錆びてねじ曲がっていた。
近くの湖の水は全てなくなり、太陽は隠れる。
土はぬかるみ、まるで液体のように溶け始める。
それら全てから黒いエネルギーのようなもの物が放出され、映矢輝の周りにあつまる。
またしても映矢輝はニヤリと笑い、こう言った。
「この世界のエネルギー源は、全て我が手に落ちたも同然!負の力でパパとあたしが世界を征服する!!」
土がぬかるんだせいで、上手く逃げようにも逃げることができない。
武器を使うにも、ねじ曲がったせいでもう使い物にならない。
クソ、なんて力だよこいつ!!
「ブライドっ!伏せてください!」
所夜side
映矢輝さん、私を怒らせましたね
少しこれは頭に来ましたよ。世界のエネルギーを全て負に変えるなんて大層な事考えるじゃないですか。
あの子の力がこれ程までに凄まじいとは予想していなかった。既に建物まで魔術が行き届こうとしている。
世界征服?そんな事させる訳ないじゃないですか。
あなたも私をあまり舐めない方が良いですよ。
この空間は、どんなものでも出せる4次○ポケットのようなもの。
あなたの魔術を止めることくらい、簡単に出来るんですよ!!
「ブライドっ!伏せてください!」
大丈夫。きっとブライドには当たらない。
「えー、まもなく電車が参ります。ご注意ください。」
「空間 快速列車通行空間!!」
ブライドside
おいおいおい、そこ本気でやり合うの聞いてなって。
映矢輝はどんどん街腐敗させてくし、所夜は空間から電車なるものを出して攻撃を仕掛けている。
いや、デカすぎだろ空間。電車なんて出せるものじゃねえよ。
が、さすがは映矢輝。負のエネルギーを出して対抗した。
このままじゃ建物が崩れて私が死ぬのでとりあえず逃げよう。
建物は恐らくみるからに廃墟だから人命救助の対応は大丈夫だろう。
にしても、相変わらず2人ともすげぇ能力だな。
ま、わたしだけ動かない訳には行かねぇしな。
一役買ってやるか。
映矢輝side
なんなの
なんなんのよこの能力!!
電車を出して戦うなんて正気じゃない!!
しかも、この能力は、、!
魔力じゃない、妖力じゃない、なんの気配も感じれない。
どうして?私の気配探知はどんな物でもさぐれるのに!!
こいつ、こいつの力は一体どこから来てるってゆうのよ!!!
でも大丈夫。今なら負の力が……!
「嘘……!」
ブライド・エモーション、!?
こいつ、ただの人間のはずなのに私の負の力を相手にしているのかよ!!
このままだと所夜千夜にトドメを刺される、!
その時、耳飾りからパパの声が聞こえた。
「映矢輝。また油断したのか?」
思わず情けない声が出る。だって怖いんだもん。
「聞いてるんだ。答えなさい。」
なんて言えばいいんだろう。どう返せばいい?
「答えろと言ってるんだ!さっさと答えろ!!」
油断なんてしてない。最初から様子を見るつもりだっただけなの。
「私の力を分け与えたと言うのに、また失敗するのか?」
違う、違うよ。こいツら2対1であたしを攻めたんだよ。あたし頑張ったの。慣れない魔法いっぱイ使って、大妖怪の攻撃に耐えて、そレで、それデ、……!
「言い訳か?」
違うよ、違うの。信じてパパ!!
「おや、すまないな。映矢輝。お前はほんとうに可哀想な子だ。」
いいんだよ。パパは悪くない。悪いノはゼンブあいつラだもンネ。
「私の力をもう少し分けよう。そしたらこの世界はお前とパパの物だ。」
アリがとう。パパ。あたし、こんドこソコイツらをぶっ潰す。
ブライドside
映矢輝からの攻撃が止まったかと思えば、何やら嫌な気配がする。
また雰囲気が変わったような、力が増したようなそんな気がした。
すると、映矢輝は光の速度で動き、一瞬で所夜の後ろへと回った。
手には斧を持ち、睨むように所夜を見る。
この速度には流石の所夜も驚いたようだ。
が、すかさず私が間に武器を挟み攻撃を防ぐ。
足で蹴飛ばそうとすると、逆に足を掴まれてこちらが投げ飛ばされた。
木に背中を強打したようで、ヒリヒリと痛む。
羽織は破れ、背中からは赤色が滲み出ている。
幸い、軽く受け身を取ったのでまだ動ける。この程度ではグルカ兵団兵長は死なねぇよ!
所夜side
ブライドが投げ飛ばされた。この少女にそんな力は一体どこにあるのだ。
魔法を唱えた様子はなかった。単純に力が急激に増したようだ。
ブライドが無事なのを確認し、鎌をしっかり手に持つ。
映矢輝さんはものすごい速さで斧で切り掛る。まるで兎を狩る獅子のような目つきで。
なんとか防御するが、一方的に押されている。
空間を出せれば良いのだが、そんな隙は生まれない。
でも、最初は正確にこちらに当ててくる勢いだったのに今は一心不乱に斧を振り回すだけ。
息が荒くなっており、必死のような焦りのような。そんな感じがした。
いつの間にかこちらが空間を開けるくらいの隙が何度も生まれ、なんとか五分五分に持ち越した。
「はぁっ、はぁっ、!」
あ、今行ける。トドメをさせる。
「お願いだからっ、!」
何か言おうとしてる?まぁいい。後でたっぷり……
「私の為に死んでよぉッ!!!」
その時、私は映矢輝さんを切ろうとする刃を止めてしまった。
だって、そう悲痛に訴える彼女の目には、涙がこぼれていたのだから。
コメント
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怒涛のような展開に引き込まれました!✨壮大で迫力のある戦い、すごく良かったです!!✨