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「…まずい…絶対に、まずいって……」
ぶつぶつとぼやきながら、シャワーを頭からかぶった。
あの無意識な彼の色香をどうにかしてくれないと、こっちの方がどうにかなっちゃいそうで。
色っぽいのはどうか控え目にしてもらえたらと思いつつ、頭の中でチラつくさっきの半裸のビジュアルを振り払うつもりで、思いっきり水を全開にした。
すると当たり前だけれど、シャワーヘッドから冷水が勢いよく噴き出してきて、
「……冷たっ!」
思わず声を上げて、シャワーから飛びのいた。
いくら煩悩を払うからって滝行じゃないんだしと、寒さにぶるりと身震いをして早々にバスルームを出ると、服を着込んだ。
部屋に戻ると、既に蓮水さんはワイシャツを着てネクタイを結んでいた。
あのネクタイを、昨夜は手ほどきで……。
ベッドの上で彼の息づかいまで感じそうなほど密着した場面が浮かぶと、せっかく振り払ったはずの煩悩に、また頭の中が占められる羽目になってしまった……。
部屋を出て、「朝食をとって行かないか」という彼の後について、ホテル内のレストランを訪れた──。
クラブハウスサンドイッチを頬張る私の向かいで、蓮水さんはフレンチトーストを口にしていて、
こないだもショートケーキを食べられていたけれど、もしかして甘いもの好きなんだろうかと、「スイーツがお好きなんですか?」と、尋ねてみた。
「ああ、そうなんだ。スイーツには、割りと目がなくてな」
「そうなんですね」本当に美味しそうに食べる表情に、見ているこっちまで顔がほころんできそうで、
スーツをかっこ良く着こなしたり、かと思えば急に酔っ払って色っぽくなっちゃったり、スイーツが意外と好きだったり……と、彼のいろんな一面を見せられる度に、ますます好きになってしまうのを感じさせられるみたいだった。
──朝食を済ませると、
「一度、私の家に帰ってもいいだろうか?」
そう提案をされて、
「はい、お送りします」
と、様々なことのあったホテルを後にした──。