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Chapter3 本物のジョーカーは誰か
「……………え……?」
僕は唖然と口をあけた。
「どこ探してもいないんだ。昨日は記憶が戻っていなかったからあまりよく見ていなかったが、エースらしき人物は入学式にもいなかった!」
「でもエースは入学式はエペルと抜けたんじゃ、」
「それだけならよかった…。だけど、ハーツラビュル寮にもいないんだ。俺の部屋にも、いない。」
「そんな…」
デュースはエースとは同じ部屋で、ルームメイトだ。この世界ではもしかしたらエースが皆に姿を見せていないだけではないかと思ったが、寮長全員でエースの名前を探したところ、どこにも存在しなかったという。
「うそ…この世界には、エースは居ないってこと………?」
絶望した僕の顔を見て、デュースが辛そうな表情を浮かべる。
「僕も…何が何だか、……。…!そういえば、グリムは記憶はあるのか?」
「え、あ、!グリム?それがなくて、」
グリムの方を向く。
デュースもつられて同じ方向を向いた。
相変わらず僕達が話している間も掃除もせず、メインストリートの端の方で壁に寄りかかって昼寝をしている。
まあでも勝手にどこかに行かれるよりはマシだが…。
僕とデュースはその姿を見つめて苦笑する。
「やっぱ、グリムはグリムだな」
「ほんとにね」
「でも、こんなグリムがオーバーブロットを…、」
デュースの言葉に胸がギュッと引き締まる。
グリムのオーバーブロットの原因は何なのだろうか。
僕が元の世界に帰り、置いていかれたことが辛かったからではない気がする。
グリムかオーバーブロットする=ツイステッドワンダーランドが崩壊する。学園長達はこの世界の崩壊を阻止するためにループを繰り返している。つまり、これまで99回もループしても毎回グリムがオーバーブロットし、崩壊を阻止できなかっというわけだ。
明らかにおかしい。
何故毎回グリムがオーバーブロットするのか。
この理由を考えなければ。
また、オーバーブロットして……。
………次はないのに………。
「頑張ってんねー、監督生」
「「っ!!」」
聞き覚えのある声に振り向いた。
耳元で聞こえた声。
あれは間違いない。
僕があの声の主を間違えるはずがない。
あの声は
エース・トラッポラだ。
だが、周りを見渡してもエースの姿は見当たらない。
いるのは登校初日に浮かれている生徒だけ。
「デュース、今の…」
「ユウも聞こえたのか、」
コクリと頷く。
「エース!!!!どこにいるんだ!!!返事しろ!!!」
大声で叫ぶデュースに周りの視線が集まる。
だが、そんなことはお構いなしにデュースはエースを呼び続ける。
「おい!!!!エース!!!!」
「あーうるっせ」
デュースがエースの名前を呼んだ時、エースの声とともに、一瞬、ほんの一瞬だけ、オレンジ色の髪が、遠くにうつった。
「「!!!エース!!!!」」
僕達は声を合わせて彼の名前を呼ぶ。
だがやはり返事はない。
「クソっ!!エースの野郎っ!!一体なんなんだっ!!」
デュースは舌打ちをすると、エースの姿が見えた方へ全力で走って行く。
僕は遠ざかっていくデュースの背中を追いかけながら、マブの姿を探した。
✧__✧__✧
「コラッッ!!!!廊下は走るものではないよ!!!!」
ビクッ
心臓が跳ね上がる。
この声はリドル先輩だ。
デュースはリドル先輩の声に気付かず必死に追いかける。
82
「は、はい」
怒られる…。
問題は完全にこちらである。デュースと共に学園中の廊下を走り尽くしたからだ絶対に。仕方がない。仕方がないんだ本当にこればかりは。何故なら、僕らをからかうかのように、教室や廊下の壁にエースらしき人物が現れるのだ。だが僕らがそこへ辿り着いたときには瞬間移動をしたように消えて、違う場所へ移る。
まるで何処かへ誘導しているようだった。
「って、ユウじゃないか、どうしたんだい?」
「っリドル先輩!!エースが、、あそこに」
「!?なんだって?!」
リドル先輩はすぐに一人で独走するデュースの背中を追いかけた。
「どこにエースがいるんだい!??」
「ほら!あそこ!あの教室の壁に!」
「っ!!」
リドル先輩は目を見開いた。
デュースの話によれば、この人も前の世界線の記憶があるらしいし、飲み込みが早いタイプだからこちらからの説明はいらないだろう。僕に何も言ってこないのも、僕に前の世界線の記憶があるとこの状況から判断したのだろう。
エースの姿に最初は驚いたような表情をしていたが、回数を重ねるごとに、逃げ続けるエースに腹を立てたのが、気付けば林檎よりも赤く顔を染め、フルフルと怒りで震えていた。
「エース、いい度胸がおありだね。覚悟はいいかい!!」
リドル先輩はマジカルペンを構え始める。
いや流石にまずいだろと思い必死に止める。リドル先輩まで問題児扱いされてしまう。…いや、リドル先輩は元から問題児の一人か…。
説得の下、なんとかマジカルペンをしまってはくれたものの、リドル先輩の怒りは収まらない。
「こうなれば……、記憶のある者達を集めて捕まえるしかないね…」
「記憶のある者達って、他にケイト先輩とかトレイ先輩とかですか?」
「いいや、それだけじゃない。寮長、副寮長共に全員、そしてその他の生徒複数に記憶があることが判明した。」
「何でそこまで調査済みなんですか、、?」
「情報がこちらまで回ってきた末、朝至急に寮長会議が開かれたからね。」
流石、寮長達はやはり仕事が早い。
僕がのろのろとグリムを起こしている間にもう共有が始まっていたなんて…。
「今彼ら全員に連絡を取った。至急こちらへ来てエース確保に向かってくれるよう頼んだ。」
「ありがとうございます…!」
「……あの時の、エースの言葉が僕は信じられなかった。前に僕のやり方に間違っていると言って怒ってくれたことも、彼が君達と仲良く過ごしていたことも、全てが彼自身、前の世界線で経験済みだとしたら……。僕達が見ていた今までのエースは一体なんだったんだ……。」
半泣きのリドルの声は震えていた。先程まであった怒りは、消え、今は悲しみが残っている。
僕も、そのことについては考えていなかった。いや、考えたくなかった。脳から拒否反応がでていた。
命がけで助けてくれた時も、どうしたらいいか分からなくて泣いていた時も、皆で笑い合った時も、全部……。
感じた辛さも、嬉しさも、笑顔も、涙も、思い出も、
エースにとっては、何回も経験している、別に大したことないことだったのかもしれない。
エースの姿に最初は驚いたような表情をしていたが、回数を重ねるごとに、逃げ続けるエースに腹を立てたのが、気付けば林檎よりも赤く顔を染め、フルフルと怒りで震えていた。
「エース、いい度胸がおありだね。覚悟はいいかい!!」
リドル先輩はマジカルペンを構え始める。
いや流石にまずいだろと思い必死に止める。リドル先輩まで問題児扱いされてしまう。…いや、リドル先輩は元から問題児の一人か…。
説得の下、なんとかマジカルペンをしまってはくれたものの、リドル先輩の怒りは収まらない。
「こうなれば……、記憶のある者達を集めて捕まえるしかないね…」
「記憶のある者達って、他にケイト先輩とかトレイ先輩とかですか?」
「いいや、それだけじゃない。寮長、副寮長共に全員、そしてその他の生徒複数に記憶があることが判明した。」
「何でそこまで調査済みなんですか、、?」
「情報がこちらまで回ってきた末、朝至急に寮長会議が開かれたからね。」
流石、寮長達はやはり仕事が早い。
僕がのろのろとグリムを起こしている間にもう共有が始まっていたなんて…。
「今彼ら全員に連絡を取った。至急こちらへ来てエース確保に向かってくれるよう頼んだ。」
「ありがとうございます…!」
「……あの時の、エースの言葉が僕は信じられなかった。前に僕のやり方に間違っていると言って怒ってくれたことも、彼が君達と仲良く過ごしていたことも、全てが彼自身、前の世界線で経験済みだとしたら……。僕達が見ていた今までのエースは一体なんだったんだ……。」
半泣きのリドルの声は震えていた。先程まであった怒りは、消え、今は悲しみが残っている。
僕も、そのことについては考えていなかった。いや、考えたくなかった。脳から拒否反応がでていた。
命がけで助けてくれた時も、どうしたらいいか分からなくて泣いていた時も、皆で笑い合った時も、全部……。
感じた辛さも、嬉しさも、笑顔も、涙も、思い出も、
エースにとっては、何回も経験している、別に大したことないことだったのかもしれない。
そう思うと、やっぱり辛い。
だけど、今はそんな事を考えている暇なんてない。
僕は頬につたった涙を手で拭い、リドル先輩達と走る。
「エースがいたって本当か!?!!」
急な大きな声に心臓の音が跳ね上がる。
咄嗟に後ろを振り返ると、そこには寮長、副寮長達や、僕の知る先輩や友達が僕達の後ろを走っていた。
「エース!!!!おい貴様!!!!!!!」
「お願いエースクン、どうしてこんな事になってるのか教えて!!」
「おいお前ら!!!あの草食動物をとり逃すな!!!!」
「全力で追いかけるわよ。でも魔法は禁止。ここは悪魔でちゃんとしたもう一つの世界。ここで事件を起こしてしまえばアタシ達の未来にも影響があるかもしれないわ」
全員、僕らよりも前にいる彼へ叫んでいた。
その中でもポムフィオーレの寮長、ヴィル先輩の冷静な指示は目立った。深刻な顔をした皆は一斉に首を縦に振る。
マジカルペンを構えていた僕の同級生の一年生達も指示に従い、胸元へそれをしまった。
「あそこだ!!」「いやあっちだ!」「ッチ…うぜぇ…こっちだ!!」「左にいる!!!」「上じゃ!!!」「反対方向よ!!!」
それから全員で手分けしてエースを追いかけるも、中々捕まえられないまま時はすぎる。
あのリドル先輩でさえ授業をも無視をして追いかける。
暫くすると、彼がある場所でピタリと動きをとめた。
追いかけることに夢中すぎて時間を忘れて走ったせいか、止まった途端急に疲れがドバっと押し寄せてくる。みんなより体力の少ない僕にとっては少し辛い。疲れた僕に気付いてくれたデュースとセベクが体を支えてくれる。セベクは気恥ずかしそうにしてはいたけど…。
「エース!!!!君は一体何が目的なんだ!!?」
ハーツラビュルの寮長であるリドル先輩が最初に口を開いた。
「そうだよエースクン!!!!何で僕達に何も言ってくれなかったの!!!??!」
「ああ本当だ、前にお前から約束したんだろ!!隠し事はしない、全員で助け合うってよお!!!!!」
それに続き、エペルやジャックも、彼に向かって声を上げた。
僕は彼に何も言ってあげられず、高まる鼓動を感じながら震えていた。
「は?なにそれ。馬鹿馬鹿しっ。」
彼の一言に、皆は絶望した。
僕はゴクリと息を呑む。
「ってか、お前らバカなの?俺が今まで演技してたの、1回も気づかなかったんだろ?笑」
「そんなの………」
「…まあ別に今となっちゃあどーだっていいことなんだけど」
エースは両手を広げ天を仰ぐ。
「俺らは作らなきゃあいけないんだよ。ヴィランズがハッピーエンドを迎える世界を」
彼の声のトーンが落ち、目のハイライトが消える。
全員が再びまずいと確信し、マジカルペンを構え直す。
「ってかさ、全員今自分がどこにいるかわかってる?」
彼がこちらを見ると共に我に返る。
先程まではエースに集中していたせいで周りが見えていなかった。それは僕だけではなく皆同じようだ。
気付けばそこは鏡の間。
全員が沈黙して、辺りは静かになり、何処か不気味な雰囲気がただよう。
「いつの間に…」
沈黙から少し経つと、リドル先輩が沈黙を破った。
「…っ!!まさか…、アナタ、ここへアタシ達を誘導していたの、、、、?」
「そう。せーか〜い」
ヴィル先輩の顔は、エースの煽るような言い方に苛つきを表すよりも先に、絶望に染まっていた。
「ユウ」
「!?」
急に自分の名前を呼ばれ心臓が飛び跳ねる。
ドクドクと、鼓動が鳴り響く。
「な…に…?」
「こっちに来いよ」
そう、エースに手招きをされる。
彼と居る場所的には距離があるのに、僕は不安と恐怖が一気に込み上げ、手足や唇が震えて上手く返答ができなくなる。
「な…、な、な、なん…で」
「ハハッ、肩の力抜きなよユウ」
突然、肩をポンポンッと叩かれた。
「え」と思わず声を出す。
怖くて自分の靴を見ていたため現在の目線は下だ。
ゆっくりと、顔を上げる。と。
そこには、僕の両肩を掴んだエースが。
顔が一気に青ざめる。
いつの間に移動したのか、そんな事を考える余裕なんて、頭にはなかった。
前までは、…つい、この前まではこんなことされても、別に何とも思わなかったのに、思わなかった相手なのに、今では恐怖でしかない。
彼が僕を襲うかもしれない、殺すかもしれない。
「安心しろってユウ」
彼の目は笑ってはいない。
「俺はただお前らが笑う姿を、ずっと見てたいだけなんだよ」
少し彼の表情が柔んだ。
グイッ
「っ!!?」
「「「ユウ!!!/監督生!!!/ユウさん!!!」」」
急に強く腕を引っ張られ、視界が揺れる。
腕を掴む手の持ち主は、やはりエースだ。
「俺等に残された時間は少ない。だから、協力してくんねーかな」
「っ!エース、何する気、、?!!」
「………」
彼は答えてくれない。
腕を掴み引っ張る力が段々と強くなる。
「ちょっ!!どこに連れてくの!!?」
彼は黙ったままだ。
そして僕は気付く。
彼の瞳が見る先は、大きな闇の鏡だった。
僕は段々とそこまで引きずられる。
そして、目の前まで来た時、トンッ、と後ろから背中を押される。
振り返ると、エースがこちらへ手を振っていた。
「じゃーな、監督生、また」
その途端、鏡に吸い込まれ、視界が大きく揺れる。酔いそうで、目を瞑る、
何故か冷たく、ひんやりしていて、心がギュッと締め付けられる。
コメント
1件
読み終えたわ。この「本物のジョーカーは誰か」、エースが全く別の立ち位置に見えてきて鳥肌立った…。今までの思い出が全部「演技」って言われたような気分になって、ユウの気持ちが痛いほど伝わってきたわ。それでも「笑う姿を見てたいだけ」って言葉が、すごく彼らしくて切ない。次どうなるか気になりすぎる!