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まさかの展開!? 大森くんが涼ちゃんに近ずいちゃった!? これ次の話がちょー気になる(っ ॑꒳ ॑c)ワクワク つづきつづきっと
あ、すげぇ…。(語彙力) 凄すぎて、静かに興奮しております…。 今回のお話もワクワクドキドキしながら読ませていただきました✨ 次のお話もワクワクしながら待ってます!
 
 
 
 
 その夜も、村は静かだった。
虫の声が遠くで響き、家々の灯りは次々に落ちていく。
眠りについた人々の安らぎが、かえって大森の心をざわつかせていた。
 ふと窓の外を見れば、すぐ隣の家――藤澤の部屋だけがまだ灯りを落とさずにいた。
小窓から漏れる明かりが、闇に滲んでいる。
 
 
 
 「……また、か。」
 
 
 
 小さく吐き出した声は、自分でも驚くほど乾いていた。
やめろ、と心の中で何度も制したはずなのに、足は自然と藤澤の家の方へ向かっていた。
 戸口の前で立ち止まり、拳を握りしめる。
入ってはいけない。
けれど、耳を澄ませば……
 
 
 
 「……っ、ん……はぁ……」
 
 
 
 堪えるような吐息。
押し殺すようでありながら、切羽詰まった甘さを帯びた声。
その瞬間、大森の全身から血の気が引いた。
思考より先に、身体が動いていた。
 家裏の窓の隙間へ、静かに近づく。
細く開けられたその隙間から、月明かりが差し込み、布団の中の様子がわずかに覗いた。
 藤澤が、そこにいた。
布団をかき寄せ、汗に濡れた髪を額に張り付かせ、荒い息を吐きながら自分の身体を弄っている。
指先が震え、抑え込もうとするように口を噛むが、時折洩れる声は甘く、切ない。
 
 
 
 「んっ……っ……やっ、ダメ……っ、止まんない……っ」
 
 
 
 その姿を目にした瞬間、大森の胸の奥で何かが弾けた。
今まで抑え込んでいた欲望が、一気に噴き出してくる。
 ――これまで何度も見てきたはずだ。
副作用に苦しむ藤澤を、若井と一緒に支えてきた。
触れて、慰めて、落ち着かせてきた。
 けれど、それはあくまで“助けるため”。
自分の欲を満たすためではない。
そう言い聞かせてきたのに。
 
 
 
 「……涼ちゃん……」
 
 
 
 喉から漏れたのは、無意識の囁きだった。
窓に額を押し当て、視線を逸らせない。
布団の中で身をよじり、吐息を殺しながら快楽に溺れていく藤澤。
その光景は、もうただの副作用の現れではなく、大森の欲望そのものを煽り立てる甘美な幻のように見えた。
 指先が震える。
窓を叩き開けて飛び込みたい衝動が全身を駆け抜ける。
だが、理性の残滓がまだ囁く。
――今入れば、すべてが壊れる。
 けれど。
 
 
 
 「……っ、あぁ……また、イキそう…ん……っ!!」
 
 
 
 藤澤の喉から零れ落ちた、その声。
そのひと欠片で、大森の最後の理性は焼き切れた。
 拳を握りしめ、窓枠に手をかける。
心臓が痛いほどに鳴り響き、呼吸が荒くなる。
 
 
 
 「もう……我慢、できない……」
 
 
 
 掠れた呟きと共に、窓を押し開けた。
 
 
 
 「っ……は、あっ……! ……えっ……!? も、元貴……っ……!」
 
 
 
 驚き、振り返る藤澤の瞳が月明かりに揺れる。
布団の中の乱れた姿を隠そうとするが、大森はその手を押さえた。
 
 
 
 「……涼ちゃん。ずっと我慢してた。でも……お前が乱れるのを見てるだけなんて、もう無理だ」
 
 
 
 荒い吐息が交わる。
藤澤の肩が震え、大森の手の熱を拒むこともできずに見上げていた。