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霧が濃く立ちこめる夜だった。
古びた森の奥に、ひっそりと佇む黒い館。
村の誰もが口を閉ざし、決して近づかぬその場所の扉が、静かに開く。
――生贄を捧げる夜だけ、その扉は開く。
🎼☔️「……これが最後なら、それでいい」
少年の声は震えていたが、怯えているだけではなかった。
こさめ。
この館に捧げられた、生贄の少年。まだ十六の歳で、白い肌と大きな瞳、薄く震える唇をもっていた。
蝋燭に照らされるその姿は、まるで神の供物のように美しい。
🎼🍍「おまえが、今夜の“供物”か」
重い扉の奥から現れたのは、一人の青年だった。
深紅の瞳に、黒曜石のような髪。
白く整った指先が、こさめの顎に触れる。
🎼🍍「こさめ……だっけ? 細いな。血の味、薄そう」
🎼☔️「……どうせ、飲むんでしょ。さっさと済ませてよ」
🎼🍍「強気だな」
男は、吸血鬼。名前はなつ。
何百年も生き、村人たちが恐れた不老不死の存在。
だが彼は、その見た目からは想像もつかぬほど静かで、皮肉屋で、そして——飢えていた。
🎼🍍「じゃあ、一口だけ……味見してやるよ」
こさめの首筋に、冷たい唇が触れる。
そして、牙が肌を割いた瞬間——
🎼☔️「あっ……!」
血が流れた。
赤く、濃く、熱い。
それを一滴舐めた瞬間、なつの瞳が見開かれる。
🎼🍍「……なに、これ……」
口内に広がる、甘さと熱。
まるで快楽の液体を飲み下すような感覚。
🎼🍍「……もう、他の血じゃ、満たされない……」
こさめの血は、“契約”を孕んでいた。
吸血鬼が、唯一その血に執着し、他の血を拒絶してしまう——それが、運命の吸血契約。
🎼☔️「なっ……なに、したの……?」
🎼🍍「違う、こさめ。おまえが“した”んだよ。……もう、俺はおまえの血しか飲めない」
なつがこさめを強く抱き寄せる。
🎼🍍「殺すつもりだったけど、できなくなった。……おまえを、飼うしかない」
🎼☔️「……ふざけないでっ!」
でも、その抗いは、夜の闇に溶けて消えた。
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それから数日、こさめは館に閉じ込められた。
逃げ道はなかった。
そして、毎夜“渇き”に襲われるなつが、こさめに手を伸ばすたび、血と快楽が絡む。
🎼☔️「また……飲むの?」
首筋を隠すように、こさめが毛布を引き上げる。
🎼🍍「……飲まなきゃ、俺が死ぬ」
🎼☔️「それ、脅し……?」
🎼🍍「違う。事実だ。……こさめ、俺はもう、おまえに飢えてるんだ」
なつは彼の体に覆い被さる。
縛られてもいないのに、逃げられない。
🎼☔️「ねえ……どうして、こんな優しくするの……?」
🎼🍍「欲しいものを、乱暴には扱わない。……それだけ」
耳元で囁かれたその声は、熱を帯びていて、
こさめの心臓が、ひどく騒いだ。
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月が満ちる夜。
こさめは、書斎の扉に手をかけた。
村へ続く地図を見つけてしまったから。
ほんの一瞬、「帰れるかもしれない」と思った。
けれど、その小さな音も——
🎼🍍「……逃げる気?」
🎼☔️「ち、ちがう、これは……」
🎼🍍「なら、なんでそんな顔してる?」
次の瞬間、ベッドに押し倒される。
🎼🍍「おまえが逃げようとしたから、俺の理性はもう持たない」
両手は拘束具に縛られ、足も開かれていく。
🎼☔️「や……やめて、なつくん、こんなの……っ!」
🎼🍍「おまえが俺を拒むなら、俺の快楽で縛るしかないだろ」
玩具が、濡れた音を立てて、奥へ押し入ってくる。
🎼☔️「んぁっ……っ、だめ、そこ……!」
何度も、何度も。
甘い痺れと、溺れるような絶頂が、こさめの身体を支配していく。
🎼🍍「好きって言え。俺に縛られてるおまえに、ふさわしい言葉を」
🎼☔️「なっ……なつくん、もう……やだ、でも……好き……っ、なつくんしか……いやぁ……!」
その言葉に、なつの腕が震える。
🎼🍍「……可愛いな、こさめ」
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それから、こさめは逃げようとしなくなった。
なつの腕の中で、血を与え、快楽を受け、愛を囁かれる。
🎼☔️「ねえ、なつくん。これって、ほんとの“愛”なの?」
🎼🍍「……そんなものはどうでもいい。
ただ、おまえが俺を必要とし続けるなら、それがすべてだ」
なつの牙が、首筋に再び沈む。
🎼☔️「ぁ……ん……」
血を分かち合いながら、深く、奥まで繋がっていく二人。
🎼☔️「ずっと、ここにいて。……俺のこと、忘れないで」
🎼🍍「忘れられるわけ、ないだろ。
おまえの血がなければ、俺は渇いて死ぬんだ」
そんな歪んだ愛の言葉が、心を潤す。
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◆エピローグ:世界が終わっても
館の外では、季節が巡っている。
けれど、この部屋の中では、すべてが止まっていた。
赤いカーテンの奥。
昼も夜も関係ないその場所で、なつとこさめは、静かに身体を重ねる。
欲望を、血を、心を喰らい合うように。
🎼🍍「おまえだけだ、こさめ。……他の誰にも、やれない」
🎼☔️「うん。……なつくんも、俺の、だから」
深く口づけを交わす。
吐息も、舌も、体温も、全部が重なって——
永遠の夜が、二人を包んでいた。