まつりです。
これから毎回言います。タヨキミもうすぐで終わる。
イヌイの誕生日なんですよねえ!!
タイミングがタイミングなので素直に喜べない。ハルカさんと仲直りしようはやく!!マジで!!
⚠️また宗教の話が出てきます。あてんしょん!!
いってらっしゃい~
どこかの路地。
この時期、12月も下旬に差し掛かっていて、特に今夜はひどく寒かった。
「………もう、今年も終わる。明日はキリスト降誕祭だよなぁ。ケーキ食いてぇ」
「おめぇの稼ぎがあれば、ホールケーキ3つは余裕だろーが」
「知らねぇな。ケーキ屋に入ったこと、ねぇから」
イヌイは悔しそうに笑うと、「話題が逸れたな、わりぃ」と目を伏せる。
「あの人………ハルカさんは、オレにとっての神様だ。オレをつくった存在であって、オレが最も愛していて、オレのすべて。でも、さすがのオレも、盲信するほどのめり込んではいねえ」
「ふぅん。まぁ、知ってるけどな」
「あの人は、間違ってンだよ。オレはあの人より、あの人のことを知ってる。やらなきゃいけないこと、守らなきゃいけないもんから、あの人は逃げてンだ」
「言えんのか?間違ってんのは、逃げたのはおめぇだろ」
「……知ってる。それは許してくれ。ただ、裏切られるのが怖かっただけだ。あの任務に失敗して、サチを取られて、ハルカさんの眼が怖かった」
「お前が、ハルカを裏切ったんだよ。ハルカがどんな気持ちでお前に寄り添ってたのか、理解もできねぇのか……サチを奪われたくらいで、おめぇにキレるわけねぇだろ」
「あの人が何を思ってるかなんて、知らねえよ。…………もう、関係ねぇ」
言いにくそうに絞り出すイヌイの言葉を聞いて、ルナは今までにないような、冷たい表情を見せた。
「お前には、失望したわ………人も素直に愛せないのか。生きる価値ねえよ」
「おいおい、特大ブーメラン食らってンぞ」
ふざけたように笑うイヌイ。ルナはため息をつくと、イヌイに近づく。
そして、イヌイの首もとを掴むと、腕を高くあげた。
地面から足が離れ、強く首を絞められたイヌイは「っ」と短い悲鳴をあげる。
「ふざけてんじゃねえよ、餓鬼」
「………やめ、て……くるしい」
とうとう泣き出したイヌイを、ルナは乱暴に地面に捨てる。
そして鋭く睨みながら、彼にしてはめずらしく、大きな声で吐き捨てた。
「今のおめぇに、ハルカのなにがわかるってんだ!」
それにムカついたのか、イヌイは言い返した。
「テメェに、オレのなにがわかンだよ!」
「おめぇのことなんて知らねぇよ。ただ、ハルカの気持ちはわかる……愛情込めて、自分が育てたも同然の奴が、目の前にいねえのはつれぇんだ」
「そんなん、オレだって、つれぇよ………」
「おめぇがしたこと。今まで愛してくれた人を裏切って、自分の思い込みを信じて逃げてるだけだろぉが。お前の辛さをわかんねぇとは言わねえが、それはただの自己中だ」
「………つまり、何が言いたいンだよ」
「ここまで言われてわかんねぇのか」
ルナは再度ため息をつくと、道の端で座るイヌイの目の前でしゃがむ。
「ハルカのこと救えんのは、おめぇだけなんだよ。たしかにハルカをあそこまで狂わせたんはおめぇだが、おめぇは紛れもなく、ハルカの生きる希望だろーが」
その言葉に、イヌイは「はっ」と、バカにしたような顔でルナを見た。
「そんなこと、言いに来たのか。らしくねえけど………真実だな。たしかに、ハルカさんを救えンのは、オレだけかもしれない」
「それでも救いたくねえってんなら、別にいいよ。お前の勝手だ」
ルナはイヌイに背を向けて、ゆっくり去っていく………と思いきや、なにか思い出したように、すぐイヌイを振り返る。
「言い忘れてたわ。知ってると思うが、ハルカは洗脳されてんのな。おめぇには洗脳を解くことができるほどの絆があるが、洗脳によって生成されていた記憶・思想は、洗脳が解けたあと、何も残ってねえから」
「は?意味不明なンだが」
「だから、ハルカのおめぇを想う気持ちが洗脳によって引き起こされたモンだったら、ハルカの洗脳が解けたあと、おめぇとの記憶はハルカの脳ミソに残ってねえってこと」
「………つまり?」
「わかんねぇのか。ハルカを救うのはいいが、おめぇ、忘れられるかもだぞってこった」
その言葉に、イヌイは目を見開いた。
「あくまで可能性だが、忘れられたくねぇんなら、ハルカ連れて戻ってこい。忘れられてもハルカを正したいなら、救ってタヨキミにでも引き取られろ。それも嫌なら死んどけ、ぶっちゃけ、ハルカを愛せないおめぇに存在価値ねえからな」
それだけ言って、ルナは路地を引き返して行く。
イヌイは無言で、汚れきった自分の右手を見た。
(愛せないおめぇに存在価値はねえ、か………よく言えたモンだな、俺が)
ルナは、自分が言ったことに苦笑する。
(アイツを守れない俺にも………存在価値、ねえよな。とっとと消えたいなぁ)
「ハルカ、どこにもいないですね………」
同じく、どこかの路地。
リオの息が、凍りつくような空気のせいで、白くなる。
タヨキミメンバーはもう何日も、街に出てハルカを探していた。
それなのに、全然見当たらない。それどころか、長身・美人であるにも関わらず、目撃情報が一件も入ってないという。
「………寒いね」
「もう12月も終わりますからね………縁が無さすぎて忘れてましたが、今日はクリスマスイヴですよ」
「クリスマス?ああ、聖誕祭か」
その言い方に、リオは違和感を覚えた。
「……カナタ先輩、クリスマスのこと聖誕祭って呼ぶんですね。失礼ですが、どこかの宗教でも信仰されてるんですか?」
「あぁ……まあ、育ちの関係でね。保護者が変な宗教を信仰しててさ。クリスチャンではないんだけど……」
カナタは、少しだけ表情を暗くする。
(……両親ではなく「保護者」。しかも、全体的に濁すような言い方……)
なにか、後ろめたいことでもあるのか………これ以上、この話題を出すのはやめたほうがよさそうだ。
「そういえばカナタ先輩って、ハルカと双子なんですよね?」
「うん、特殊なね」
「特殊……?」
不思議そうな顔をするリオに、カナタはソーユの真似をして人差し指を立てる。
「伏見の双子と我孫子の双子、明らかに違うものがあるでしょ。わかる?」
「うーん……わかりません」
悩むリオに、カナタは得意気に説明を始めた。
「伏見は双子にも関わらず、能力も髪色も身長も違うでしょ。でもカナタたちは能力、髪色、身長、体格も好き嫌いも、下手すれば体重まで同じな気がする。複雑化したこのご時世、能力者同士の間に産まれる双子は、伏見みたく見た目に違いがあるのがほとんどなんだよ。能力も違う。でもほんの0.00何%の確率で、カナタたちみたいな瓜二つの双子が産まれてくる。すごいっしょ、能力者が大体5パーで、その中の双子の、その中の一卵性の、その中の0.00何%だよ?よくわかんないけど、世界にいるかいないかじゃない?そんなことないかな」
すごい、それは誇れることだ……でもカナタは、少し悲しそうな表情をしていた。
「……ハルカは、昔から頭おかしい奴だった。お気に入りのぬいぐるみの耳を噛み千切っては、それを自分の耳の穴に詰めるの。「これでずっといっしょ、嬉しい」とか言ってたな。あとはアルミ玉を足の指に挟んで反復横跳びしたり、コンビニのビニール袋に砂入れて、そのなかに頭突っ込んで三点倒立してたり。意味不明すぎるけど、それでも、根っこはいい奴だったんだ。ぬいぐるみの破片をカナタの耳にも詰めてくれたし、抱き締めてはカナタの背中をぼりぼり引っ掻いてた………でもあれは、ハルカなりの優しさだったんだと思う。本当に知らんけど」
そう言って、カナタは笑う。
「救いようがないかもだけどさ、絶対に救おうな」
リオは、深く頷いた。
ただ……ぬいぐるみを噛み千切って耳に詰める、アルミホイルを足の指に挟んで反復横跳び、ビニール袋に砂を入れ、頭を突っ込み三点倒立。リオが思っているより、ハルカは変な奴らしい。
(行動の意味が、まったくわからない………それをすることによって、一体何を得られる?)
それでも、No.3の男だ。そもそもキビアイに居る者、誰しも多少は変人である。
そうだ。タヨキミに乗り込んでくるなり、いきなりカナタにマウントポジションを取って殴りまくった奴……普通なはずがない。
心を落ち着かせ、リオはカナタに向き直る。
(そうだ、救えばいい。今度こそ、絶対に)
もう、誰も死なせない。死なせたくない。
「そう言えばだけど……「イヌイ」って名前。キショくね?」
「はい?僕は、気色悪いとは思いませんけど……まぁ、珍しい名前ですよね」
「あぁ、リオは知らないのか………ちょっと怖い話っぽいんだけどね」
カナタは目を細めて、嫌そうな顔で話し出す。
「ハルカって、さっきも言った通り、結構変人なんだけど。所謂『サイコパス』ってやつで、本当にあった怖い話量産機だった………そんなかでもカナタのトラウマになってんのが、ハルカが大事にしていた藁人形なんだ。大きさは顔くらいで、とにかく不気味。ハルカはその藁人形に、毎日自分の髪の毛を抜いて、ぐるぐるに巻いてた」
その人形を想像して、リオは少し顔をしかめた。怖いものは苦手ではないが、実話となるとさすがに不気味だ。
「しかもハルカは最終的に、人形を焼いて食ったんだ……なんでかは知らないけど。そして、その人形の名前は、たしか『イヌイ』だったと思う」
リオは、背筋が凍るのを感じた。
不気味すぎる。そんな人間が、この世に存在するのか……
「あ!リオ、見て」
驚愕しているリオを気に留めることなく、カナタはいきなり身を屈め、大通りのほうを指差す。
その方向には、顔が隠れた、背の高い女性がいた。
「あれ、ハルカじゃない?」
「えっ……でもあの人は黒髪だし、女性ですよ?胸もありましたし」
「ハルカ、変装が得意なんだよね………胸なんて、中にボールか綿でも詰めたらどうにでもなるっしょ。追おう、絶対ハルカな気がしてきた」
「証拠は、あるんですか?」
「あるわけないっしょ。強いて言うなら、身長がカナタと同じくらいだった。てかカナタ、ハルカと双子なんだよ?気づけない訳ないじゃん!」
リオは悩んだが、結局、カナタを信じることにした。
(先輩の、所謂『勘』はすごい。こんなに自信があるなら、きっと正しいんだろう)
二人は、女を尾行するため、路地から出る。
あるところまで来ると、女は周りを見渡してから、ある建物に入った。
「あれは………教会、か?」
教会の入り口に飾られている双子の神様の像を見て、カナタは足を止める。
「?………カナタせんぱ…………!?」
「っ………待って、ごめん」
心配したリオが振り返ると、カナタは、ひどく動揺しているようだった。微かに、目に涙が浮かんでいる。
いつもサバサバしているカナタの泣き顔なんて、初めてだ………リオは対応に困る。
二人して建物の前で立ち尽くしていると、やがてカナタが泣き止んだ。
「ごめん、リオ…………乗り越えなきゃ、いけないよね」
カナタは深呼吸をする。
カナタの勘が正しければ、この扉の先に、ハルカがいるはずだ。
「……行こう」
決心して、カナタは、教会の扉を開けた。
「それでね、イヌイを探すために、今度はハルカがどっか行っちゃって………」
賑やかな居酒屋。
鈴のような高い声を転がして、ユヅルは楽しそうに話す。
「ふーん」
目の前で酒を飲む男は、心底興味無さそうに相槌をうった。
「………ちょっとぽんちゃん、聞いてる?久しぶりに会ったのに、ビールばっかり。俺の話聞いてよ!」
「悪い悪い。続きは?」
「うん。ルナが頑張ってイヌイを見つけ出して、ちょうど今くらいに説得してるはずだよ」
「へぇ、良いじゃん。特にルナくんとやら、従順で可愛い部下だね」
「可愛くないよ。法律も、時間も、約束も、何も守らない」
「ユヅルのことは守ってくれてるんだろ?おれと違って」
空になったジャッキをゴトンと机に置き、男が「大将、もう一杯!」と手を挙げる。
「………そんな、やめてよ。ぽんちゃんは、俺のこと守ってくれるじゃない。お酒がまわって、少し構ってちゃんになってる?」
「別に、なってないし。てか、ユヅルが一番好きなのはおれだから……ルナくんに、調子乗るなよって言っといて」
「そんなこと言ったら、ルナ泣いちゃうよ~。でもそうだね………俺は、ぽんちゃんがいちばん好きだよ」
「おっと、時間だ。じゃあなユヅル、金は任せた」
「おいおい、今の聞いてた?俺の愛の告白」
「ぁかったから。じゃあね、愛してる」
それだけ言い残して、男はそそくさと店を出ていく。
(まったく、どいつもこいつも……)
ユヅルは少しだけ残された酒を見て、ため息をついた。
そして、その酒を一気に飲み干す。
「大将、お会計~」
「おっ、ユヅルちゃん。あれ、彼氏はどこ行ったの?」
「俺のこと置いて帰った。ほんと有り得ない!あと、別に彼氏じゃないし」
苦笑しながら、ユヅルはお札を出して店を出た。
冬の空気が、眠気を覚ます。
(………また、四人で遊びたいな)
楽しかった過去に思いを馳せて、ユヅルはゆっくりと帰路についた。
続く
小説更新、遅くなって申し訳ございませんでした!!非常に反省しております!!
本当にごめんなさい、、、やっと更新できました。
知らない間に、本編はクリスマスに突入したようです。
普通に忘れてて。急に話題がクリスマス一色に染まってしまいごめんなさい。
クリスマスといえば三人組のイメージがありますが、瀬々の過去が宗教関連で、カナタの保護者も変な宗教を信仰してたっぽいので、今回にも深く関わっているのかもしれないです。。
最初のシーン、本当に意味不明すぎる
ちな、イヌイくんが逃げた理由が描かれるのはこのシーンだけなので、ちゃんと読んで考察しないと大変なことに、、、(なりません)
ルナさんは、また謎を残して逃亡ですか。「消えたい」言うてますが、消えないでくれ。
ハルカさん、キチガイで草
ホラー展開やめい(作者はホラーがスーパー苦手)
イヌイの名前、実はハルカが過去に食った人形と同じだったんですよね。あれ、ハルカさんって、イヌイくんのこと本当はどう思ってるんだろ?
そう言えばハルカさん、イヌイに大好きやらずっといっしょやらいつも言ってるけど、イヌイの任務にはついていきませんよね。なんで?
上層部、謎多すぎだろ。イヌイは今日誕生日なのに。ほんまごめんて、偶然だから。
そしてまたあれれ~、ユヅルさん、この前は「ルナがいちばん好き」って言ってませんでした?
ぽんちゃんの性格が徐々に出てきてる。ルナと同じくボスとはタメで話してて、しかもからかってる、、かなり親しい感じですなぁ、怪しいですなぁ。浮気ですかなぁ、、、、、((((
また来週お会いしましょう!
まあ、来週出るかは知らんけど!!
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